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外れゆく枷

あとがきに軽い小話があります(゜ロ゜)

 

「アスティ、『カラミティグランド』と『in world』。

 武器を振るう上で、この二つの決定的な違いはなんだと思う?」


 俺は武器を構えるアスティにひとつ、質問を投げ掛けた。


「何って……、武器の重さとか?」


「なるほど?それなら、実際に剣を交えてみようか。

 いつも通りに一撃……いや、二撃、斬りかかってみろ」


「一体何がしたいんだ?銀髪」


 そういえばアスティは、俺の事を銀髪と呼ぶ奴だったな。この呼び名はちょっと新鮮だ。


「んー……、何がしたい、か。強いて言うなら、準備運動?」


「なんだそれ……。わかんねぇ奴だな」


「まぁとりあえず来いよ」


 俺は直剣(ブレード)を錬成し、構える。

 アスティとの距離間は、だいたい十から十五メートル位ってとこか。


 既に体勢を作り、構えていたアスティは俺が武器を取り出したのを確認するや、一直線に突っ込んできた。


「っらぁぁぁ!」


(攻撃動作が最短。いい腕だ! だが……)


「――っ!?」


 スティンガーのベターな初手である、アスティの突き攻撃を避け、アスティの長剣(サーベル)の刀身の腹に、俺の錬成直剣(ブレード)の刀身の腹を擦り合わせる。


 これでアスティが次の攻撃を繰り出そうとしても、俺の錬成直剣(ブレード)が邪魔をする形になる。

 一旦身を引く程度しか今アスティに出来る事はないだろう。


 これで俺の方が、戦闘のテンポを一つ取った事になる訳だ。


「どうだアスティ?」


「……なるほど。これが決定的な違いか」


「そうだ。『in world』ではビームセーバーの刃は、実際には存在していない。実体を持っていないんだ。

 対して『カラミティグランド』では、剣の刀身はきっちりと存在する。打ち合う事が出来るんだ。

 単純且つ簡単な仕組みだが、アスティ。お前は頭の中には今、次の攻撃へと繋げられる手があるか?」


「……全くねぇって事はねぇ。だけどなんつぅか、どうしても動きそのものが『in world』のモンになっちまってよ」


 ……あぁ。なるほど。

 アスティの抱えているものは、比較的簡単に解決する事が出来る。


 VR(仮想現実)のシステム的な身体の可動アシストのおかげで、大抵の人は現実の自分の身体よりも、若干スムーズに、正確に身体が動く。

 つまりは身体能力の限界値が高くなっているって事だ。


 アスティの場合は元々の動きがいい。問題となっているのはその思考の部分だ。

 高まった身体能力の限界点を、思考が追いきれていない。そんなイメージ。


 敢えてこの状況から踏み込み、相手の懐に入って殴り合うか。

 または蹴りでもなんでもいいから、牽制となる一撃を挟んで距離を取るか。


 といった次の動きが、アスティの身体能力的には行う事が出来るのに、思考がそれを命令出来ない。

 それが今のアスティの状態なのだ。


 恐らくは、アスティが長らく『in world』をプレイしている証拠だろう。

 元々『in world』にあった反則のルールが、アスティ本来の限界値よりも下の部分で、アスティ自身の思考が限界値の上限を縛りつけてしまっているんだと思う。


 これは『カラミティグランド』に限った話で言えば、およそ出し得る限界のパフォーマンスよりも、二段階も劣った能力しか発揮出来ていない事になる。


 それでも、アスティのあの初撃はプロの選手によるそれに引けを取らない。

 アマチュアクラスでは、相当な腕の持ち主だったのだろう。


「頭と身体の動きが上手く噛み合わないような感覚。違うか?」


「よくわかったな。そんな感じだ」


「ここは『in world』じゃない。『in world』よりも、もっと自由なスタイルで戦えるんだぜ?」


 絡めていた直剣(ブレード)を引き抜き、アスティへと向けて肩をすくめた。


「あの人なら……」


「ん?」


「あの人なら、どうすんだろうな……」


「あの人って?」


「……柏木惣選手だ。『in world』の経験者なら、この名を知らねぇって事はねぇだろ?

 柏木さんがこの世界に居たら、どんな風に戦ったんだろうなって」


 ……あ、うん。知ってるよ。本人だし。

 しかし危ねぇ。名前が出た瞬間、びっくりして顔に出るトコだったぞ今。

 どんな風って、こんな風だよ。言わねぇけど。


「その人の事なら少し位は知ってるよ。まぁひとつ言えるのは、仮に柏木選手がここに居たとしても、やる事は変わらねぇ。

 勝つためにやれる事を全部やる。そういう人だろ? (あの人)は」


 全く、自分で自分の事を言い伝えるってのは、どうもむず痒く感じるものがあるな。


「……へっ、そうだな。なぁ銀髪。もう少し付き合ってくれねぇか」


 何か吹っ切れたようにアスティはニヤついた笑みを浮かべ、武器を構えた。

 今度はスティンガーの型ではない、全く独自のものだ。


「構わねぇぜアスティ」


 俺も錬成直剣(ブレード)を構え、アスティの動きに備えた。


「っくぜ銀髪ぅっ!」


「来いよ、アスティ……!」


 そこから俺とアスティは暫く、戦闘訓練にも似た対人戦(PvP)に身を置いていた。


 斬り合う内に、アスティの中にあった『in world』時代の枷のようなものがひとつひとつ外れていくように、アスティの攻撃のパターンそのものも次々と増えていった。


エヴリデイとの決闘前。その準備運動としちゃあ充分過ぎる、実に有意義な訓練となった。

 そしてアスティの急成長を間近で見て、感じる事が出来た。楽しい、のかな。俺。


まずは更新サボってさーせんした。


今回は少しアスティ周りのお話でしたがいかがだったでしょうか。


今更ながらですが、登場人物紹介ページを書き直さないといけませんね。

連休中のどこかでやっておきたいと思います。


話はアスティに戻って、アスティはもう少し話が進んでくると、活躍の場面が増えてくると思うので、是非とも覚えておいて欲しいキャラクターの一人です。


あとは基本的にソウキと絡むキャラクターは、今後もちょこちょこ出番を回していく予定なので、これも出来れば覚えておいて頂けると嬉しいです。


また描写にも少し出しましたが、アスティは『in world』ではかなりのツワモノです。


アスティとワタルのショートストーリーでもいつか書けたらなぁ……。とは思っています。本編が終わった後になりそうですが。笑


さて、今日のところはこのくらいでしょうか。


今後とも「クリスタル・ブレイド」を読んで下されば嬉しく思います!

宜しくお願い致します!

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