中学3の夏。
「綾瀬、ちょっと。」
中学3年生の夏。
担任の先生に呼び出された。
…なんか、したかな?
不思議に思いながら、先生の後に着いて行く。
職員室に入ったところで先生がこちらを振り向いた。
「綾瀬。」
「は、はい…」
「笠間を止めてくれ。」
「…はい?」
「えー、夏川ティーチャー、きっちゃんにそんなこと言ったの?」
「うん。」
お昼休み、先生に言われたことを全て言う。
彼は笠間健太くん。
幼稚園からの幼馴染だ。
「まぁ、俺の頭じゃあ、無理だもんね。」
へらっと笑う。
先生に言われたのは、進学先のことだった。
私が行きたい高校は都内でもナンバーワンの難関校。
難関大学進学率もナンバーワンだったりする。
そこに健太くんも行きたいって言っていたんだけど…
「俺なんて、運動しか取り柄ないし…」
「そんなことないよ!
健太くんには、沢山いいところあるの私は知ってるもん!」
周りの人に優しいこと。
いつも笑顔なこと。
彼の人柄は、自慢したいくらいなんだから。
「ありがと、きっちゃん。」
「だから、私いいかえしたんだからね。
健太くんは、絶対に入学できますって!」
「え⁉︎」
「健太くん。
確かに、あの高校は難しいかもしれない。
でも、一定の成績をとれば、スポーツ推薦があるんだよ!」
「スポーツ、推薦?」
「そう。幸いうちの中学校は野球が強豪校でしょ?
健太くんがもし、高校でも野球を続けるんなら、野球推薦もらうのが1番確実だと思うの。
ただ、その枠が1つしかなくてね…」
ある意味、一般受験よりも狭き門。
「内田くんも、その枠を狙ってるらしくてね。」
「内田って、この間きっちゃんに告白したやつじゃん。」
「…私があの高校行くって知って、狙ってるみたい。」
「…そっか。じゃあ、尚更頑張んなきゃね!」
にっこりと、太陽の笑顔。
「てことでね、健太くん。」
「うん?」
「次のテストで、平均点90点以上。
それが条件だって。」
「…えっ⁉︎」
健太くん、ごめんね。
私が設定しちゃいました。
「…健太くん。私、健太くんと同じ高校に行きたい。
私も勉強教えるから、がんばろ?」
「…/////うん。」
健太くんの頰が、ほんのり赤くなった気がするけど…気のせいかな?