04 地下32階
異世界人と遭遇した事件の対策で、全てのダンジョンの入口に柵と警報装置が設置された。警備も強化され、100人以上の自衛隊員が、24時間体制で警備に当たっている。
異世界人の特徴や装備していた物が公開された。
異世界人は欧米人と似ているらしく、外見はゲルマン系の容貌だ。ゲルマン系って何?と思ったら、ドイツやフランス人種らしい。
剣や盾は12から15世紀の物と特徴が同じらしく、一部のネットユーザーから「異世界中世キター」などの声が上がっている。
俺が気にしていた生命の腕輪の解析は失敗した。
非破壊検査では金属を判別出来なかった。
その為サンプル検査に変更し、素材の一部を切り取る。一部を切り取ったにも関わらず、腕輪は金属質の光が失われ砂になってしまった。
魔法金属なのではとか、ミスリル、オリハルコンなどと言われ始めている。
2学期の期末テストはとても良い成績だった。
レベルが上がり、集中力や記憶力が上がっている。更に、十分なMPが有るのでMP切れが起き無くなり、あの辛さから解放されたのも理由だろう。
力やスピードもかなり上がっていて、ジャンプすれは3メートル飛び上がり、100メートルを5秒で走り抜ける。
鑑定も使えるはずだが、女子のステータスやスリーサイズは見られなかった。もう少し働けよと、名前負けしている鑑定の魔法に苛ついた。
ダンジョンに関しては、地下10階を突破した辺りからドロップアイテムが出始めている。薄い緑色の力魔石が3個と、青色の木星石1個だ。また、黒っぽい魔法石を1個拾った。
LV26 HP101 MP50
学校からの帰り、調子の良い体を持て余していたので、人通りの少ない裏路地をパルクールの真似をして走ってみる。
公園の遊具を飛び越え、トイレの上にジャンプして走り抜けて進む。ぶっ飛んだ力を人に見られないように、辺りを気にしながら走るのは少々面倒くさいが、スピードを上げると景色が後ろに飛んで行き、冷たい風が肌に当たって気持ち良い。
かなり調子に乗っていたらしく、カーブを曲がり切れずにそのまま電柱に衝突した。ドンと言う凄い音がして、電線から火花が飛んだ。
俺の攻撃を受けた箇所は、コンクリートが吹き飛んで鉄骨がむき出しになると、上部の重さに絶えきれずひしゃげてしまう。電線に引っ張られて倒れなかったのでほっとしたが、隣に有った大きな街灯が倒れ始めた。
街灯が倒れる先には、小さな子供と母親が歩道にうずくまっている。不味いと思って慌てて駆け寄ると、街灯を受け止めて親子に当たるのを防いだ。
「お母さん大丈夫ですか。街灯を支えているので、早くここから離れて下さい」
「あ、ありがとう。驚いて腰を抜かしてしまったみたい。
ちょっと待ってね」
母親と、驚いて泣き始めた子供が移動したので、街灯を道路脇に下ろした。
「ありがとうございます。突然で驚いてしまって、おかげで助かりました。あなたがいなければ、大けがをする所でした。もしかしたら死んでいたかもしれません。本当に、ありがとうございます」
「無事でよかったです。それじゃあ、失礼しますね」
「あ、あの、お名前を……」
母親の呼ぶ声を無視して、誰も見ていませんようにと祈りながらこの場所から退散する。電柱を壊せる力が有ると知られたら大変だ。
翌朝の新聞に『外灯が倒れ母子危機一髪 通りすがりの青年助ける』と言う記事が載っている。名前を言わなかった親切な青年の美談になっていて、非常に複雑な気分になる。自作自演、言い換えればマッチポンプな事件になってしまい非常に恥ずかしかった。
冬休みから、ダンジョンに入る時間を2倍に増やして4時間にする。HPも上昇しているので大丈夫そうだ。
探索時間が増えて、3日から4日でレベルが上がっている。レベル上げの合間に行われた大学入試も無事終わった。
2月11日、物置とつながっている地下32階に到達した。
地下32階に降りると、研究室の場所がマップの先に表示される。一度行った場所は表示されるらしい。
この階には研究室の入口が有るかも知れないので、しっかり調べなければならない。
地下32階の調査に3日掛かった。
結論から言うと、入口はふさがれていた。
壁に偽装してあるが、よく見るとモルタルで塗り固めたような跡がある。他の所にも同じような跡が有るので、隠された部屋が有りそうだ。
塞いだ跡を、火球と水撃の魔法で攻撃してみる。ツルハシなんか持っていないので試したが、水撃ならば少し壁を削れる。このまま穴を開けたい衝動にかられたが、モンスターが入ってきたら厄介なので諦めた。
研究室に見つけた塞いだ跡を優先する。水撃で少しずつ壊しながら周りに被害が及ばないように慎重に作業した。
開いた先は倉庫らしく、乱雑に色々な物が置かれている。床は光っていなかった。どんな物が置かれているか調べたいが、他にも部屋が有りそうなので、つながる所を探さなくてはならない。
暫く探すと塞いだ跡が見つかったので、穴あけ作業を始める。その日は魔力が尽きてしまったので、次の日に持ち越された。
次の日に開けた部屋は金庫っぽい。10冊ほどの本と石版で作られた魔法陣(鑑定ではダンジョン魔法陣)が4個、それに剣などの武器や指輪などが見つかった。どれも大切に保管されているので、お宝と思って間違いないだろう。大判小判では無いが、大きな金貨と小さな金貨も大量に有った。
地下32階の部屋の配置は、真ん中に研究室兼ベッドルームが有り、右側に倉庫、左側に金庫室と俺ん家に通じる魔法陣の部屋になっている。
塞いであった理由がわからないので、もう一度塞ぐ。ダンジョン魔法陣を経由して移動しなければならないので少し不便だが、空間が広くなるとモンスターが出て来る可能性が有った。
新しく見つけた本を調べたいので、研究室の本を持ち出せないか実験だ。
どんな影響が有るか分からないので今まで本を持ち出して無かったが、全ての書籍をここで調べるのは不便だ。
埃っぽくて薄汚いのも理由だが、ここにノートパソコンを持って来るとバッテリーが異常に消耗して使えなくなる。実は俺の部屋でも同じ症状だが、コンセントに差しておけば大丈夫だ。
電気に関しては色々変で、母が去年より電気代が3倍近くになったとぼやいていたし、スマホもつながりにくい。
ダンジョンが原因だろうけど、対処方法が無いので放置していた。
まず、倉庫に有った 『魔法の基礎』 と言う本を自分の部屋に持って行く。この本を選んだ理由は、何冊も有るからだ。
部屋に本を持ち込んでも特に変化は無かった。
次に、リュックに入れて近くの公園まで持って行く。中を見ると見事としか言いようが無いほどバラバラだったので、魔力が無い所では壊れるらしい。
門外不出は決まったが、俺の部屋までならOKだ。
ダンジョン魔法陣は移転元か移転先のどちらかに有れば移転出来る優れモノで、消費魔力も少なくMP1で4、5回程移転出来る。その、ダンジョン移転で、ナイスな応用方法を発見した。
今まで何の疑問も持たずに狭い物置を通っていたが、倉庫や金庫へ移転出来るので有れば、物置にも行けるかもしれない。早速実験すると、物置は勿論、家の何処からでも大丈夫だった。状況からすると、俺の家もダンジョンの一部らしい。
そこで、物置とつながっている穴を塞ぐ作業を行う。倉庫の中に入口を塞いだ材料が大量に残っているので、どんなに大きな穴でも大丈夫だ。
穴はしっかり塞がり、物置の床にティッシュを落としても消えない。親父達はモンスターの心配をしなくて良いと安心したが、どうやってあっちへ行くんだと聞いてきた。
試しに一緒に移転するか親父に聞いたところ「挑戦してみるか」と応えたので一緒に移転する。腰を抜かしそうなほど驚いた親父は、よろけて俺に抱き着いたので、2人で大爆笑してしまった。
金庫に有った本はスマホで撮影出来たので、全てのページをデータ化する。その他の武器や指輪なども撮影し、鑑定結果と一緒にパソコンに取り込んだ。
発掘品を記す。
本 11冊 魔法と魔法陣の解説、実験及び研究内容。
ダンジョン魔法陣 4個 ダンジョン内の移転用魔法陣。
魔法石 134個 魔力が入っている。
月星石 12個 HP上昇+1の魔石。
火星石 28個 火魔力上昇の魔石。
水星石 30個 水魔力上昇の魔石。
木星石 30個 風魔力上昇の魔石
金星石 3個 MP上昇+1の魔石
土星石 30個 土魔力上昇の魔石
黄金石 1個 レベル上昇+1の魔石
力魔石 45個 剛力の腕輪の材料。
飛行結晶 3個 たぶん飛べる。
魔攻の腕輪 4個 魔法力が上昇する。
剛力の腕輪 6個 攻撃力が上昇する。
剣 3本
魔導鎧 2個
金貨小 538枚 ちょっとみすぼらしい金貨
金貨大 865枚 500円玉と同じくらいの大きさで、分厚い見事な金貨