入学式
そして、4月。
猛勉強の末、全教科94点平均を取った
健太くんは、人生初の学年2位になり、
野球推薦を手にした。
「あっーー!きっちゃん、俺たち同じクラス!」
「うそっ!ほんとだー!」
イエーイッとハイタッチして抱き合う。
それが当たり前の私たちは
周りの驚いた視線に気を止めもしなかった。
「そうだ。生徒代表の挨拶頑張ってね!」
「ありがと!」
他の生徒とは別に準備のある私は教室に行く前に
健太くんとはお別れ。
人見知りである健太くんが、少々心配ではあるが、
私はそのまま足を進めた。
「…ん、…ちゃん!きっちゃん!」
「え?あ、健太くん?」
「どうしたの?式終わったよ?教室戻ろ?」
「え?あ…」
周りを見ると、ぞろぞろと体育館を出て行く人たち。
さっきの人と、目があって、それから…
の、記憶が曖昧だ。
「珍しいね?きっちゃんかボーッとしてるなんて。」
「…うん、どうしたんだろう。」
へらって笑いながら、教室に戻った。
教室に戻ると、もういくつかのグループに分かれていた。
健太くんによると、入学式が始まる前に
すでに大体のグループが出来たらしい。
準備があった私は、完全に出遅れてしまったらしい。
とりあえず、席に座ると
隣に座っていた女の子がこちらを振り向いた。
「綾瀬さん、さっきの挨拶お疲れ様。」
「え?…あ、ありがとう。」
「すごいよねぇ、私はあんまり人前で話すの得意じゃないから。」
「私も…結構緊張した。」
彼女は熊切美也ちゃん。
ふわっとしたセミロングに
耳のあたりにピンをさした可愛い子。
高校で初めて出来た友達だった。