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獣人の姫  作者: MTL2
名も無き村で
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各国の近況

《村の中心部付近》


「暇だと思うのだが、どうだろう」


「だからこうして行商を手伝って貰ってるんじゃないですカ」


「……それはそうだと思うのだが、どうだろう」


「知らないですヨ」


二人は閑古鳥の鳴く、と言うか、ごく稀に閑古鳥が去るような場所で行商を行っていた。

と言うのもだ。ただでさえ隣同士の家が数百メートル単位、下手すれば数ガロ単位で離れているような村である。

村の中心で行商を行えば人は来ないし、各家に訪ねていけば老人の話に数時間単位で付き合わされるし。

その分だけ物は売れるが、流石に非効率すぎる。

と言うわけで、こうして販売方法を考える序でに休憩を取っているワケだ。一応行商は行っているがーーー……、まぁ、結果は見ての通り。


「……レン。荒野の暴走者と呼ばれる貴方に聞きたい事があるのだが、どうだろう」


「何ですカ? 商売の秘訣は教えませんヨ」


「そうではない。クロセールからの依頼で各国の近況を教えて欲しいと……」


「……あぁ、そこですカ。けど、それならクロセールさんが来れば良いの二」


「リドラ氏との討論で忙しいと思うのだが、どうだろう」


「な、成る程でス……」


行商人として各国を回るレンだからこそ、近況を知ることはある。

嘗てはジェイドも活用した、新鮮な情報源。実際に刮目したからこそ解る、その正確性。

ギルド主力である三武陣(トライアーツ)ですら、その知る人ぞ知る情報屋は重宝するのだ。

フーは彼女に情報代である1200ルグを手渡すと、耳を傾けるべく微かに首を据えて見せた。


「まずサウズ王国でス。ここはこの前の襲撃の爪痕が一番残って居る国ですネ。人員的被害は無かったみたいですけド、建築物なんかが酷いようでス。国力回復には暫く掛かるかも知れませン」


「サウズ王国と言えば四天災者[魔創]が居たと思うのだが、どうだろう」


「彼女は基本的に動かないですネ。嘗てのスズカゼさんが狙撃された事件でも最後の最後まで動かなかったようでス。……強者の余裕や傲慢、とは少し違うかも知れませんガ」


「成る程。解ったと思うのだが、どうだろう」


「知らないでス。次にベルルーク国。ここは以前から軍力を溜めていますガ、四大国条約もありますシ、実際は軍備を持て余していると言うのが正しい言い方ですネ。噂では近々、軍備を解体して何か別の産業を始めるのではないかと言うものもありまス」


「その噂、確実性は?」


「解らなイ、としか言えませんネ。主にベルルーク国周辺で出回っていますからベルルーク国自体が流したのカ、それとも本当に行われているから流れているのカ。そもそもあの国は煙草や火薬が特産品ですシ、不可能ではないはずでス」


「確かにギルドでも火薬の多くはあそこで仕入れていると思うのだが、どうだろう」


「それは知ってまス。と言うか運んでるの私でス」


「そうだったか……」


「そしてシャガル王国ですネ。ここはいつも通り、特に変わった事もなくのんびりした国でス。強いて言うならば白き濃煙(ヘビースモーカー)といウ、かなり強力な傭兵を国家お抱えとして雇い入れたことぐらいですカ」


「あの国で長期休暇バカンスを楽しみたいのだが、どうだろう」


「スズカゼさんだけは連れて行かない方が良いと思うでス」


「だな」


「最後にスノウフ国ですガ……、ここはさらに北にあるロドリス地方の鬼面族と戦いを繰り広げた後、条約によって平和締結を結んだので今は上へ下へ大忙しみたいですネ。因みにスズカゼさんが大きく関わったらしいですヨ」


「あの人物は台風か何かだと思うのだが、どうだろう?」


「迷惑してん災者って呼ばれる日も近いと思うでス」


「その名付けはどうかと思うが……、どうだろう」


「知らないでス。……あッ、ギルドは要りますカ?」


「序でに頼みたいと思うのだが、どうだろう」


「……だから知りませんっテ」


フーは、レンにその事を話していなかった。

話す必要も無かったし、そもそもクロセールは自分で無ければ話すなと付け加えただろうから。

最も知りたい現状が第三者視点から見たギルドの事であるーーー……、と。その言葉を。


「ギルドについてハ……、何とモ。本当に何とも言えないですネ。いつも通り過ぎて怖いぐらいでス。四大国条約によって調停者バランサーという立場が奪わレ、平和によって仕事の量も激減したと言うのに変動は見えませン。世の流れから言えば喧嘩せんそうが収まれば仲裁者バランサーは居なくなるものですガ、ギルドはただのお人好し(バランサー)ではなく組織でス。それが何の抵抗もなく沈んでいくとなれバ……、まるでギルドがその為の組織だったと思えてしまいますネ」


「……ふむ」


もしこの場にクロセールが居れば、口端を結んでこう呟くだろう。

大方、予想通りだーーー……、と。

クロセールはギルド統括長補佐のヌエに目を付けている。彼女は経歴が一切不明にも関わらず、いつの間にかあの地位に収まっていた。

どんな手を使ったかは解らないが、それでも、ギルドの明らかな異変は彼女がヴォルグ統括長の補佐になってからだ。

恐らく、ギルドに不穏を運ぶのであれば、その運び人は彼女であろう、と。


「良い情報であったと思うのだが、どうだろう?」


「私の本職は行商人なの二、最近はこっちの方が主な気がしてきましタ。納得出来ないでス!」


「それを言うのならリドラ氏の前で言ってくれば良いと思うのだが、どうだろう? クロセールが最近は著書が少ないと嘆いていたし、リドラ氏はその話を聞いた後に無言でスズカゼ・クレハに視線を送っていたぞ」


「……大変ですネ」


「全くだと思うのだが、どうだろう」


「知らないでス」


読んでいただきありがとうございました

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