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短編コメディー

第1回勇者会議〜強い魔王の倒し方〜

作者: 久陽灯

 ようこそ、勇者様がた。

 この度はお忙しい中、王城にお集まりいただきましてありがとうございます。

 私、この勇者会議の進行をつとめさせていただきます、秘書のミルルと申します。

 ええまあ皆さん顔なじみなのですが、一応けじめということで自己紹介を。

 それでは、出欠をかねまして名簿を読み上げさせていただきます。


 赤の勇者様。

 青の勇者様。

 黄の勇者様。

 黒の勇者様。

 緑の勇者様……は先日南の魔王城チャレンジで教会送りとなり不参加です。

 皆様も気をつけて、くれぐれも自己管理を徹底してください。


 それでは、今から第1回勇者会議を始めたいと思います。

 昨今、魔王達の勢いが強まってまいりました。

 勇者様方も日々魔王城の攻略を頑張っておられることと思いますが……最近成績が悪くてですね。

 王様も、あまり成果が出ていないとお怒りです。

 そこで、この会議を開くことになりました。

 個人でやみくもに戦うのではなく、皆でどうすれば魔王の数を減らせるのかを考え、この時間を有意義なものにしていきたいと思います。


 そこで、今日の議題です。

 強い魔王はどうすれば倒せるのでしょうか。

 たとえば南の魔王のダンジョン。

 挑戦回数がこの度百回を迎えましたが、ほとんどの勇者様が魔王戦で敗走しています。

 正直強すぎてどの勇者も勝てないので困っているのです。

 はい、それでは元気よく手をあげてくれた赤の勇者様。


「気合い!」


 あ、それだめなやつですね。精神論ですからね。

 マンガでよく使われますが、実際気合いで何とかなるんだったら今まででも倒せてますからね。

 あなたは南の魔王城攻略チャレンジ回数は断トツですが、教会送りの回数も断トツです。

 今までは気合いを入れていなかったのでしょうか? 

 ……すみません、しゅんとさせてしまいました。

 それでは、気を取り直して黒の勇者様。


「八百長!」


 それ、勝ててませんよね。

 いや、立ち合いは強くあたってあとは流れでお願いしますって言われましても倒さなきゃだめですからね。

 あの、まさかとは思いますが、あなたの攻略後に魔王が復活した例が十件もあるのですが……あ、ノーコメント。

 ノーコメントですね、わかりました。


「……必殺技」


 ああ、真面目な意見がやっと出てほっとしました、青の勇者様。

 それでは、具体的にどのような必殺技で倒すのですか?


「……」


 ……考えてから発言してください。

 それでは黄の勇者様、どうぞ。


「ハニートラップ!」


 ……鏡を見ましょう。まずはダイエットからトライです。

 またアンケート調査では八割の魔王が男性と回答していますが、勇者の八割も男性です。

 残り二割は無回答や性別なしを含みますので、難しいと言わざるを得ません。


 わかりました、このままではらちがあきません。

 こういうときは一回置き換えて考えてみましょう。

『ネズミはどうすればライオンに勝てるのか?』

 これでどうでしょう。名案は浮かびますか?


「わかった、ペスト!」


 わかっちゃだめですね、黒の勇者様。

 たしかにネズミの媒介するペストは怖いですが勇者様達も死にますからね。

 というかペストで無双する勇者ってある意味魔王よりたちが悪いですよね?


「数で圧倒する!」


 なかなかいい案だと思います。

 それでは、その発言をした赤の勇者様が一番手となって突撃しましょう。

 え、嫌? 最初のネズミは倒される? わかってらっしゃる。


「大好きな食べ物で釣って罠にかける!」


 ああ、素晴らしい案です、黄の勇者様。さすが『勇者のグルメ本』を出して印税生活しているだけありますね。本業もそのくらい頑張っていただきたいものです。

 それでは、南の魔王の去年のアンケートを見てみましょうか。……ええと、好きな食べ物は『太った人間の肝臓』だそうです。この中で該当するのは黄の勇者様……あ、前言撤回ですね。そうだと思いました。

 青の勇者様、さっきから考えこまれているようですがご意見はありませんか?


「……アーノルド・ヴァンダムーン・セガール・ノリス」


 えーと。それは一体?


「……さっきの必殺技の名前」


 なんというか強そうですが……具体的にはどういった動きで敵を倒すのですか?


「……」


 ……そこを考えてから名称を決めてください。

 そうですね、進行役の私の意見としましては。

 現在の勇者を一旦全員解雇し、一般応募も含めて選抜試験を行い、より強い勇者たちで編成しなおすのが、この問題を解決するのに一番適した具体的方法ではないかと。

 ……ええと皆様、そんな捨てられた子犬のような目で見ないでください。

 あくまでもこれは案です。

 今後結果がふるわなければこういうこともありうるということで、各自頑張って来期ノルマを達成してください。


 それでは、もうそろそろ時間になりましたので、会議の結果をまとめます。

 今日出た案の中では、黄の勇者様が発言された『大好きな食べ物で釣って罠にかける』案がベストだと思います。ええ、今必死で首を横に振っていらっしゃいますがいい案なのは確かですので……もし、今後それ以上の案が出なければ、その方向で進みたいと思います。

 ……そんなに怯えた顔をしないでください。肝臓は半分取っても差し支えありませんから。


 ところで話は変わりますが、翌月魔王に定期のアンケート調査をお願いしますので、勇者様達は各自、自分の担当地域の魔王にアポをとってください。

 アンケートを受け取る際は、十分に距離をとり、下級の魔物から手渡してもらってください。

 くれぐれも不用意な発言等で無駄に教会送りにならないよう、注意をお願い致します。


 これで、第1回勇者会議を終了致します。

 皆様、お疲れさまでした。

 あとは流れでお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 司会の勇者斬りっぷりが痛快でした。
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