Fateful Encounter
今この現状で思う事。
(――――とりあえず、煩い)
凛とした声、低い声、声変わり前の甲高い声。様々な特徴ある声が鐘威の耳には届いていた。
(俺は寝不足なんだが……)
そこで鐘威の脳は急速に活動を始めた。
(……ん?)
「って、おい!!」
飛び起きて周りを見てみると、聞こえていたはずの声は消え、誰もいなかった。
「……空耳、か?」
頭を掻いて、自分を眺める。服装は変わらずブレザーだ。病院にありそうな真っ白いベッドで寝ていたようだ。
鐘威は立ち上がり、部屋の引き戸を開け廊下に出る。
振り返ると、上には表札のようなものがあり、きっちりとこう書かれていた。
『保健室』
「……ここ、学校…か?」
もしそうならば、ここの責任者に話を聞いた方が早いだろう。目指す先は校長室だ。万が一にも校長の存在しない学校は無いだろう。
鐘威は周りを見ながら、長い廊下を歩く。
(普通は保健室と同じ並びに職員室とか校長室あるよな…。そろそろ見えても――――)
「……あ。あった」
『校長室』
しかし、見つけたは良いが、部外者が勝手に校長室に入っても良いものなのだろうか。
少し考える。
(まあ、この場合はしょうがないよな…)
鐘威は思い切ってノックする。
「……」
反応はない。
(…まさかの不在かよ)
念のために確認しようと扉に手をかけ、開けた。
「すみませーん、誰か…」
「「ようこそ!!」」
の声とクラッカーの音。だがクラッカーはとんでこない。
目に飛び込んできた沢山の人物に戸惑う鐘威の前に、黄褐色の髪の少女が進み出た。
「まず、私はわかる?」
少女が自分を指さす。鐘威の知り合いにこんな髪の色をした人はいなかったはずだが、とりあえず幼馴染の名を上げることにした。
「…えと、美浪?」
「……は?」
と言われてしまった。
さあ、おさらいしてみよう。
部屋でチャットしていたら、いつの間にか見知らぬ場所で眠っていた。帰る方法を悩んでいると、知らない少女に話しかけられ、銃で思い切り殴られた――――。
「っあ―――――!!」
「思い出した?」
「俺を殺そうとしたやつ!!」
「いや、してないって」
少女は苦笑して右手を横に振った。そして、咳払いすると話し始めた。
「まあいいわ。まずは自己紹介ね」
少女が自分の胸に手を当てる。
「私はりん、大葉りん」
続いて右にいる、長い黒髪を高い位置で一つにまとめている大人びた少女を指した。
「この子は莉華ちゃん」
莉華と呼ばれた少女は薄く笑う。
「親童莉華」
「……どうも」
鐘威は軽く頭を下げる。
りんは次に、左にいるにこやかな笑顔を浮かべる青年を指す。
「彼は要多くん」
「こんちは」
「ちなみに、噂好きのくせに文章力が壊滅的だから、気を付けて」
「ええっ!?りんちゃんまでそれ言うか!?」
噂好きで文章力がない。その特徴に鐘威は思い当たる人物が一人いた。
「…あの、もしかして…葛箕、さん…?」
問うと青年はきらきらとした笑みを浮かべた。
「おお!!ビンゴっ!葛箕こと、善正要多です。宜しく、音差さん」
「ああ、よろしく」
続いて、りんは後ろの黒いソファに腰かけている青年を指した。
「首にチェーンをかけた彼は八雲くん。普段はいい人だけど、怒らせたら殺されるわよ」
金色のくすんだ髪の青年が右手を上げる。
「鉋八雲。八雲でいい」
確かに先程の二人に比べると少し無愛想だが、悪い人ではなさそうだ。よく見るとりんの言っていた通り、首にチェーンを通した銀の指輪をかけている。何か大切なものなのだろうか。
りんが窓側を指さす。
「あそこにかたまっている三人は、左から水稀、絵麻ちゃん、寧音ちゃん」
肩まである黒髪を下ろした少女。
「高天水稀」
茶髪を横で一つにまとめている少女。
「風城絵麻」
金色に赤茶色のメッシュを入れた髪をツインテールに結んだ少女。
「甘樫寧音!」
りんが続ける。
「少し背の低い彼は蓮くん」
名を呼ばれると少年はこちらを振り向いた。
「瑪瑙蓮波。蓮って呼んで!」
そう言ってにぱあっと笑った。何だかすごく癒される。
りんは、蓮の隣にいる此方は少し背の高い青年を指さす。
「彼は慧斗くん」
暗めの茶髪の青年は右手を上げ、爽やかな笑顔を向けた。
「弓慧斗。宜しく!」
「軽装の彼女は瀬南ちゃん」
りんが指さした少女は制服を動きやすいように改造しており、ブレザーとスカートの丈は短く、スカートの下に黒いスパッツを穿いている。
「真名瀬南」
「彼は丞くん」
此方はブレザーの上に紺のマントのようなものを羽織った青年だ。前髪で左目が隠れている。
「海場丞です。以後よしなに」
そう言うと青年は微笑した。
りんは腰に手を当てると此方を向いた。
「今いるのはこれで全員ね。主要メンバーとしてはあと一人抜けているけれど、それは彼が帰ってきてからね。――――東馬鐘威くん!」
自分の名を呼ばれ鐘威は驚く。自分はまだ名乗っていないのだが。
「え、何で俺の名前知って…」
「詳しい説明はまた後で。――――合言葉は“制圧する者”!じゃあ、改めまして」
りんが此方に手を差し出す。
「ようこそ、『ソウルシティアンペア』へ!!」