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獣人の姫  作者: MTL2
 
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閑話[一番の被害者は青年である]

【ペアウ村】

《師匠の家》


「浪漫の詰まった武器を作ろうと思います」


「作ろうと思いまぁーす!!」


「実験台はゼル君です」


「よろしく!!」


「おい最悪の連中が手ェ組みやがったぞ。帰って良い?」


「諦めて欲しい、ゼル殿。師匠が新作義手の研究に付き合えと言わなければ私も居ない」


「そんな事言わずにおっぱい揉ませてくださいよ、オクスさん」


「い、嫌だぁああ……」


さて、この阿鼻叫喚ならぬ阿鼻混沌の状態がどうして作り出されたのか。

言わずもがな、諸悪の根源は師匠とスズカゼの現世暴走型コンビである。

そして犠牲者はゼルとオクスの義手コンビ。他の面々が居ない理由は多々あれど、一様に巻き込まれたくないと言い残したのは事実である。


「……で、聞くが。どんな義手を作ったんだ?」


「フフフ、これは私と師匠の思想アイデアを惜しげも無く使用した浪漫義手!!」


「今までの真面目に造ってたのとは別の意味でワケが違うぜ」


「何せ起動させたら爆発する予定でしたからね。ボツにされましたけども」


「出オチじゃねーか」


「心配すんなよ。ちゃんと改変して採用してるから」


「むしろ心配するわ馬鹿か。……で、それ誰が付けんの?」


「何の為に二人呼んだと思ってんですかー、やだなぁ。ゼルさんに決まってるでしょう」


「ちょっと待てそれおかしくね?」


「オクスさんにそんな危険な事はさせられませんって。もっと安全な、身体を強化するタイプのを造りました」


「そ、それは良かった。もうどんなのを付けさせられるのだろうと気が気でなくてな……」


「師匠、微弱震動を続けておっぱいに刺激を与え続け感覚鋭敏化と豊胸効果を与える義手をオクスさんに」


「おう」


「いやちょっと待て何かがおかしい」


「はっはっは! 人だけ不幸にして自分は安全なの付けるなんて事が許されると思うなよ!!」


「ゼル殿は人格者と聞いていたのだが私の中で段々と印象が崩れていく……」


「グダグダ言ってねぇで、さっさと義手付けろ。さもないと触手型義手付けるぞ。因みにスズカゼ考案の」


その一言を聞いてゼルとオクスは腹をくくり、それぞれの前に置かれた義手を手に取った。

普段、彼等が付けている鉄色や銀色ではなく、紫色と青色という、目にも体にも悪そうな色の義手を。


「見た目は……、変わらねぇな」


「と言うか、むしろ素朴シンプルでは?」


「大層な外見も良いがな、今回は外はサッパリ中はギッチリだ」


「何だその料理の煽り文句みたいな……。まぁ、良い。で? 仕込み(ギミック)の起動方法は?」


「肩を持ち上げる感じで、ぐいっと」


「こうか?」


義手が爆発するかのような速度で発射され、肘より先は壁を突き破って荒野へと。

残された面々は埃と爆風を引っ被りながら、ただ穴の空いた壁を見詰めていた。

何が起きたのか理解出来ているのは計画犯二人。何が起きたか理解出来ていないのは実行犯一人。

荒野の外の、シンの名を呼ぶ絶叫を聞くのは獣人一人。


「……説明」


「これぞ浪漫ッ!!」


超砲腕ロケットパンチッッッ!!」


「ボツ」


「「何故だしッッ!!」」


「まず第一に腕が無くなると剣が振れないし、そもそもどうやって回収するんだ? 回収出来るとしても拾ってる間に隙は出来るし拾うのを阻止されたらそれまでだ。本当に浪漫しかない機能じゃねぇか」


「まぁ、そんなワケで駄目だと言われる事は予想済みなんですけどね」


「クックック、俺達が高が超砲腕ロケットパンチ程度で納得すると思ったか?」


爆発音と、轟音。

腹の底を揺るがすような音の激流は外の荒野から響き渡ってきた。

何事かと外へ駆けだしたゼルとオクスの瞳に映ったのは、華。

色取り取りの炎で彩られた、花火という華。


「たまやー!」


「かぎやー!!」


「ちょっと待て何だアレ」


「端的に言えば義手に爆弾仕込みました」


「実用性と機能性と観賞性を持ち合わせた素晴らしい義手だろ?」


「自爆性と無能性と危険性を持ち合わせた最悪の義手の間違いではないのか?」


「何てことを言うんですか、オクスさん! 師匠、義手機動(スイッチ・オン)!!」


「任せろ!!」


スズカゼの掛け声と共に師匠が何かを遠隔起動させる為の装置を押した。

何の起動装置スイッチかは解らないが間違いなく面倒なものだろう。

ゼルとオクスは視線でそう認識し合い、何が起こっても大丈夫なように身構えた、が。


「ひゃぁうんっ!?」


直後、ゼルの隣に居た獣人は全身を身悶えさせ、その場にへたり込む。

本人も何が起きたか解っておらず、ゼルは取り敢えずスズカゼと師匠の仕業に間違いない事だけは理解出来た。


「どうだ? 全身に微弱な電撃を流すことにより一瞬で絶頂させてしまう義手は!!」


「ぶっちゃけ一回使ったら三時間ほど充電しないといけませんけどね! 私の考案です!!」


傍目に爆笑する二人を前にして、微かに顔を紅潮させた獣人は巨大な胸を押さえつつ、涙を溜めた瞳でゼルを見上げた。

もう帰りたいと言わんばかりに疲労困憊の男は彼女と目が合うと、何を言うでもなく頷きを見せる。


「五発?」


「十発でお願いします」


その後、師匠とスズカゼの頭に義手の拳撃が打ち込まれたのは言うまでもない。

因みにスズカゼは通常の拳撃だけでは効果が薄いので超砲腕ロケットパンチを喰らわされた事も付け足しておこう。



読んでいただきありがとうございました

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