泣きそうな顔
「はぁ…」
「美也ちゃん、どうかした?」
「え?」
「これで8回目だよ?溜息。」
「あーごめんね?うん、ごめん…」
美也ちゃんにしては珍しく歯切れが悪い。
何か、嫌なことでもあったのかな?
「何かあったら、言ってね?」
「うん、ありがと。」
いつも一緒に登校する健太くんは寝坊したらしく、
落ち込んだ声で「ごめん」と謝ってきた。
寝坊なんて、たまにあるのに
今までにないくらい落ち込んでいたからビックリしたものだ
「はよーす」
「あ、おはよ、春くん。」
「おはよ、妃。」
今まで下がっていた頭を持ち上げた美也ちゃんは、驚いた表情をしていた。
「え、妃ちゃんのこと…」
「おぉ、なんか変か?」
「変、っていうか…」
再度、美也ちゃんが口を開きかけたとき
健太くんが教室にはいってきた。
「あ、おはよ!健太くん。」
「お、はよ。」
やっぱり、少し 元気がない。
「ねぇ、昨日 春ちゃんさ、きっちゃんの家に行ってた?」
ガタガタッ
美也ちゃんの座っていたイスが鳴る
「え?おー、行ったけど…」
「や、やっぱねー!俺、ちらっと見だけだったから、確信もてなくて話しかけなかったけどさー」
一瞬、泣きそうな表情をした健太くんだったけど、
すぐにいつも通り。
だけど、その一瞬の表情が気になった私は、
その後の会話が耳に入ってこなかった。




