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15 パリの街

読んでいただき、ありがとうございます。また評価して頂き、とても感謝しております。

 菜々美さんは、無事移転魔法と収納魔法を習得した。あまりの喜びように、俺まで嬉しくなってしまう。

 マリエッタさんの案内で、王都行政庁オテル・ド・ヴィルに近い高級ホテルに泊まった。石造り、3階建ての大きな建物で、おーフランスに来たんだと思わせてくれる。菜々美さんは 「中世ゴシック様式ね」 とか言っていた。


「この辺りは貴族が多く住んでいますので治安がとても良いです。

 街灯も有りますから、遅い時間に出歩いても安全ですよ。

 セーヌ川を見ながらの夜の散歩もお奨めです」


 ホテルの人に言われたが、すっかり遅くなって眠くて仕方が無い。菜々美さんも疲れているみたいだ。


 朝はすっかり寝過ごしてしまった。支度をしている時に、菜々美さんにストレッチをやらないのか聞いてみたら、最近筋肉が付き過ぎているので止めたらしい。「ムキムキの女の子は嫌ですよね」と聞かれたので、頷くしかなかった。

 今日は、菜々美さんのリクエストで、ルーヴル美術館やノートルダム大聖堂を見に行く予定だ。彼女の考えでは、パリ庁舎が有ったのだからルーヴルやノートルダムも有るはず、らしい。


「ルーヴル宮殿は知っていますが、ノートルダム大聖堂は存じません」


 マリエッタさんの答えに「ルーヴル美術館は、宮殿だったわね。でも、ノートルダム大聖堂が無いのはおかしいですね」と菜々美さんが小声で俺に打ち明けた。


「とりあえず、ルーヴルを見に行きましょう」


 近いので直ぐに到着したが、菜々美さんが首を傾げている。


「何だか思っていたイメージと違うわね」


「そうだね。写真でしか知らないけど、ずっと小さい感じだ」


 ぐるりと周りを回ってもらったが、いまいちだった。入り口のガラスのピラミッドが無いにしても、建物があまりに小さすぎる。やはりあちらの世界とは違うらしい。


「シテ島に大きな教会か聖堂は有りませんか」


「シテ島には、パリ神殿が有ります。アマテラス教の王国本部ですね」


 そう言えば、王国の宗教事情が面白かったのを忘れていた。

 俺達の世界ではキリスト教が栄えていたが、こちらではアマテラス教と言う宗教?で太陽神が祀られている。

 160年ほど前に魔法が生まれ、治癒魔法や回復薬が出て来たおかげで、キリスト教が衰退し、魔法を司る太陽神に取って代わられた。

 魔法で次々に奇跡を起こされたのでは、どんな宗教も太刀打ち出来なかったのだろう。


「ノートルダムと言うのは、聖母マリアを指す言葉だったかしら。だから、名前が変わってしまったのでしょうね。日本に帰って話したらパニックになりそうです」


 菜々美さんは、新しい事実を知って楽しそうだ。


「それじゃあ、パリ神殿に行きますか」


「申し訳ありません。パリ神殿の有るシテ区には、許可の無い人は入れません」


 マリエッタさんの話では、シテ区(シテ島)は、王族や上級貴族の安全の為に入場制限を掛けているので、許可申請を受けるのに1週間以上待つ必要が有る。


「そうですか。とても残念です」


 菜々美さんがガックリと頭を垂れてしまった。

 その後、気を取り直して賑やかな通りをめぐり買い物を楽しんだ。

 俺は荷物運びの役をしている。菜々美さんも収納魔法を習得しているのに、俺に買った物を渡すのはショッピングの雰囲気を楽しんでいるからだろうか。


 夕食を済ませた後、セーヌ川沿いを散歩する。既に日は沈んでしまったが、魔道具の街灯が幻想的な雰囲気を醸し出していた。


「菜々美さん、寒くありませんか」


「大丈夫です。寒かったら、もっと圭吾さんにくっつきます」


 そう言いながら、ぐっと身体を押し付けて笑顔を見せてくれる。そんな仕草がとても可愛らしくて、俺も思わずにっこりしてしまった。


「思っていたパリと違いましたね」


「そうですね。私が旅行したかったパリとは違いますね。

 でも、王国のパリも素敵です。ゆっくりと流れるセーヌのように、落ち着いた雰囲気が心地良いですね。

 それに、こうして圭吾さんとロマンティックな散歩が出来て幸せです」


「外国の誰も知らない地で、二人でのんびり歩けるなんて贅沢です」


「このまま、王国に住んでしまいませんか」


「良いですね。菜々美さんと新しい人生を始めますか」


「素敵です。冒険者で食べて行きましょう」


 菜々美さんが目を輝かせている。本気でこのまま王国に移住してしまうのではないかと心配になった。


「でも、あちらのパリに行かなくて良いんですか。

 たしか、モンサンミッシェルにも行きたいと言ってましたよね」


「行って見たいですね。シャンゼリゼ通りでも買い物がしたいです。

 でも、テロなどが報道されていますから心配です」


「異世界より、実世界の方が危ないなんておかしいです」


「本当ですね」


 部屋に戻った後、ワインを飲みながらとりとめのない話をして過ごす。いつも何かに追われているような2人だったが、今は時間がポッカリ止まった中に居るみたいだ。

 優しく微笑みを浮かべる菜々美さんがとても美しい。彼女の瞳に吸い寄せられるように近付くと、優しく抱きしめてキスをした。

 柔らかい唇の感触がとても気持ちよくて、思わず理性を失いそうになるが、この前みたいな失敗は許されない。昂る気持ちを抑えるために一旦唇を離した。

 菜々美さんの潤んだ瞳が艶めかしく、何で止めちゃうのと言っている。そんな彼女を見ていると、落ち着くどころか焦りまでも招いてしまった。

 もう一度キスからやり直す。あまり考えすぎても駄目らしいので、素直に自分の欲求に従うことにした。


 前半は素敵な夜に出来たんじゃないかと思ったが、後の方はダメかもしれない。服を脱がせるタイミングなんかさっぱりわからなかった。

 この前ロマンティックに出来なかったので、少しでも挽回出来ればと思ったが、そんなにハードルは低く無かった。

 菜々美さんから「ちょっと不器用な処も圭吾君らしくて好きですよ」と言われたのは慰めだったのだろうか。好感度が落ちていませんようにと祈るばかりだ。



 帰る日の朝、素晴らしいものを見た。

 王国に2隻しか無いと言われている魔導飛行船で、ファンタジーゲームに出て来る空飛ぶ船だ。バス2台分位の長さで、船としてはそれほど大きくなかったが、帆を張って空を飛ぶ姿はとても素晴らしかった。

 飛行結晶に魔力を供給すると船が浮かぶ仕組みなので、飛行結晶の大きさが、そのまま船の大きさに直結する。これ以上大きい飛行結晶が無いので、飛行船も大きく出来ないらしい。

 名前は飛行結晶と言っているが推進力は無いので、風を受ける帆やプロペラが必要だった。

 飛行結晶スゲー、確か師匠のお宝に有ったはずだ。俺も飛行機を作ろう。



 モーリスさんに、カーンの領主館まで送ってもらった。

 その後、モーリスさん達とブリオウェレ、ルマン、ブルターニュなどへ移転する。移転魔法は一度乗った魔法陣にしか移転出来ないので、先輩魔導士に案内してもらわなければならない。この様な案内はサービスではなく取得費用に含まれている。今回は、モーリスさんが案内役として引き受けてくれたのだ。


 空間移転魔法の注意点を記す。


1.保有魔力(MP)1に対して1km移転する。


2.6人から7人で移転。重量か、容積の上限が有るらしく、それ以上増えると消費魔力が増える。


3.初めての魔法陣には移転出来ない。


4.空間移転魔法陣とダンジョン移転魔法陣でも移転は出来るが、消費魔力が2倍


5.領主館の魔法陣を使用した場合、通過申請が必要。


 モーリスさんにお礼を言って別れると、カーンの領主館からノルマンディ32へ移転した。消費量が2倍になるらしいが、移転出来るのなら使わない手は無い。次からの旅行が楽になりそうだ。


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