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獣人の姫  作者: MTL2
いざ北国へ
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白霧の中で孤立して


「お爺さんお婆さんの縄はもう少し緩く、眼鏡の人のは脚を避けて結んであげてください」


スズカゼの指示に従いながら、船員達は盗賊団一味である彼等を縛り上げていた。

とは言え、相手はご老体と負傷者。流石に痛々しい縛り方は出来まい。

なのでこうして出来るだけ丁寧に結んでいるワケだがーーー……、今はそんな事に注視している暇はない。


「吐きませんね、情報」


「キシシッ……。ま、そうだろうな」


「何でです? 別に捕まえるとか言ってないのに」


「一度暴けば捕まるのは当然だしな。それに脚を折られても口を割らねぇって事は相手のボスは馬鹿じゃねぇらしい」


「……喋れば処分、って所ですかね」


「だろうな。キシシシッ」


船長から聞くに、この辺りでの盗賊団の被害は長いそうだ。

回路が限られているために他場へと逃げる事は出来ず、悩みの種になっていたんだとか。

ムーはそのことを含め老夫婦と眼鏡の男達の事も考えるに、盗賊団は恐らく族家業だろうと言った。

族家業とは即ち、その一族が代々行ってきた伝統ある家業の事である。

尤も、今回の場合は決して伝統があってはいけない物なのだが。


「取り敢えずピクノさんとジュニアの身柄が心配です。……何とも無ければ良いんだけど」


「あくまで人質としての取引だからなぁ。下手に手ェ出せばどうなるかは向こう側もよく解ってるはずだぜ? キシシッ」


「なら良いんですけど。……取り敢えず、これからどうします? このまま口を割らないんじゃどうしようもないし」


「キシシシッ。一番安全なのはコイツ等とピクノ、ジュニアを交換する事だなァ。相手もまだ情報が吐かされてないと解れば交換に応じるかも知れないぜ?」


「もし応じなかった場合は?」


「相手の取引内容に従うしかねぇだろうなァ」


取引内容、か。

嘗ての、サウズ王国での一件のように誰かが人質に取られているだけならば相手の所に乗り込んでやる物だが、今回はそうもいかない。

ここは海の上。正しく孤立の存在。

相手の居場所も解らないのだから、幾ら気持ちを急かせてもどうしようもない。

ピクノとジュニアの安全が心配でもーーー……、自分には何も出来ない。


「キシシッ。まさか、こんな事に巻き込まれるとはな」


「ですよね。国家転覆は覚悟してたんですけど、こっちで攻めてくるなんて……」


「い、いや、流石にそこまでは覚悟してねぇぜ……?」


何にせよ、この状態ではどうしようもないという事だけが確かだ。

そして自身が最優先すべきはピクノとジュニアの安全。次に盗賊団の殲滅だと言う事も。

そして、今自分が何も出来ないと言う事も。

何と馬鹿な事だ。犯人を暴いても今更。全て後の祭り。

全て、手遅れーーー……。


「…………ふー」


落ち着け、落ち着け、落ち着け。

今イラついても仕方ない。今すべきは確実な判断。

現状を考えよう。今、自分が置かれている状況を。

船内の盗賊団は全て捕らえたはずだ。もし他に居たならあの眼鏡の男が自身に飛び掛かって来た時、既に行動を起こしているはずだからである。

さて、この事もあり今の船内は落ち着いているワケだ。

しかし肝心のピクノとジュニアは未だ行方、安否不明。

彼女等を取り戻すにしても相手の盗賊団が居ないのだから、手の打ち様などない。

故に停滞。故に、何も出来ず、こうして固まって居るしかない。

固まって、居るしかーーー……。


「……固まって?」


そう言えば、だ。

ブルレドワームが仕掛けてきたとき、老夫婦若しくは眼鏡の男は、どうやって盗賊団に連絡を取ったのだ?

通信機器などが無い事は既に確認済みだ。彼等の部屋にも持ち物にも、そんな物は無かった。

かといって発煙筒等という目立つ物を用いるワケもない。人目に付かない連絡手段を執るはずーーー……。

いや、逆だ。人目に付く連絡手段だとすれば? それこそ、海を覆い尽くすほど[固まった]物でーーー……。


「……ははーん?」


少女は口端を崩し、笑む。

その微笑みとも言い難いような禍々しい笑みは、ムーに嘗ての出来事を思い出させた。

そう、自身の仲間が豹変してしまった時の出来事を。


「おーい、スズカゼー! メイドさんが紅茶淹れてくれたぞー!!」


何気なく部屋に入ってくるココノアを、ムーは即座に回れ右させる。

今は来るな、シャムシャムは絶対に来させるな、と。

そう何度も繰り返しながら。


「ムーさん、ちょっと」


「き、キシシッ!? 私は嫌だぞ!!」


「違いますよ。それでも良いけど。……ちょっとね、ある事を思いついたんですけど」


「どーせロクでもない事だろ!?」


「大正解です。今一度、私の閃きに賭けてみませんか?」


確かに盗賊団の一味を捕らえたのはコイツの閃きもあっただろう。

ならばそれに乗るというのも悪くない。賭けてみる価値はあるはずだ。

きっとこの状況を打破出来るだけの案を出してくれるのだろう。

あぁ、それなら賭けてみる価値はある。

ーーー……この人物でなければ、だが。


「キシッ……。一応聞くけど、何するんだよ?」


「えーっとですね。まずこの船を襲わせます」


「…………」


「…………」


「……何」


「さぁ、頑張っていきましょうかぁ!!」



読んでいただきありがとうございました

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