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健太side
「あ、牛乳買っておけば良かった!」
家に帰ってきて、ドアを閉めた瞬間に
母ちゃんが声を上げた。
「明日じゃダメなのか?」
「ダメじゃないけど、明日の朝ごはんフレンチトーストにしようと思ってたから…」
「じゃあ、俺が買ってくるよ!
コンビニでいいでしょ?」
「ほんと?ありがとうね、気をつけてね!」
「あいよ〜〜」
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「ありがとうございました〜」
牛乳の入った袋をぶら下げて歩く。
コンビニの隣には公園があって、
昔よくきっちゃんと来たことを思い出した。
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「泣かないで、けんたくん。」
「ぐずっ、だ、っで…そーまぐんが…」
「けんたくんはかっこいーよ。
きさきは知ってるよ!きさきがずっと一緒にいてあげるよ!」
「…ほんと?」
「うん!きさきは、けんたくんが1番好き!」
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人見知りで、中々友達ができなくて
いつも きっちゃんの後ろにいた。
それを一人の男の子に馬鹿にされて。
だけど、きっちゃんが慰めてくれた。
嬉しい思い出も、悲しい思い出も
全部、きっちゃんが隣にいた。
暫くして、きっちゃんの家の近くに来る。
相変わらず大きくて、だけど どこか物寂しい。
大きな門の前には、黒い影が見えた。
「気を付けてね。」
「おう。夕飯、ごちそうさま。」
「また、来てくれる?」
「いつでも来るよ。ヒメの様子も気になるし。」
その影の主の存在をを見た時、
心臓が嫌な音を立てた。
きっちゃんの隣に、ずっと居たかったのに。
居られると、思ってたのに。




