表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人の姫  作者: MTL2
 
21/876

閑話[しりとり]

【サウズ王国】

《第三街東部・ゼル男爵邸宅》


炎上する前の、具体的には未だ黒尽くめ集団が出るよりも、第二街での強奪者事件が起きるよりも前の話。

スズカゼがジェイドに勉強を習い、やってられっかと資料を放り投げた頃。

その階下では二人の人物が資料の海に沈んでいた。


「……」


「……」


黙々と作業を進めるリドラとハドリー。

数えることすら嫌気が差すほどの資料は彼等の周囲に多量に山積みにされている。

それらは全て獣人の戸籍表だったり住所登録だったり第二街入街許可書、つまりカードの登録資料だったり。

本来ならばスズカゼが行うであろうはずの資料のそれなのだ。

とは言え、彼女は現状では文字の読み書きすら怪しい。

そんな状態の彼女に任せられるはずもなく。

リドラとハドリーが代替わりで行っている所だ。


「……暇だな」


「作業がありますよ」


「……そうだが、むぅ」


作業と言っても資料に不備が無いかどうかを確かめて判を押すだけの仕事だ。

慣れてくれば自然と解るような物で、後はほぼ流れ作業である。

ポンポンポンとリズム良く判を押しては資料を横に流して新しい物を取る。

飽き、だ。簡単に言ってしまえば。

同じ作業は楽かも知れない。だが、飽きや退屈というのはやはり慣れてない人間からすれば非常に苦痛な物である。


「り……、リリード鳥」


「!?」


そして急に始まるしりとり。

余りに暇なときの最終手段を最初に出してくる辺り、やはりこの男はただ者ではない。

因みにリリード鳥というのは現世で言うダチョウのような物で、空は飛べないが俊足。人が乗れるほど大きな物も居るそうだ。


「……リリード鳥」


「え? あ、え?」


「……竜魚」


いや、答えれないとかそういうのではないと思う。


「う? うー……、……ウルティオス?」


これは現代で言う所の恐竜の一種である。

とは言え、現世のように絶滅はしておらず、ロドリス地方に生息しているようだ。

肉食で凶暴。正しくティラノサウルス的な存在である。


「スカイッシュ水」


炭酸のサッパリとした口通りが特徴の天然湧き水、スカイッシュ水。

因みにこれは第二街の朝市で500ルグで販売中である。

フェイフェイ豚とこれのセットは密かな人気を誇っている。


「い……、いー……、インク?」


これは説明不要。

現世と同じように文字を書く際に用いる物だ。

彼等の手元にあるペン先にもついている。


「暗闇」


「み、水」


「図式」


「客間」


いきなり標準語でしりとりされてもどう反応すれば良いのだろうか。

説明すれば良いのか。暗闇とか水とか図式とか客間とか説明すれば良いのか。


「……まな板」


「…………!!」


「…………」


「……反応ありませんね」


「それで理解する辺り、君も相当だと思うがね」


最近、仲間内の中でまな板=スズカゼとなってきている。

本人が聞けばどう思うのか。

それの説明は不要かも知れない。

と言うか不要である。



《第三街南東部・住宅街》


「ぶぇっくしょォい!!」


「……姫。女性なのだから、もう少しお淑やかなクシャミは出来ないのか?」


「こういうのは大きい声だした方がスッキリするんですよ、体揺れるけど」


「まぁ、揺れるほどの物は無……」


「え?」


「何でもない」


何でもない→インク→暗闇→水→図式→客間→スズカゼ。

ジェイドの頭の中で、ふと、こんな式が出来上がったのは秘密である。


読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ