バタバタギルド
「ちょっと休憩しようか。終わりもみえて…きてはいないけど、少しは片付いてきたし」
「わかりました。あ、そうだ。こちらが報酬が不確かな委託の依頼で、これがアンの街周辺では達成が困難なもの、最後が報告書の中で気になった内容を記録しまとめてみました」
3つの紙の束をレオンさんに渡しました。レオンさんはポカンとしながら、次々に紙をめくって確認していきます。
「ほんとだ、これ報酬の記載がないじゃん。…海に咲く花の依頼とか誰が出したんだよ。あ、これも…」
ページをめくるたびに、レオンさんの目が厳しいものに変わっていきます。これは、私の存在も忘れられていますね。今の状態だと声も届かないでしょう。ひと段落するまで放置です。
その間に私は隣の部屋の簡易キッチンに置いてあった道具を使い、紅茶を2人分準備します。実は最初の説明の時にのどが乾いたらいつでも使っていいといわれていたのですが、作業している間は集中していて忘れてたんですよね。
まずは水魔法で水を出して、沸騰させます。水道が壊れているそうなので、魔法で代用です。温めたポットに沸騰したお湯を注ぎ、杯数分のティーバッグを入れ蓋をして蒸らします。タイマーは…ありませんね。感覚で時間を計り、ティーバッグを取り出します。そして温めておいたカップに紅茶を注げば、完成です!レオンさん用に砂糖とミルクも用意して、元の部屋に戻ります。レオンさんは…頭を抱えてしまっていますね。
「どうなってるんだ…あ、ステラ」
「紅茶です。レオンさんもどうですか?」
「ありがとう。いただくよ」
ということで、ブレイクタイムです。この紅茶もおいしいですね。オートマティック・オンラインの飲食で外れはないのでしょうか?それともアンの街限定?なんにせよ食が豊かだと心も癒されますね。
「そうだ、ステラ。この資料まとめてくれてありがとう。すっごく助かったよ」
「それならよかったです。レオンさんは何か難しい顔をしていましたが、大丈夫ですか?」
「あぁー…」
曰くこんなに不備だらけの依頼書やら真偽不明な報告書があるのは些細な問題だそうです。しかしレオンさんのもとに届くのは大問題だそうで。
「普通は職員がある程度報告書やらを読んで、不審な点がなかったら俺のもとにまで届くわけなんだけどね。絶対ではないけど。俺のところに持ってこられるってことは、依頼書を作成しても問題ないって判断されたわけなのね。それなのにこんなに不備だらけの書類ばかりって、一体どうなってるんだ…」
なにやら大変なことが起こっているようです。まぁ達成ができない依頼ばかりが掲示板に並ぶ事態になりかけたましたからね。レオンさんにしてみれば気が気ではなかったのではないでしょうか。
「ということで、俺は今から担当者とお話してくるから。ステラはまだ休憩しててもいいよ。隣の部屋にお菓子もあるから、食べてもいいしさ」
「わかりました」
紅茶を一気飲みして部屋を出るレオンさんを見送って、自分も紅茶を一口飲みます。あの様子だと、しばらくは戻ってこなそうですね。
「ホッ」
「あ、ルノー!」
中庭で遊んでいたルノーが、様子を見に来てくれました。窓辺で羽を休めて、目を細めています。ルノーに近づき手を差し出すと、嘴で軽くつついてきます。
「中庭はどうでしたか?何かおもしろいものでも見つけました?」
「ホッホー」
『楽しかった』気持ちが伝わってきます。中庭は綺麗な草花や水色の木々が生えていたりと、冒険心をくすぐられますからね。機会があれば、私も探索してみたいです。ルノーとしばらく戯れたあと、また中庭に行くみたいなので見送りました。そして紅茶を飲み終わったころにレオンさんが帰ってきました。
「ステラーお待たせ」
「おかえりなさい、レオンさん」
「いやー長く話しちゃった。それになんだかんだで俺の仕事も増えたし…」
ことの顛末を聞くと、どうやら人手不足のために雇われた臨時の職員が問題だったそうです。アンの街やその周辺の情報などを全く把握しておらず、仕事内容もあまりわからぬまま働いていたそうで。普通は初日にある程度のことは教えてもらうはずなのですが…。どうしてそんなことが起きてしまったのでしょうね。その臨時の職員には今日のところは帰ってもらったそうです。
「ということで、早急にやらなくてはならないことができました。そう、臨時職員が来てから作成された依頼書を見直さなければなりません」
わ~いと拍手するレオンさんの目は笑っていません。ただでさえ、レオンさんは5日間1人で働いてらしたのに…。話している間にも次から次に運び込まれる依頼書の山。最初の報告書やらの山は壁際に寄せられ、新しい山が中央に並び立ちます。ちなみに依頼書は通常1週間保存された後に資料として転写され、その後は処分されるそうです。
「報酬は上乗せするからさ…。手伝ってください」
「頭は下げなくとも、お手伝いしますから!一緒に頑張りましょう!」
「ステラ…!ありがとう」
お仕事がどんどん増えていきますね。作成された依頼書の数は1000は余裕で超えるそうです。1日に何百という依頼が冒険者によって遂行されていますからね。当然と言われれば当然でしょう。レオンさんが涙目で依頼書に向き合っているのを横目に、私も紙をとります。ここは速読スキルさんの出番です。頑張って終わらせましょう!
ファンタジー要素?ゲーム要素出したいですね。
次話は少し更新が遅くなるかもです。




