エンド様とナルシア嬢の馴れ初め。
「ここが…勇者育成学校…」
どうも、魔王だけど暇過ぎて人間界にやってきたエルド…エンド・シュバイアです。思ったよりも手間取ったが無事に勇者育成学校に入学することができ、今日は入学式だ。もちろん魔族であることがバレないように人間の女を参考にして容姿も変えたぞ、大人過ぎず子供過ぎず…を意識してみたがなかなかいいんじゃないか?と自分では思っている。
「そこの貴方」
「は、はいっ…?」
「ハンカチ、貴方のものでしょう?」
「あっ…わ、私のありがとうございます‥。」
いきなり声をかけられ驚いてしまった…やはり人に化けているので力を抑え込んでいる為、反応がいつもよりも鈍い…。あまり目立ち過ぎると困るので地味に大人しく生活する予定なので、控えめな雰囲気と言葉遣いを徹底しなくては…疲れるけど。
それよりもハンカチを落としてしまうとは、早々にドジをしてしまったな…だが、これはチャンスかもしれないな?この声を掛けてきた娘と友人になれれば人間としての生活もスムーズに慣れることが出来そうだ。
「良かった、汚れてはいないみたいですわね。」
「そう、みたいですね…良かったです、お気に入りなので‥。」
「なら気をつけなくてはいけませんわね、素敵なハンカチですもの。」
「そう言われると、嬉しいです…お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「ナルシア・メレヴィスですわ、貴方は?」
「エンド・シュバイア、です…。」
ナルシアか…こんな弱そうな娘が勇者育成学校に入学か…口調や雰囲気からして育ちの良い、貴族の令嬢ってとこか…魔族と戦えるとは思えんな、魔力も回復系のものだしヒーラーが合いそうだな。 ハンカチの話の流れでそのままクラスの確認しに行くことに、その間に侯爵令嬢であること目指す職業は剣士という話をした。意外過ぎる、剣士を目指す令嬢とは…よく親に認めてもらったな?なに、ごり押しした?こんな見た目でやることは大胆だな。
私も自分の話をしたぞ、まぁそういう設定なんだがな?ほとんど、ていうか全部嘘。
「どうやらエンド様とは同じクラスのようですわ、ほら名前が同じクラスのところに書いてある。」
「ほ、本当だ……女子生徒も、多くてびっくりです。」
「あら、割と普通ですわよ?」
「私は、田舎の方から来たものですから、知らなかったです」
シュバイア伯爵家は底辺貴族。私、エンドは勇者に憧れて王都にある勇者育成学校に入学した…と言う設定。下調べぐらいしておけば良かったな、これでは無知な世間知らずの娘ではないか…。
「私で良ければ色々教えて差し上げますわよ。」
「いいのですか…?」
「えぇ、もちろん。同じクラスになれたのはきっと運命ですわ、仲良くしましょう?」
「は、はい……」
まさかナルシアのほうから友人になろうと言われるとは…嬉しいだな親しいものができるというのは。
これがエルドとナルシアの馴れ初め。今に比べるとナルシアの態度は貴族の令嬢様って感じだったな‥今ではお転婆娘全開だぞ。可愛いし、面白いから構わないけどな、一緒にいることに飽きがこない魅力的な友人をもてて私は幸せ者だな。
エンド・シュバイア→暇人魔王のエルド様が人間の少女に化けた姿。
ナルシア・メレヴィス→魔王エルドの初友(人間の)、お淑やかでか弱い乙女のような容姿をしているがかなりお転婆。