クエストと迷子?
アンの街の住人クエストを10個クリアする 0/10
ウォータースライムを50匹討伐する 0/50
依頼者:稲荷・オールド
「これはまた、時間がかかりそうだな…」
「ふむ。これは儂ら2人分のクエストが合わさっておるのか?それとも、1人でこの量をやらなければならないのかのう?」
「ええと、おそらく2人分のクエストが合わさって表示されていると思います。私のパネルに依頼者としてお二人の名前が載っているので」
それを聞くと、稲荷さんはホッと息を吐いていました。さすがにこのクエストを1人でクリアするのは大変ですよね。
「住人クエストはNPCに話しかけ続けないと出てこないね」
「ウォータースライムは水辺におるのう。どれ、儂も頑張るか」
やる気満々ですね。お二人の目に静かだけど熱い炎が灯っています。と、個室のドアがノックされました。コーヒーが届いたみたいです。マスター、ありがとうございます。
稲荷さんはコーヒーを飲んで落ちついたようで、私に声をかけてきました。
「そういえばステラ。水晶の花についてなんだけどさ。情報料は3000Gくらいでどうかな?」
「?!前回よりも高くありませんか?」
前は確か500Gくらいじゃありませんでしたか?どうして値上がりしちゃったんですか!
「前の情報はさ、司書ぐらいにしか必要がなかったから安かったんだよ。でも今回の水晶の花は職業限定ってわけでもないし。あとはプレイヤー全体で情報の価値が上がってさ。売買の値が上がってるから、今回はこの値段だね。ということで、この情報はウチが取り扱っていい?」
「え、えぇ。それは構いませんが…」
「やった。はい、これお金」
3000G貰っちゃいました。思わぬ臨時収入ですね。もう情報についてはそういうものだと思って、割り切りましょう、うん。
「それにしても、司書って少しややこしいな。あれ、でもこの前あった人は普通に情報売りにきてたけど、あれは誓約魔法とやらには引っかからなかったのかな?」
「あ、どうやら職業が一次職の司書は誓約魔法をまだ持っていないみたいです。私がちょっと特殊なだけで…」
「………へ?」
「ブッハハハハハ」
オールドさん、大爆笑です。耳のいいルノーが服の襟から頭を突っ込んで隠れてしまいます。苦しいしくすぐったいですよ、もう。それと稲荷さんの反応から、この情報も重要だったみたいですね。
「詳しく、説明、してね?」
「は、はい!」
笑顔が怖いですよ!少し動揺してしまったのでコーヒーを飲んで落ちつきます。心臓に悪いです。
「その、私の職業が放浪の司書というのですが…これは見習い司書の正統進化ではなくてですね。ほらあの、以前クラージュさんから推薦状をいただいたでしょう?」
「うん。俺もその場にいたからわかるよ」
「それを図書館の受付の方に見せたところ、放浪の司書に進化できるようになりまして…。誓約魔法も職業が進化したときに獲得したんです。そうしたらフルールさんから、一次職の司書は誓約魔法を持っていないと教えていただきましてーー」
説明しているだけなのに、言い訳をしているかのようになってしまいます。でもすべて事実なんですよ!なにせ誓約魔法のおかげで嘘は付けませんからね。
「まぁ今はその魔法のことは置いておけ、稲荷。儂らがやらねばいけないことは他にあるはずじゃぞ」
「んん~…。はっ、そ、そうだ。今はクエストをやらなきゃ…」
稲荷さんはコーヒーを一気飲みすると、フラフラとした足取りで個室を出ていきました。どうやらキャパオーバーしてしまったようです。な、なんだかこちらが申し訳なくなってしまいます。
「なに、気にせんでもよい。あやつもしばらくすれば正気に戻るじゃろうて」
「オールドさん…ありがとうございます」
「んふふ。それでは、儂もクエストをこなしてくるとするか。時間は有限じゃからのう」
ではな、とオールドさんも去っていきます。個室には私とルノーたちが残りました。コーヒーものこりわずかですし、私たちもそろそろお店を出ましょうか。
「せっかく外に出たので、どこか行きたいところはありますか?」
「ホー?」
「シュー!」
ルノーはないみたいですが、フォスは『魚!』と元気よく鳴いています。以前食べた魚の串焼きがよっぽど美味しかったんですね。いいですよ、食べに行きましょうか。屋台が出ているといいですね。
カフェを後にして、屋台が出ている通りを歩いてみます。お店の方が蟻の着ぐるみを着ていたので割と見つけやすいとは思うのですが…。
「うーん、ありませんね…」
「シュー…」
今日はやっていないのでしょうか…。通りは賑わっているのですが、着ぐるみが見つかりません。人も多いので見つけづらいですね。ーーおや、あの子は…。
「ーーこんにちは。何かお困りですか?」
「あ…あの」
路地裏の近くに1人で佇んでいるお嬢さんを見つけました。青いワンピースの裾をきつく握りしめて、今にも泣きそうな表情です。しかも耳が尖っているので、おそらくこの子はエルフ族ですね。周りに大人の影もないので、どうやら1人でここにいるようです。
「わたし…あ…」
「ーー私の名前はステラといいます。頭に乗っているフクロウがルノー、蛇さんがフォスと言います」
「ルノーちゃんとフォスちゃん…」
「怖くないなら触ってみますか?」
「う、うん!」
蛇をみるだけでも無理という方もいらっしゃいますからね。この子は平気そうでよかったです。私の両腕に移動した2匹と仲良く遊んでいます。
「かわいい…!」
「ふふっ、そうでしょう?ところでお嬢さんは誰か大人の方とここに来たのですか?」
「うん。お姉ちゃんと一緒に来たの。なのにわたしがお姉ちゃんの手を離しちゃって…」
耳がシュンと下がってしまいます。エルフ族の耳も感情によって動くのですね。ではなくて…。
「それなら、私がお姉さんを探すお手伝いをしてもよろしいでしょうか?」
「お兄さんが…?」
「はい。お嬢さんを1人にしておけませんし、同じエルフ族として放ってはおけませんからね」
中途半端ですが、ここで一旦切ります。




