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09 菜々美と生命の腕輪

読んでいただき、ありがとうございます。

 何だか収納魔法の容量に違和感が有る。少し調べようと思い、師匠の研究室に寄り道した。

 魔導士の話だと、3級の収納魔法は樽2個分の容量だ。多く入れると満腹感を感じ、無理に詰め込むと中の物が圧迫されて壊れてしまう。買い物の量が多いような気がしたが、少しも満腹感を感じなかった。

 とりあえず中に入っている物を机の上に取り出す。

 生命の腕輪3袋、片手剣2本、両手剣1本、革鎧3組、魔導士の装備2組、服1袋だ。樽2個に入るとは思えなかったが、収納出来ている。


 壊れても良いガラクタで実験をした方が良さそうだ。

 最初に樽1個くらいの大きさの物を入れる。“風の魔法を使った試作品”が収納された。続けてもう少し大きい物を入れてみたがすんなり入ってしまう。“風の魔法を使った試作品2”となっていた。これで、樽2個より大きい収納量だ。

 続けて部屋に有る物を次々と収納していったが、全て入れても一杯にはならなかった。今回収納した量は馬車10台分より多いので、1級の馬車30台の収納量なのだろうか。

 収納量が多い理由はわからないが、量を気にしなくて良いのは助かる。師匠も収納魔法を持っていて、バクっていたのかも知れない。


 部屋に戻ってからリビングに降りると、岩崎さんが母さんとお茶をしている。何で居るんだと突っ込みたいが、楽しそうな二人を見ていると何も言えなくなってしまう。


「圭吾お帰り。早かったのね」


「圭吾君お帰りなさい。お邪魔しています」


「ただいま」


「早かったのね。生命の腕輪は手に入ったの。菜々美さんが首を長くして待っていたのよ」


「手に入ったよ。王国では外国人向けに販売していた」


「うれしい、その腕輪を付ければ異世界に行けるのですね」


「その通りだけど、本当に大丈夫ですか。

 まだ、生命の腕輪について十分にわかって無いし、害が有るかもしれない」


「でも、圭吾君は大丈夫ですよね。レベルアップでどこか具合が悪かったりしますか」


「今の所大丈夫です。

 でも、一度教授に相談した方が良いよ。腕輪を付けたら外れないから、くれぐれも慎重に行動して下さい」


 俺はそう言いながら、1級の腕輪を岩崎さんに渡す。

 岩崎さんは嬉しそうに受け取ると、「圭吾君ありがとう」と言って腕輪をはめてしまった。

 何の躊躇もなく、すっとはめてしまったので止める隙も無い。腕輪がわずかに輝き、岩崎さんの細い腕にピッタリはまってしまった。


「い、岩崎さん」


 俺の話を聞いていなかったのかと言おうとしたが、岩崎さんは目を輝かせてニコニコしている。


「だって、お父様に相談したらダメって言われます。

 魔法が使えて、アンチエイジングの効果が有るなんて夢のようですよね。

 魔女裁判にかけられても止められません」


 いや、魔女裁判なんて無いし。わかっていてボケる宮崎さんに、ちょっとイラっとした。


「菜々美さんの勇気が羨ましいわ。私も旦那がいなかったら冒険出来るのに残念だわ」


 いや、親父がいなくても冒険は止めようよ。

 母さん、自分の年を考えてよ、大学生の息子がいるんだよ。


 岩崎さんのステータスを見る為にパーティに入れる。


 岩崎さん LV6 HP23 MP12

 俺の初期値 LV5 HP18 MP9


 岩崎さんのステータスは、俺の初期値を上回っている。さすが岩崎さん、俺とは出来が違うらしい。


「岩崎さん、自分のステータスが見えますか」


「えっと、ステータスオープンとか言った方が良いですか」


「一応聞いてみただけ。鑑定系のスキルが無いと見えないらしい」


「そうですか、とても残念です。私のステータスはどんな感じでしょうか」


「LV6、HP23、MP12です。一般的な19歳でしたら優秀ですね」


「えっと、ありがとうございます。

 圭吾君はどんな感じですか」


「LV59 HP221 MP128ですね、師匠を超えました」


「凄い、凄い。異世界の人と比べるとどんな感じですか」


「王国の騎士のレベルは50から60台らしいので、それなりに高いと思う。それでも、技術が伴わないから強いとは言えないかな」


「レベルが上がると、何か変わりますか」


「間違い無く力は強くなるよ」


 そう言いながら、10円玉を取り出した。それをそのまま岩崎さんに渡す。


「この10円玉を曲げられますか」


「ちょっと無理ですね」


 力を込めて曲げようとする様子が可愛い。何でも一生懸命に取り組む姿勢が彼女らしかった。

 岩崎さんから10円玉を返してもらうと、親指と人差し指の間に掴んで握りつぶす。半分に折れ曲がった10円玉を見て、岩崎さんが目を見開いて驚いている。


「うそ、10円玉ってそんなに柔らかくないですよね」


「LV59だと、10円玉を簡単に潰せるほど力が強くなるね。それに、ある程度力が無いとダンジョンのモンスターにやられちゃう。岩崎さんが王国に行くには、LV20は欲しいですね」


「でも、ダンジョンに入らないとレベルが上がりませんよね」


「普通の人は、低い階層で少しずつレベルを上げて行くんだ」


「わかりました。レベル上げを頑張りますので、よろしくお願いします」


「いきなりは心配なので、パーティに入って寄生してもらいます。ある程度のレベルになってから一緒に行こう」


「寄生って何ですか」


「王国の貴族が使う方法です。まだ幼い貴族の子供をパーティに入れて、子供はダンジョンの外で待たせる。他のパーティメンバーがレベル上げすれば、同じように子供も経験値を稼げる。言葉通り、何もしないのに他のメンバーの活躍でレベルを上げるから寄生と言うんです」


「確かに寄生ですね。本当に良いのですか」


「岩崎さんにケガなんかさせられないよ」


 早速今日から岩崎さんのレベル上げを始める。俺がダンジョンに入ろうとしたら、母さんの買い物を手伝うと言い出したので、家に居ないと経験値が入らないと止めておいた。


 それから岩崎さんは毎日俺の家に来て、母親とおしゃべりしながら夕食を作っている。

 岩崎さんが夕食に加わるようになって、親父も一緒に夕食を取りたいと、早く帰る日が多くなった。夕食の時間が楽しくなったので、岩崎さんが来てくれてとても感謝している。

 岩崎さんのレベルは順調に上がって行き、7月14日にLV20になった。明日からは、ダンジョンに挑戦だ。


 次の日、服装を整えてダンジョン地下1階に移転した。


「準備は良いですか」


「はい」


 俺が前を進み、岩崎さんが付いて来る。地下1階でアクシデントが起きるとは思わないが、最初なので慎重に行動した。

 少し進むとモンスターが現れたので岩崎さんに声を掛ける。


「最初に俺がやってみます。少し下がって見ていてください」


 岩崎さんが頷いたので、剣を構えてモグラモンスターと対峙する。モンスターが爪を振り上げて向って来たので、前足を切り落とした後に剣を喉に突き入れた。

 モンスターは紫の煙になって消えた。


「早くて見えませんでした」


 岩崎さんがクレームを言ってくる。どうやらデモは失敗したらしい。


「大丈夫です。いつもの練習を思い出して下さい。練習通りの動きが出来れば楽勝です」


 しばらく進むと次のモンスターが現れたので、岩崎さんに挑戦してもらう。


「岩崎さん、モンスターをやっつけてください」


 岩崎さんは前に出ると、剣を構えてモンスターを睨みつけた。

 先に動いたのはモンスターで、岩崎さんはモンスターの攻撃をかわしながら脇に切りつけた。さらにもう一度切りつけたら、モンスターを倒すことが出来た。


「やりましたね」


「はい」


「大丈夫ですか」


「はい。まだまだやれます」


 それから一週間で地下3階まで進んだ。

 ダンジョンやモンスターに慣れたので探索はこれで終了する。明日から大学の前期試験が有るので、いつまでもダンジョンで遊んでいられない。

 出席に関しては緩いが、試験結果が成績に直結するので疎かに出来なかった。


 俺のステータス LV61 HP299 MP132

 岩崎さん    LV21 HP83  MP42


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