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Soul City Ampere  作者: 緋賀ゆづき
序章
3/6

My Prelude

 十月十四日、午後十時。


――――――――

【音差さーっん!】

『…テンション高めですね』

『何ですか?』

【その後どうですかっ?】

『だから…何がです?』

【パソコンの不具合とかぁ…】

〈音差さんパソコン調子悪いんですか?〉

『いえ。そんな事言った覚え無いですけど…』

【もうっ、音差さんも和葉さんも鈍感だなぁ…】

【現想園の事ですよ!】

『あぁ』

〈その話まだ続いてたんですか〉

【そりゃそうですよ!】

【俺の予想、次は音差さんだと思うんだ…】

『…まじですか。』

『そりゃ行きたいような気もするけど』

〈いやいや、それは無いでしょ〉

〈音差さんも迂闊に手を出さない方が良いですって〉

『…ですよねー』

【それはともかく!】

【音差さんは質問に答えて下さいな~】

『……そういえば』

【え!?何々!?】

『この間変な画面が出たんですよ』

『ちょうどチャットでこの話した後に』

〈この間って、ついさっきじゃないですか〉

『…あ、ほんとだ』

【それってぇ~】

【現想園からの招待状だったりして!!】

『うそー』

〈まさかそんな〉

【音差さんにはもうすぐお迎えが…】

『え!?ちょっと待って!?』

『俺まだ死にたくないですよ!?』

〈大丈夫ですって。何も起こりませんよ〉

〈葛箕さんもからかい過ぎです〉

【…てへぺろ】

『葛箕さん、てへぺろじゃ無いです』

『そうですね。和葉さんの言うとおり、何も起こらないのを信じます』

――――――――




 鐘威はハッと目を開けた。

 空には闇が広がっている。

 身を起こした。どこも痛む箇所は無い。

 反射的に頭を押さえて呟く。

「……何処だ?…」

 まず今分かっている事を整理しよう。

 つい先程まで自分の部屋でいつもの様にチャットをしていたはずだ。特別外に出たわけでもないし、チャットが終わればすぐに寝るつもりだった。

 そこで鐘威は先程のチャットでの会話を思い出した。

(…まさか、とは思いますけど…)

「…現、想園…じゃ、無いよな…?」

 問うたところで、周りには誰もおらず、答えが返ってくるはずがない。

(いやいやいやいや、ちょっと待て!!そんな異世界ファンタジーな話が本当に存在してて良いの!?いや確かに憧れるよ!?夢と魔法の国だもの!って違う違う!え、何?もしかして俺死んじゃった!?うわあああ、父さん母さん親不孝な息子でごめん、美浪いつも美味しいごはんをありがとう。中華飽きたとか言っちゃってごめんなさ…)

「いやいや、落ち着け俺!」

 若干取り乱してしまったが、そんなことを言っていても始まらない。もう一度頭の中を整理して、それから帰る方法を探そうと考えた。

 ふと空を見上げる。先刻と同じ、ただ無限の闇と静寂だけがその場を包んでいた。

 周りを見渡す。

「誰もいない…というか、何も無い…」

 まさに“無”という言葉が相応しい空間だった。

 思わずため息をつく。この一瞬の間にたくさん驚き呆れ、疲れてしまった。

 またもため息をつき、鐘威は自分の服装を見た。

「――――そういえば…」

 部屋でチャットをしていた時はTシャツにジャージという、いたってラフな格好をしていた。だが、今は身に覚えのない学生服を纏っている。少し変わった形状をしているがブレザーのようだ。胸元に“SCA”と文字の入った紋章がある。校章だろうか。

「…こんな名前の学校、近くに無いよな…」

「…おはよう、起きた?」

 鐘威が呟いたその瞬間に鐘威の頭上から凛とした声が降りかかった。

「うわあああっ!!」

 驚いて思わず後ろに仰け反ると、少女は口元に手を当て、そんなに驚かなくても、と笑った。

 体勢を整えて、相手を見る。すると、彼女の手には何か鈍い光を放つ物があった。

「……銃?」

 言うと、少女は右手で持っていた銃をくるくると回した。どうやら、是、と言いたいようだ。

「貴方の質問に答えてあげるわ」

 少女がそれを鐘威に向ける。

「お、おい!待てよ!!」

 鐘威が両手を上げると、彼女は涙目になって笑いだした。

「……ふふっ…あははは…!違うわよ、撃ったりなんかしないわっ…あはははははっ!!」

 あまりにも笑う少女に鐘威はむっとした。

「…おい…」

 少女は笑い終ると手を差し伸べた。

「気に入った!」

 鐘威がそれを断り立ち上がろうとした刹那。

「……っ!!…」

 鐘威の鳩尾に衝撃が走った。

 それが少女が銃で殴ったものだと気づくのには少し時間がかかった。

(……こいつ、俺に何をさせたい…)

 朦朧とする意識の中、少女に問う。

「……此処は、何処、だ…。お、前は……?」

「……ここは、ね」

 少女の答えを聞く前に、鐘威の意識は闇に沈んだ。

  



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