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13 ダンジョンの冒険者

読んでいただき、ありがとうございます。

 港区のダンジョンの正式名称は、東京1号迷宮と発表された。

 このダンジョンと、多摩川、富士山にあるダンジョンは有名になったが、それ以外は山岳部に存在している関係であまり知られていない。ダンジョンの所在地が特定され難いように、県名と番号で表す方式にしたらしい。何だか王国のダンジョン名に似ている。

 発見されたダンジョンは15個と増え、東京に4個、神奈川4個、山梨2個、静岡5個と、関東、東海に集中している。

 以下が、ダンジョンの一覧になる。


  1.東京1号迷宮 港区の公園ダンジョンとして有名 ネズミ (ノルマンディ32)

  2.東京2号迷宮 多摩山林

  3.東京3号迷宮 多摩川河川敷 多摩川ダンジョンと呼ばれている バッタ

  4.東京4号迷宮 立川駐屯地内 ミミズ

  5.神奈川1号迷宮 上野原山林

  6.神奈川2号迷宮 丹沢山周辺

  7.神奈川3号迷宮 秦野山林

  8.神奈川4号迷宮 藤沢山林

  9.山梨1号迷宮 倉岳山周辺

  10.山梨2号迷宮 長尾山周辺

  11.静岡1号迷宮 富士山 滝の水が迷宮に流れ込んでいると有名 入れない

  12.静岡2号迷宮 富士演習場内 モグラ

  13.静岡3号迷宮 愛鷹山周辺

  14.静岡4号迷宮 赤石岳周辺

  15.静岡5号迷宮 天狗岳周辺


 港区ダンジョン、新しい名称では東京1号迷宮の探索は順調に進み、2回目、3回目とそれなりの結果を残した。

 俺たち以外で、銃火器が使えなくなるまで長く探索するグループはいない。モンスターが2匹以上出て来ると、銃火器無しでは対応出来ないのが理由らしかった。


 迷宮探索班の内山田班長から、次回から東京3号迷宮に入ってほしいと言われた。迷宮から採掘される鉱石の種類と、地上の様子の確認だ。2号を飛ばしたのは、遠い上に交通の便が悪いからだった。



 多摩川に有る東京3号迷宮にやって来た。

 入口付近に、ダンジョン魔法陣が見つからない。魔法陣が無いのに、モンスターは出て来ないのだろうか。

 探索に入ると、ボス部屋らしき所が有るので最下層の可能性が有る。ダンジョンボスは相手にしたくないので、その場所は無視した。上の階に上がるとLV29のモンスターが出る。バッタのモンスターで、飛び跳ねるから厄介だ。


「内山田班長、接続階層は30階ですね。地表に出る為には1ケ月程度掛かりそうです。それを目標にしますか」


「それで頼む。鉱石採集も並行して行って欲しい」


「わかりました」


 それから2週間程東京3号迷宮に通った。

 午前中は大学に行き、午後から6時位まで探索を続けている。モンスターの数は多かったが探索は順調に進み、少しは鉱石類も採取出来た。

 地下20階層に来た時、設置されたダンジョン魔法陣見つける。早速、魔法陣に乗って地下1階に移転したのだが、ダンジョンの外はジャングルだった。付近に大きな樹が無いのでダンジョン前広場が有ったかもしれないが、こんなに荒れ果てていては誰も近づいてないだろう。


「このダンジョンは捨てられたのでしょうか」


 菜々美さんが聞いて来た。確かにこの風景から、そんな感じがする。


「そうかも知れないね。とりあえず戻ろうか」


「はい」


 地下1階のダンジョン魔法陣から、地下30階へ戻る。外に出ると、内山田班長と山下副指令が待っていた。


「高橋君、岩崎君ご苦労様です。少しお話をしたいのですが、時間を頂けないでしょうか」


 相変わらず山下副指令の物言いは丁寧で、こちらが恐縮してしまう。

 

「大丈夫です」


 菜々美さんも頷いている。

 多摩川の東京3号迷宮探索隊基地に入る。迷宮の名称が決まった時、迷宮前の自衛隊拠点が、駐屯地から基地に名称変更された。陸上自衛隊の拠点が基地と称されるのは初めてらしい。

 会議室に案内され、山下副指令、内山田班長と向き合って座った。


「迷宮探索をして頂いて、とても感謝します。全ての迷宮について実施するつもりですので、引き続きよろしくお願いします」


「こちらこそ有難うございます。迷宮を探索出来る上に、高い報酬を頂けるのですから、こちらの方こそ感謝しています」


 岩崎迷宮探索株式会社の売り上げが多すぎて困っているくらいだ。俺と菜々美さんは歩合給なので、働いただけ収入が有る。ちなみに岩崎教授は固定給(役員報酬と言うらしい)で、今年1年間は無いらしいので申し訳ない気持ちがいっぱいだ。


「逆に安すぎると、申し訳なく思っています。自前で探索を行えば、多くの隊員を犠牲にしなければなりません。高橋君達のお陰でとても助かっているのです」


 山下副指令はそう言って頭を下げてくれる。お礼を言われ過ぎて、逆に恥ずかしくなってしまう。


「副指令、高橋君が困っていますよ。そろそろ本題に移りませんか」


「そうですね。内山田班長、説明を頼みます」


「はい。それでは説明いたします。

 先日閣議で、迷宮利用計画案が可決されました。将来、異世界と貿易を行う計画です。鉱石類は勿論、回復薬などの輸入を目的としています。

 迷宮監視探索隊は、異世界との貿易ルート確保を命じられました。


 第1段階、迷宮警備要員の育成。

 第2段階、王国側拠点の確保。

 第3段階、貿易ルートの確立。


となっております。生命の腕輪の件は、一部情報開示しましたので、入手せよと言われています。

 第1段階の迷宮警備要員には、生命の腕輪を取り付けてレベルを上げさせる計画ですから、腕輪の供給を高橋君にお願いしたいと思っております」


「高橋君、生命の腕輪を用意して頂けないでしょうか」


 自衛隊が、本格的に生命の腕輪を利用するらしい。

 王国の歴史では、生命の腕輪が広まり人々が魔法を使い始めた。

 魔法を使った後に残る残留魔力が少しずつ集まりダンジョンコアの元を作り出す。やがてそれがダンジョンとなりモンスターを発生させるのだ。

 山下副指令はじめ迷宮探索隊の人には話したはずだ。


「生命の腕輪が魔力を発生させ、更にはダンジョンやモンスターの発生原因なのはご存知ですよね。どのように対処されるのですか」


「生命の腕輪を付ける者は、迷宮監視探索隊に限るつもりでいます。300人から500人を予定しています。

 それだけの人数に限れば、王国で発生した問題は起きないと考えています」


 正直、生命の腕輪は危険だ。

 ダンジョン、モンスターの原因でもあるし、特定の人が力を持ったら不味いと思う。生命の腕輪を付けていない人が、付けている人を管理するなんて、子供が大人を管理する様なものだ。


「管理に無理が有ると思います」


「確かに、私もそう思います。しかし、他に方法が有りません。

 迷宮が誕生してしまった以上、遅かれ早かれ立ち向かわなければならないのです。

 早急に警備要員を育てなければ、迷宮と、迷宮周辺の安全が確保されません。

 ……現場指揮官として、私も生命の腕輪を付ける覚悟です。

 隊員達だけに苦労を押し付けるつもりは……無い。

 最悪、生命の腕輪を付けた者達は、日本を去る事も考えています」


 山下副指令が、絞り出すように言い切った。色々と大変なのだろうと思われる。

 方針が出てしまった以上変更は無いらしい。俺だって心配するだけで何も出来ない。どうなるかわからないが、協力しなければならないだろう。


「わかりました。ご協力いたします」


「そう言ってもらえて助かります」


 とりあえず在庫の、1級2個(金貨20枚)、2級10個(金貨12枚)、3級30個(金貨8枚)を渡せば良いだろう。

 金貨1枚を10万円と換算して俺の手間賃を含んだ売値が2倍に決まる。申し訳ないくらいに暴利で、1級が400万円、2級が240万円、3級が160万円となった。これだけでは足りないので、3級の品を300個用意してほしいと頼まれた。


 生命の腕輪について、どんな報告がされたのだろうか。回復薬も渡さなかった方が良かったのかも知れない。少しでも役に立てばと良いと渡したが、迷宮利用に拍車を掛けた感じだ。


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