光と影の円環 ― 最後の継承者 ―
…
欠片の王国に平和が戻ってから数日、リュウたちは次なる試練を迎えていた。
アーク・コードに刻まれた“最後の継承者”の存在。それは、光と影の力を同時に宿す者――世界の均衡を司る存在だった。
丘の上に立つリュウ。空は紅く染まり、遠くには女神樹の影が揺れている。
「……ここから先は、俺一人の力だけじゃない」
ひびきの手がそっとリュウの肩に触れる。
「リュウ、私たちも一緒に行くわ。あなたが守るなら、私も共に」
エリカがうなずき、魔力の光を手に集める。
「欠片の王国が教えてくれたことは、力は一人では不完全だってこと。
私たちは共に戦うべきだわ」
バンも剣を構え、仲間たちの決意に応える。
「……俺もだ。最後まで、誰も見捨てやしねぇ」
森を抜け、荒れ果てた大地を進むと、巨大な空洞が目の前に現れた。
その中央には、黒と白が交錯する光の柱が立ち、淡く人型の影が揺れている。
――最後の継承者、現れる。
「お前が……最後の継承者か」
リュウは言葉をかけるが、影は答えず、ただ無言で光を放つ。
やがて影は形を取り、漆黒と黄金の鎧をまとった少年が姿を現す。
「……私はカイル。世界の光と影、両方を背負う者。
お前たちがアーク・コードを操る者なら、私こそ、調停者だ」
リュウは覚悟を決め、歩み寄る。
「俺は……この世界を守る。仲間を守る。そして、お前とも戦う覚悟はある」
カイルは微笑むようにうなずいた。
「よかろう。しかし、試練を超えねば共に歩むことはできぬ」
その瞬間、光と闇が交錯し、空間が歪み、周囲の大地が波打つ。
欠片の王国から流れ込む力が、二人を中心に渦を巻き、強烈な衝撃波を生む。
「来るぞ、みんな準備!」
ひびきとエリカ、バンも一斉に魔法と剣を展開する。
カイルとリュウがぶつかる瞬間、周囲の空間が光の渦に変わる。
衝撃に耐えながらも、リュウは心の奥で思い出す――
女神樹の光、アルトとの誓い、欠片の王国の仲間たち、ひびきの笑顔。
全ての想いが、アーク・コードの力と共鳴する。
「俺は……守るために戦う!」
リュウの言葉と共に、光が爆発し、カイルの影を包み込む。
その光の中で、カイルは笑った。
「お前の力……認める。だが、これが終わりではない。
光と影の円環は、永遠に続く」
衝撃が収まり、二人は立ち止まる。
互いに息を整え、仲間たちと目を合わせる。
「……お前も、守る側に来るか?」
リュウが問いかける。
カイルはしばらく黙った後、頷いた。
「ええ、共に歩もう。最後まで、世界と共に」
空は晴れ、欠片の王国の光は周囲の大地に広がる。
花が咲き、鳥が舞い、失われた都市の瓦礫にも緑が戻り始めた。
リュウはアーク・コードを抱き、仲間たちと共に歩き出す。
「さあ、これからが本当の旅だ」
ひびきが微笑み、エリカが頷き、バンが後ろで軽く拳を握る。
そして、光と影が交差する空の下――
最後の継承者たちの歩みが、世界を新たな時代へと導き始めた。
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