花火大会
美也ちゃんと色違いの浴衣。
白色の生地にピンク色の花模様。
美也ちゃんは、黄色の生地にピンクの花模様。
2人でこの間買いに行ったのだ。
髪の毛もアップにしてもらって、軽く巻いてもらった。
いつもと違う自分に、ウキウキしつつ、気恥ずかしかった。
健太くんは、家の手伝いがあるから少し遅れるとのこと。
1人で、賑わう出店を見ながら
今か今かと待ちわびていた。
「1人?」
とんとん、と肩を叩かれて後ろを見れば
男の人が一人。
「えっと、友達を待ってるんです。」
「そっか~、実は俺も連れ待っててさ。
良かったら一緒に回んない?」
漫画で見たような、ナンパの台詞だったけど
見た目がチャラチャラしてなくて。
どちらかというと、真面目そうな感じだったから
危機感みたなものは、何もなかった。
「ごめんなさい、友達に聞いてみないと。」
「そっかそっか、だよねー、じゃあ、一緒に待っててもいい?」
「はい、良―――――」
「わりぃけど、一緒に回るつもりはないんで。」
すとん。と胸に納まる。
安心する、甘い香り。
心臓の音が少し早くて、少し汗ばんでて、少し息が切れてる。
走ってきたのだろうか。
「・・・んだよっ男かよっ」
そう言って、男の人はそのまま居なくなってしまった。
「春くん?」
「馬鹿!!!あんな見え透いたナンパに引っかかっちゃだめだって!」
「え、あれナンパなの!?」
私の言葉に、呆気がとられたように春くんは目を丸くした。
「~~~っお願いだから、もうちっと危機感持って?」
へなへな、っと座り込んで、顔を押さえて、春くんは言った。
「・・・うん、ごめんね?でも、ありがとう。」
王子様みたいで、かっこよかった。
少し、強引に引き寄せられた肩がまだ熱を持っている。
「そういえば、美也ちゃんは?」
「家の手伝いだって。」
「そっか、健太くんもなんだよね。」
「じゃあ、少しの間、2人だね。」
「・・・うん。」
「んじゃ、ほい。」
「はぐれたら、困るから。」
そう言いながら差し出された手。
真っ赤な顔を、屋台の明かりでごまかせないかな。
なんて思いながら、そっと手を重ねた。




