最終章
蒸し暑く、虫の鳴き声がうるさい夏。気分は最悪だった。
「高野瀬~! 幽霊出てこないな」
「うるせぇぞ、松葉」
オレは友達と一緒に裏野ドリームランドに来ていた。
簡単にいうと肝試しだ。松葉が行こういこうとうるさく、やってきたというわけ。
まだオレが不知火の姓を名乗っていた以来、ここには来ていない。いや、一度だけきたけど、中には入れなかった。今日もきっと中には入れないと思っていた。
でも、中にはあっさり入れた。前には見えない壁みたいなものに阻まれていたし、もう2度と踏み入れることはないと思っていた。
ここで養夫婦の子どもも行方不明になっていた。娘を見つけ出したい高野瀬夫妻はオレと榊原のばあさんの力で娘を遊園地で見つけて欲しいって話になったけど、結局中に入れなかったから、計画はパーになった。
久しぶりに来た遊園地は雑草まみれで、あの楽し気な雰囲気のあるアトラクションパークとは思えない。
ふと、小さな影が見えた。オレはそれを見て足を止める。
「子ども?」
オレは近づいてライトを当てる。
それは女の子だった。なんとなく、そのシルエットに見覚えがあってオレはその子に近づいた。
「ねぇ、キミ! どうしてこんなところにいるの?」
オレはその子に近づいて話しかけた。
その子はオレの顔を見て驚いていた。
「ねえ、どうしたの……」
急にその子はぽろぽろと泣きだした。
「お父さん、お母さん……どこ……」
名前を聞くと、その子はやっぱり高野瀬さんの娘さんで、もらった写真の姿そのままだった。
この子はこれから3年の空白の時間を埋めないといけない。この子を世間は変な目で見るだろう。この子を守ってあげられるのも、寄り添ってあげるのも、きっと高野瀬さんだけじゃ時間が足りないだろう。
それに、またここに来た時、連れ出せるのはオレだ。今度こそ、オレが連れ戻さないといけない。
「陽菜ちゃん、大丈夫。もう泣かなくていいよ。お父さんとお母さんの所に帰ろう」
オレは小さな妹を抱えて遊園地を出た。警察にも電話して、警察が来る頃には陽菜は寝てしまっていた。
きっとこの子は、遊園地の事なんてこれっぽっちも覚えていないだろう。
こうして、オレが抱えて傍にいたことも、すぐに忘れる。
「どうすっかな……」
とりあえずオレは怒られるのを覚悟して高野瀬夫妻に連絡を入れた。
「もしもし、母さん? うん、そう。実はさ……」
企画に参加するために高速で書きました。
まだ書き足りないところがたくさんあるので、後日書き直します。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。




