第7話 ミラーハウス
「ミラーハウス……?」
それはミラーハウスだった。鏡張りの壁でできた巨大迷路だ。迷路と言っても子ども用のもので、それほど難しい物ではなかった気がする。
しかし、難しいものではないにしろ、彼を探すには時間がかかってしまうだろう。
「なんで寄りにもよって……」
そうぼやきながら安藤くんが蝶番のドアを開けると、中はダウンライトがついていて、柔らかい光が照らしていた。私たちは懐中電灯を付けてさらに明るくする。
「おーい! 鈴木ー!」
「鈴木くーん!」
「……」
鏡張りの壁はマジックミラーで向こうに続いていると思っても、透けて見える壁だったり、どこを見ても自分の姿が見えたりして気持ち悪かった。幸い、懐中電灯の反射でどれが鏡なのかは判別がついてわかりやすい。
アハハッ!
キャハハッ!
どこからか子どもの笑い声が聞こえてくる。上にはスピーカーがついていてそこから聞こえてくるようだった。
照明のせいか、安藤くんの顔色が悪く見えた。こんな変なところに来て、しまっては気分が悪くなるのも当たり前だろう。
「安藤くん、大丈夫?」
「ああ、大丈夫……」
安藤くんがそう答えると、ハッとして顔を上げた。
「……あ、鈴木!」
安藤くんが急に走り出した。
「おい、鈴木! 鈴木!」
「安藤くん、待って……いたっ!」
私が慌てて安藤くんを追いかけたけど、鏡に頭をぶつけてしまい尻餅をついた。
強打したせいで目の前がちかちかする。
「ん……痛い……」
「大丈夫か、高野瀬?」
「う、うん……」
額の当たりがまだじんじんと痛い。入江くんが私の手を引っ張って起こしてくれた。
「急に走るからだ。ほら、安藤を追うぞ……」
「うん……」
私は入江くんの後ろを歩いて、走っていった安藤くんを追った。