星魔法習得
パロマさんとオリーブくんを連れて、旧図書館に向かいます。距離はそれほどないのですが、オリーブくんは息が上がってしまっています。
「少し休憩しますか?」
「だ、大丈夫」
「もうすぐ着くんでしょ?家の中で休ませた方がいいわ」
「わかりました。…あ、ほら見えてきましたよ」
「はぁ。なんでこんな何もないところに住もうと思ったのよ…」
だって図書館に住みたかったんです!誰に呆れられようともこの選択は後悔しておりません。
鍵を開けて2人を招き入れます。本当は鍵を閉めなくてもプレイヤーはおろかNPCも入ってくることはできないのですが、やはり雰囲気重視でつい鍵をかけてしまいます。
「オリーブくんは私の部屋で休みますか?ベッドもありますし」
「そうね。ステラのテイムモンスターたちも一緒にいてあげてくれる?」
「ホー」
「シュ」
「ありがとう。オリーブもそれでいい?」
「うん!」
ということで一度私の部屋によります。パロマさんはオリーブくんをベッドに座らせると、軽く頭を撫でました。私もオリーブくんの傍に2匹を下ろします。物を壊さない程度に遊んでてくださいね。
1人と2匹に見送られて部屋を出ると、隣にある天井に星が描かれている部屋に入ります。
「…これは素晴らしいわね…。これを描くのにどれほどの時間を費やしたのかしら。そもそもどうして図書館に描く必要があったの?もともとこの部屋は何に使われていたのかしら。…描かれているのに季節は関係ないのね。はくちょう座、わし座、こと座のすぐそばにアンドロメダ座とぺガスス座がある…。主要な星座は全て描かれているのかしら。…あら、これは…」
パロマさんが一人だけの世界に入ってしまいました。天井を見ながらグルグルと部屋の中を歩いています。傍から見るとだいぶ変な人ですね。ですが自分の好きなものを見ると別世界に行ってしまう気持ちはよーくわかるので、邪魔にならないところで待っていましょう。…こんなときルノーとフォスがいれば、遊び相手になってくれるんですけどね。
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「ふ~…まだ謎は少し残るわね…。あら、ステラ。そんなところで何しているの?」
「あはは…お気になさらず」
ようやくパロマさんが現実に戻ってきました。実際はそんなに立っていないのでしょうが、体感だと30分ほど放っておかれたような気がします。床に座っているのでお尻が痛いです…。
「星魔法を習得できるかは分からないけど…。ステラ、ちょっとこっちに来て」
「?はい」
「ここに立って」
「はい」
「…もうちょっと右」
細かく位置を決めながら立つ場所を決められます。なんの違いがあるのでしょうか?わたしには分かりませんが、星詠みの魔女であるパロマさんにとってはわずかな誤差も許されないのでしょう。
「…よし、そこでいいわ。それじゃあステラ。成功するかは分からないけど。何も考えずにただ、星を見ていて。何かが見えたとしても、何かが聞こえたとしても。ただ星を見つめなさい」
「…わかりました」
ちょっと不穏ですね…。星魔法を習得するためには何かと対面する可能性がある、ということですね。パロマさんに言われた通りジッと星を見つめます。何も考えずに…。………意外と難しいですね。頭を空っぽに…。
……………
…………
………
『星を見るのは汝たりや?』
「!」
急に星が近づいて眩しいくらいに光り輝いたかと思えば、白いベールをまとった人型の何かが現れました。金縛りがあったかのように体が動きません。それには構わずにただ、何も考えず星を見つめます。
『星を聞くのは汝たりや?』
『星を知るのは汝たりや?』
『星を取るのは汝たりや?』
問いは続きます。私は人型の傍で瞬く星を見つめます。
『星に学ぶのは汝たりや?』
『星魔法を習得しました』
ーー個人アナウンスが聞こえてきたのと同時に、あの不思議な空間から解放されました。もう光り輝いてもいません。なんだか狐に包まれたかのような感覚です。あれは幻なのかとも思いましたが、アナウンスがそれを否定しています。
「…パロマさん。星魔法を習得できました」
「!本当?!」
「はい。不思議な感じでしたね」
「星魔法を習得する人は、誰しもが通る道よ。…本当に習得できたのね。星の絵でも星魔法が習得できるなんて…!」
おめでとう!っと両手を掴まれてブンブン勢いよく振られました。ありがとうございます~…と情けない声が出てしまいます。ですが本当に星魔法を習得できたのですね。じわじわと喜びがこみ上げてきます。
「前にも行ったと思うけど、星魔法はバフ・デバフが主体よ。攻撃手段もあるにはあるけど、あまり多用すると地形が破壊されるから慎重にね。まぁ詳しいことは自分で調べなさい。…決して私が面倒くさいからそういってるわけではないのよ。ただ説明する量が多すぎるの!」
「何も言ってませんよ」
「そ、そうよね…。それと同じ来訪者に星魔法のことは言ってもいいけど、どうやって習得するのかは言わないこと。無理やり聞き出そうとする奴がいたら私に言いなさい。ぶっ飛ばしてやるわ!」
「あはは…わかりました」
絡まれてもなるべく穏便に済ませましょう。無関係な人にまで被害が及ぶ可能性が出てきますからね。パロマさんが張り切っているのを横目に、私は心の中でそう決意しました。




