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司書さんは無自覚でいいのです!  作者: 黒色猫


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緊急事態

 勢いよくお店に飛び込んできたのは、若い男性でした。服装は乱れ、息も整っていません。かなり急いでここまで来たのでしょう。ーーそれにしても、どこかで見たことがあるような…?


「ア、アランさんはいますか?!」

「あ?冒険者ギルドのやつが何の用だ?」


 !そういえば、ギルド内でお会いしたことがありますね。名前は確か、ヒューゴさんだったはずです。レオンさんと書類の確認をしていた時に、差し入れを持ってきてくださった方です。思わず2人で拝んでしまい、面倒をおかけしましたね。


「じ、実は西の森で冒険者がグロスアサシンウルフを目撃したらしく!討伐はまだ先ですが、アランさんにはポーションの納品をお願いしたくて来ました!」


 な、何やら大変な事態のようです。グロスアサシンウルフ…。資料室の本には載っていない名前ですね。ですがこれだけ慌ただしいという事は、とても危険性が高い魔物ということでしょう。


「話はわかった。とりあえず緊急用にストックしてあったポーションが100ある。今用意するから持ってけ」

「ありがとうございます!あ、ステラさん!」


 はい?急に声をかけられました。正直私にお手伝いできることはないと思って静観していました。今の調合の腕前だとアランさんの邪魔になってしまいますし…。かといって討伐も、実践経験のない私には厳しいですし…。


「ステラさんは冒険者ギルドに来てほしいです!頼みたいことがあって!」

「それは構いませんが…」

「ありがとうございます!それじゃあ一緒に行きましょう!」

「こいつには調合の補助をしてもらおうと思ってたのに…」


 少し苦い顔をしたアランさんが、ポーションを入れた木箱をヒューゴさんに渡します。かなり重そうなのに、2人とも涼しい顔をして持ち上げていますね。すごい筋力です。アランさんに一礼すると「また来い」と言ってくださいました。今度は解毒ポーションを作りましょうね!

 ヒューゴさんは足早にギルドに向かっています。私もその後ろを小走りでついていきます。ルノーは少し不安そうに、私に身体を寄せてきました。


「詳細はミリアさんが説明しますが、グロスアサシンウルフは危険度の高い魔物です。放置しておけばアンの街の住民にまで被害が及ぶかもしれない。迅速かつ適切な対応が求められます」

「はい。承知してます」

「これからまた忙しくなりますね。ほんとやってられない」


 緊張した顔を緩めて、笑いかけてくれました。私もまだ少ししか知りませんが、アンの街が大好きです。できることがあれば全力で取りかからせていただきますよ。

 冒険者ギルドに入ると、どことなく緊迫した雰囲気を漂わせています。ヒューゴさんと別れて、私はミリアさんのもとへ向かいます。彼女も難しい顔をしていて、カウンターの中に招き入れました。


「こんにちはミリアさん」

「ステラさん、こんにちは。早速ですが、やってもらいたい依頼があります」


資料からの情報収集ーギルドが管理している資料から、グロスアサシンウルフに

関する情報を集める

報酬ー30000G


「グロスアサシンウルフがアンの街周辺に現れるのは、約50年ぶりなんです。なのでステラさんには、50年分の資料から、魔物に関する情報がないか探して欲しくて。場合によって追加でさらに50年分お願いするかもしれません」

「大丈夫です。やらせてください」


 文字を読むのは得意なんですと笑うと、ミリアさんもホッと笑みをこぼされました。案内された先はギルドの地下でした。たくさんの資料がファイルで保管されており、終わりが見えないほど奥まで並んでいます。入口の隅には小さなテーブルと椅子が置いてありました。ありがたく使わせていただきます。


「これが今年の分ですね。それから年数通りに並んであります。白紙を用意してあるので、情報があったら記録をお願いします」

「わかりました。あの、今回もルノーを中庭で遊ばせておくことはーー」

「ちょっと待った!」


 できますか?、とミリアさんにお願いしようとした瞬間、地下の扉が勢いよく開かれました。入ってきたのはーー少しくたびれたレオンさん。ズンズンと中に入ってくると、突然私の両手を取って顔を近づけてきました。


「ルノーくんは、俺に任せてくれないかな?」

「レ、レオンさん?色々と大丈夫ですか?」

「全く問題ないよ!俺は今回、グロスアサシンウルフの監視役に選ばれてさ!っていうか立候補してね!ついでにレベル上げでルノーくんを連れて行こうかなと思って!」


 要領を得ない回答でしたが詳しく聞いてみると、どうやらお疲れのレオンさんは勢いそのままにグロスアサシンウルフが街周辺に近づかないかの監視役になったらしく。しかし1人は味気ないと思っていたところ、私がギルドに来ていると風のうわさで聞いたそうです。そしてルノーが暇しているのなら、自分の任務のついでに雑魚狩りを一緒にしてもいいか、というお誘いをするために突撃してきたそうです。真面目に聞いても分かったのは、レオンさんがハイテンションになって暴れているということだけでした。

 本人ーー本フクロウ?は行く気満々ですね。興奮して羽をバタバタさせています。


「ということで、ルノーくんはお借りしてもいい?それとも何か頼んでいることとかある?」

「いえ私がクエストをしている間ルノーは退屈だと思うので、森に連れて行くのは構わないのですが…」

「ほんと?!じゃあ早速行ってくるね!」


 ルノーくん行くよ!、と小さな身体を引っ掴んで去っていきました。思わずミリアさんと顔を見合わせて苦笑がもれます。返答を間違えてしまったでしょうか…。ルノー、どうか無事に帰ってきてください!

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