第8話 戦の狭間で
最近は更新が早くできてわくわくです。第二章のプロットも書き始め、まだまだワクワク♪
休息?そんなものはない
状況を見極めろ
敵を見極めろ
移り変わるのは一瞬だ
1―篠原紅太
「紅太……お前、紅太か!?」
「はい。やっと、同じステージですね」
僕はようやく颯良先輩に微笑んだ。
だが、再会を喜ぶ間もなく、現れたモンスターに僕は斧を振り下ろした。
さらに先輩は、僕の後ろに迫って来たらしい紺の戦士に一閃を放ってくれた。
その勢いのまま、互いに反転して、僕は緑と紺の戦士に、先輩はモンスターに武器を構えた。
僕と先輩は背中合わせに立ったのだ。
とはいえ、僕の方は2対1だ。少し苦戦するかと思ったが、赤の戦士・結城伸幸が僕の隣に立ってきた。
「紅太さん!な、なにがあったかよくわかんないっすけど、オレもあなたと一緒に戦います!」
「……ありがとうございます」
僕は特に気に留める事もなく、勢いに任せて斧を振った。
「いったぁ!!」
斧は紺の戦士の剣を横切り、結城に一撃当たった。
「ごめんなさい!手が滑って!」
「だ、大丈夫大丈夫」
胸に軽く手を当て、ヒラヒラと振ってきた。
ふぅ、とため息をついて、二人に連撃を放つ。僕の二刀の斧は鎖に繋がれているため、その扱いにはまだ慣れていなかったが、勘で動いた。まだ彼らが油断しているからか、なんとかうまくいく。
視界の端に金色の戦士が見定めているのを見えたが、静観している。
「お前は、戦わないのか?」
「あぁ。私はこのゲームの主催者だ。最後の一人とのに、戦おう」
「ふぅん。まぁいいけど」
それだけ交わして、注視点を戻す。
「また面倒なのがノコノコと。お前らには、消えてもらう」
「俺にも、それなりの事情ってもんがあってね。だから、お前も、俺の為に死んでくれよ」
「冗談じゃない。僕はあなたたち程度に負けるつもりはないんですよ」
「だから、なんで戦士同士でここまで戦わなくちゃいけないんっすか、もう!!」
赤、灰、紺、緑。四色の武器がそれぞれ交錯し、僕は紅蓮に身を投じた。
2―木戸雄哉
オレは灰色の戦士を見て、とても、とても満足していた。
「手が滑った」とヤツは言っていたのを見て、笑い転げそうになった。
――なにが、手を滑った、だ。さっきまでしっかり2対1でやりあえる技量を持っていたくせに。面白いなぁ。こいつも。
そう笑って、再び4人の戦いが始まったが、やがて門中のモンスターをくいとめることが難しくなっていた。
大量のモンスターが戦士を襲ってきたのだ。面倒なことだ。
ζナックルでの近接攻撃を得意とする青の戦士には難しいのだろう。
あんな状況では、きっと楽しいものは見られないだろう。
戦士全員がモンスターに向かい始めたところで、オレは足音を消して鏡の奥に消えた。
足から順に現実へ戻ると、背後から暗い声がした。物乞いが手を震わせ、オレを見ていた。
「ハゼ、ノノソヨハキ……チョクセヤガ、ニヒモキオハキジャハキソ……」
オレは嘲りの意味を込めて見返す。
「バカだなぁ、お前。あれだけの大人数を一気に相手にするのは面倒だし、非効率だ。無駄な消耗するだけだよ。なにより、オレはゲームの達人だぜ?安心しろよ。ちゃんと考えはある。このゲームは、最後の一人になればいいんだ。なら、それまでは勝手に自滅かぶつかりあってもらうのが、一番の近道だ」
お前のように成り果てるつもりはない、と吐き捨てるかのように捲し立てる。
「…………」
「ちゃんと優勝してやるよ。このゲームもな」
3―蓮桐戒人
モンスターが現れ、俺たちは排除を急いだ。もちろん、戦士への攻撃も忘れない。
邪魔だ邪魔だ邪魔だ。
斬って。斬って。斬って。
だが、どうしても。どうしてもあと一歩、あと一歩が届かない。
そして、
「興が、冷めちまったな……」
「です、ね……」
高田と新しい奴がそう言うのを聞きながら、オレは息を整えていた。
モンスターを殲滅したころには、体が限界だったのだ。
剣で体を支える姿を、他の奴らが嘲笑しているように錯覚してしまう。
「まぁ、次回だ。次回」
「帰りましょう。先輩」
各々、鏡の方へ向かっていく。
気付くと、俺の隣に”あいつ”がいた。
「なんだよ…………。お前も笑いにきたのか?」
「バァソ。トヤハセモヘェン」
ニヤついた声で俺に顔を近づける。
「ソニウナキキハ」
ゆっくりと言ってから背を向けた。
俺は手近な鏡を割って、吠えた。
俺は、弱い。
4―結城伸幸
「ほんと……何だったんだよ。あのモンスターたち」
「少し増えてきましたっすよね。しっかり、守っていかないと」
「そうですね」
オレらはそう言葉を交わして、家に帰った。家の鏡では”あの人”が写っていた。珍しい。
「なぁ……アンタらはいったいなんなんだよ……」
彼は仏頂面のまま、何の言葉も発しない。
「お前は……オレに何も言わないんだね」
無言の彼は左手で刀に触れ、こちらをジッと見ていた。
ただそれで終わった。
とりあえず進めよう。強くなるために。
5―篠原紅太
僕は高校を終え、帰路についていた。少し長い。
颯良先輩が卒業して、一人で帰るようになって、そう思う。
途中で、先輩を見つけた。
「颯良先輩。今日はもう帰りですか?」
「いや、あれから行く気も無くしてよ」
ため息をつきながら頭を掻く。
僕はゆっくりと隣に座った。
考えている先輩を見ながら、タイミングを計る。大丈夫と思ったところで、声を掛けた。
「先輩。僕は、あなたと戦いたくありません。だから、同盟を組みませんか?」
すると先輩はやや明るい顔をしてから、和やかになった。
「ありがとよ。紅太」
そして遠くを見ながら続けた。
「俺はこんな戦い、間違っていると思っている。伸幸もそうだ。戦士同士必死なのは分かるけど、どのみち人を殺してまで進んでいい道じゃない。正当防衛はありかもだけどよ。伸幸と同じように、モンスターをたおしゃいい。お前はどう思う?」
僕は一つ言葉をつぶやいた。けど、先輩は「え?」と伝わっていないらしい。まぁ、いい。
「なんでもありません」
「俺と紅太、伸幸の三人で、この戦いを止めようぜ」
僕は笑顔で頷いた。
やっぱり、僕が倒すしかないんだろう。紺の奴に、緑の奴、金の奴、そして結城だって。
僕は先輩の後ろでグッと、手に力を込める。
――先輩、知ってますか?なんで僕が戦士になったのか。
口に出して問うこともなく、僕は気付かれぬうちに歩みを早めた。
先輩の隣に寄り添うように。
6―門中颯良
俺は紅太と別れて、帰路に立った。
街中でたまたま、ビルにあの化け物が写った。戦士になるために契約して、何度か目にする。
「よぅ。今日は何か話してくれるのか?」
「ヨノチモソラヨヤ。チソチ、サナバガヌクジヤダアウ」
「……んー、やっぱわかんねぇ」
俺は頭を掻いて、もう一度見た。こいつと言葉を交わせるようになるべきなのか、それもまた分からないが、おそらく呆れられているのは分かる。
「ドクテ、キッニロヨソオハキダアクガ、ノノソケ。タロハスバ、チフゾ」
今のは、なんとなくだけ分かった。戦え。そう、目が語っている。
「たぶん、で答えるぜ、化け物」
そう前置きして、青く燃える化け物に言った。
「俺は、俺が正しいと思う方へ進む。その先で、お前らが何か、どうすべきかを知っていくさ」
俺はそれだけ言って、歩みを早めた。
俺の望む世界を求めて。
さて、第一章終了まであと二話。頑張ります。第一章が終わったら、トークショー的なのを挟もうかは迷ってます。たぶんしないかな。ではでは。