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7/12

7・王子がなんだか変です。え、今更ですか?

「折角ハーレムエンドだったのに何で、と意味が分からないことも言っていたな。王宮を追われて、それでも共にと誓おうとしたら、カレンは走ってどこかへ行ってしまったのだ」


 うわぁ、そこまで言われてまだ好きってすごいわ。あ、お兄ちゃんの表情が割増しに冷ややかです。


「それでも探したいのか?」

「ああ、それでも俺はカレンが好きだ」

「だが、怪我をして居候している男についてくるとでも?もちろんこの家に連れてくるなんて考えていないだろうな。いいのか?俺が血迷って手を出してしまっても」

「いや、フレッドがするわけないだろ」


 ものすごく嫌味な言い方をしたお兄ちゃんに、さらりとルークさまが返されます。でも、なんだか矛盾していませんか。


「は?」

「う、ん…そうだよな、よくよく考えてみればフレッドが俺を出し抜くなんてするわけなかったんだ。俺か自分の妻かを天秤にかけても俺を選ぶ、フレッドはそんな奴だった」

「…………」


 ルークさまのとんでも発言に、私もお兄ちゃんも絶句してしまいました。でも、2年半前の、二言目には殿下殿下だったお兄ちゃんならあり得そうです。

 そして、ルークさまはこちらに体を向けると、お兄ちゃんに深く頭を下げられました。


「お前の事を疑って退学に追い込んでしまって、すまなかった。今さら詫びても仕方ないと思うが」

「それがなくてもいずれ退学していたはずだ。カレン・ヘニングにとって俺は番犬で目の上のたんこぶのようなものだったからな。それに、騎士学校に通えて護衛をした事で家に仕送りもできているし、何しろ騎士の称号を得て武官としての道も開かれている。あのまま文官になるよりこっちの方が俺にあっているようだ」


 所用で領へ戻ってこられたオフィーリアさまにお聞きしたことがある。どうして殿下はお兄ちゃんを信じてくれなかったのかと。けれど、その時に浮かべられたオフィーリアさまの表情がとても深刻そうで、私はそれ以上お聞きすることが出来なかった。


『……私のいない間にやってくれたわね』


 気高く美しく優しいオフィーリアさまの口から出たとは思えない言葉に、私は思わず聞かなかったふりをしたのだけれど、もしかしてお兄ちゃんに関することだったのかもしれない。現に、その後すぐオフィーリアさまは学院に戻られている。

 そして、オフィーリアさまと入れ替わるようにお兄ちゃんが帰ってきて、しばらくすると隣国へ留学したのだ。


「お前、あいつに仕える気なのか!?」


 ルークさまの声に、私はハッと意識を戻した。あれ、なんでルークさまが怒っていらっしゃるの。


「俺だけじゃない、家族全員エヴァレット領の恩恵を受けている。返すことが出来るなら、返すのが当たり前だろう?」

「お前は騎士学校へ行っていたと言っていたな。もしかして、あいつの騎士になるつもりか」

「貴方には関係ない」

「ある!」


 ルークさまは大きく体を動かされて、痛みが走ったのかうずくまられました。さすがに、お兄ちゃんも一瞬目を丸くして、ルークさまから目をそらしたのでした。だからルークさま、まだ無理をするといけませんと何度も申し上げているのに。


「お前は俺の騎士になるんじゃなかったのか」


 痛いのをこらえつつ、しかめ面をしながらルークさまがこちらを見上げられました。昔は学院の卒業後、お兄ちゃんは近衛に入って将来国王になられた殿下を御守する、そう思っていた。それをなかったことにしたのは殿下、いやルークさまなのに。


「何を今さら」

「だが」


 そういって、ルークさまは違うと呟いて首を振られ、今度は敵を見るかのようにお兄ちゃんを睨みつけられたのでした。


「違う、あの女と結託して、堂々と処罰人にでもなるつもりか」


 先ほどとは異なり冷たい声音に、私は驚きました。さっきお兄ちゃんに謝っていたのに、どうしてこんな目をお兄ちゃんに向けられるの?

 このままもしかして、仲直りして昔のようにって思ったのに。


「ここまで悪化していたか、いやそうなんだが……な!」


 ぽつりお兄ちゃんはそう呟くと、目を細めていきなり右手でルークさまの頭を掴みかかったのです。そのまま、お兄ちゃんはルークさまの頭をベッドに抑えつけました。


「おおおおお兄ちゃん!? 一体ルークさまに何をっ!?」

「いでででででっ!!!! 痛い痛い離せフレッド!!」

「処罰人になるなら、卒業を待たずとも今できるんだけど?」

「おおおおお俺が悪かった!!」

「それに、廃太子を処刑したところで、何の得にもならないし」


 ぱ、とお兄ちゃんがルークさまから右手を離すと、ルークさまは苦々しい目でお兄ちゃんを睨まれました。


「俺に対して無礼だぞフレッド」

「廃嫡された平民のルークに対して無礼?」

「……………っ」


 お兄ちゃんに言い返されると、ルークさまはそのままこちらに背を向けて、布団にすっぽり丸まってしまわれました。この様子だと、何を言っても反応なさらなさそうなので、私とお兄ちゃんはそのまま部屋を出たのでした。


個人的には、なろう系悪役令嬢モノのヒロイン側のテンプレを意識して書いているんですが、どこか違うんでしょうか。むむむ。


感想はログインごとに拝読しております。こんなにいただけるとはとびっくりしているのですが、まだ導入部分ですので、返事は少々お待ちくださいませ。

というのも、今書いちゃうと絶対ネタバレになっちゃうからです。違うんですよ~こうこうこういう理由でこうなってるんですよ~~この子悪い子じゃないんです本当は心根の清らかないい子なんです。(あれ、不良息子を持つ母親のセリフになってる)


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