表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/33

06 港区のダンジョン

 第7回鉱石採集作業が始まった。

 自衛隊員は既にダンジョンの中に入っていて、入口には政府関係者と鉱石採集グループだけだ。

 俺たちの番になると、鉄の柵を潜ってダンジョンの中に進む。ダンジョンの入口は高さが2.5メートル、幅3メートル位の洞窟と言った感じだ。

 中に入ると、俺ん家のダンジョンと同じように床が淡く光っていて、照明が無くても大丈夫だ。

 自衛官の案内で30分程進むと、俺たちが担当するエリアに到着する。距離にして20メートルが俺たちの担当するエリアで、岩崎菜々美さんと俺の2人は、光っていない所に落ちている鉱石を拾い集めた。ヘルメットのおかげで視界が悪く、とても作業しづらい。

 岩崎教授(岩崎父は失礼だから変更した)、と助手の鈴木さんは壁を調べる係りだ。壁はとても硬いので掘ることは出来ないが、稀に鉱石が壁に付着しているらしい。


 エリアが狭いので、1時間かからずに作業は終わり、岩崎教授達の手伝いに回った。

 試しに鑑定を使ってみたら、壁の所々に“銀鉱石”“銅鉱石”“鉄鉱石”などが表示される。いきなり採るのも不味いかなと思い、岩崎教授や鈴木さんを誘導しながら採掘を行った。

 岩崎教授から「高橋君は目が良いね」と言われる程度で抑えたのは、自分でも上出来だと思う。


 採掘作業は午前中で終了する。今回は採集した鉱石が多かったらしく、岩崎教授からとても感謝された。3万円のバイト代は破格だ。


 今回の採集作業で仕入れた情報を記す。


1.港区のダンジョンは地下27階。


2.1週間毎に、自衛隊による探索が行われる。


3.ダンジョン入口の反対側は閉鎖されていない。(魔力の有るエリアに近づけるので、ダンジョン移転が出来そうだ)


4.ダンジョン内では火器類が劣化し、5、6時間で使用出来なくなる。

  (火薬が劣化、電装品は電池が無くなる。4時間しか活動できない理由)


 翌日、公園に有るダンジョンの反対側に回ったら、公衆トイレを見つけたので早速移転を試す。すんなり移転出来たが、移転陣は頑丈なバリケードで覆われていた。

 もう一度広い所に移転し、リュックサックに入れてある衣装に着替える。これは、TVで報道された異世界人の服を参考に選んだもので、浅い階層に行って異世界人と遭遇した時、少しでも違和感が無いように用意した。ダンジョン内は薄暗いので誤魔化せるだろう。

 鉱石採集で手に入れた地図が有ったので、地下26階へ上がる階段はすぐ見つかった。早速上がって行く。

 このまま順調に進んでいけば、異世界人と遭遇するはずだ。

 地下26階は、階段の発見を優先し、モンスターとの戦闘を極力避ける。夕方になる前に地下25階への階段を見つけて一区切りついたので、今日の探索を終了した。

 自衛隊の探索は地下26階の半分までと言っていたので、地下25階まで進めば遭遇しないだろう。


 次の日、港区ダンジョンに入って探索していると、レベルアップして師匠と同じLV57になった。

  師匠 LV57 HP95 MP115

  圭吾 LV57 HP213 MP124

 師匠と同じレベルだが、HPが極端に違う。もしかしたら俺の方が優秀なのでは?とにやけてしまった。

 午後の3時間程を探索に充てている。自衛隊の活動日は避けなければいけないし、大学もサボれないので、なかなか思うように進まなかった。


 フランス語の講義や昼食の時に、たまに岩崎さんを見かける。

 相変わらず知的で美しい。胸の大きさと知性に相関関係は無さそうだ。

 彼女から声を掛けてくれるので何気に嬉しいし、輝くような笑顔を見られるのでラッキーだ。他愛もない話ばかりだが、話が弾んでとても楽しく、幸せな一時を過ごせる。

 もしかしたら、岩崎さんに恋してるのかも知れない。


 3週間ほど探索して地下21階に上がると、待ちに待った異世界人と遭遇の時が来た。戦いらしい音が聞こえてきたので、慎重に音のする方に近づいて行くと、洞窟の先に5匹のネズミと戦っている異世界人6人のグループを発見した。


  人 LV18 大きな盾を持っている

  人 LV16 小ぶりな盾を持って槍で攻撃

  人 LV17 両手で剣を持っている

  人 LV20 両手で剣を持っている

  人 LV15 弓を持っている

  人 LV19 師匠と同じ魔導士っぽい

   

 鑑定が教えてくれるのは “人” とレベルだ。名前は鑑定出来ないのかと少しがっかりした。

 それより、彼らのレベルは階層より低いけど大丈夫だろうか。

 モンスター5匹の相手は大変らしく、じりじりと後退している。モンスターが3匹は有ったが、5匹同時は経験無かったので驚いた。

 暫くすると、両手剣を持っているLV17の人がやられたので応援に入った。


「手助けします」


 言葉はわからないだろうが、一応声を掛けた。


「た、助かる」


 後衛の魔導士っぽい人が日本語を話したので驚いたが、とりあえず戦列に加わった。あまり出すぎてもいけないし、連携出来ないから思う様に戦えない。それでも、このパーティは弱すぎる。時間が掛かりすぎたのか、後ろからもモンスターが現れて挟まれてしまった。

 皮肉なことに、異世界人が倒れた後の方が戦い易かった。


 生き残ったのは、LV20で両手剣を持ったリーダーの人と、LV19の魔導士っぽい人だけだ。たたし、二人ともケガをしており、リーダーは脚と腕をかまれて重傷だ。


「助かった。リーダーに変わってお礼を言います」


 魔導士っぽい人が、深々と頭を下げてお礼を言って来た。


「礼には及びません。そちらのリーダーの人は大丈夫ですか。少しですが治癒魔法が使えますので、応急処置をしましょうか」


「治癒魔法が使えるのですか。それは有りがたい、ぜひお願いします」


 倒れているリーダーの脚と腕の治療を始めた。

 治癒と解毒を併用して魔法を掛ける。かなり酷い傷で、完全に元通りにはならなかったが、痛みは弱くなったはずだ。


「素晴らしい、上級治癒魔法ですね。先ほどの戦闘と言い、さぞかし名の有る魔導士様だと思いますが、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」


「まだまだ駆け出しですよ。ケーゴと言います」


「本当にありがとうございます。魔法使いのレナルドと言います。彼は剣士のジャンと言います」


 自己紹介していると、剣士のジャンが目を覚ました。

 レナルドとフランス語で会話をしているので、俺には良くわからない。師匠の資料では、異世界の言葉はフランス語で、魔法に関しては日本語らしい。それで俺もフランス語を勉強しているが、まだ初めて2ヶ月しか経っていないので、二人の会話はちんぷんかんぷんだ。

 2人の会話が終わると、剣士のジャンがお礼を言って来た。習ったばかりのフランス語で、「ウイ」とか言っておいた。


「こっちの言葉はわからないんだ。申し訳ない」


「王国語が話せなくても、共通語が話せた方が良いですよ。街では共通語がわからない者が多いので不便ですね。ちょっと失礼して、仲間の装備を外してきます」


 レナルドは死んだ仲間の装備や服を脱がしている。俺も手伝おうかと考えたが、ちょっとハードルが高すぎた。

 戦っている時は気にならなかったが、ネズミにかまれた腕や足が千切れてグロい。このままにしておくとダンジョンに飲み込まれてしまうので回収しているのだろう。

 しばらくすると回収が終わり、俺達の方に戻って来た。


「装備で気に入ったものが有ればお持ちください。大した物は有りませんがどうぞ」


 何故か俺にくれるらしい。武器などもらっても使い道は無かったが、防具や服などは欲しかった。血が付いているので戸惑うが、贅沢も言っていられない。


「武器は要らないが、防具と服をひとそろえもらいたい」


「それで宜しいのですか、防具や服など安物ばかりですよ」


 比較的汚れが少なく、自分に合いそうな防具と服、サンダルもどきをもらった。

 その後、20階に魔法陣が有ったので、2人を移転で送る。

 ダンジョン出入口は、公園から入った所とよく似ていた。

 しかし、ダンジョン前は大きな広場となっていて、出店が並んでいる。その先には5、6軒の家が建っていた。


「ケーゴさんはどうされますか」


「まだやり残しが有るのでダンジョンに戻ります」


「そうですか。私達はあそこの宿に泊まります。たぶん明日の朝にカーンに戻りますので、もしよろしければ声を掛けてください」


「俺もカーンに行きたいでご一緒させて下さい」


「それではお待ちしています。お気をつけて」


 このままレナルド達について行きたいが無断外泊は不味い。一度、家に帰った方が良さそうだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ