表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界ガールズパーティー、男は俺だけ?』  作者: マーたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/26

17話 迷宮再構築 ― 女神の遺志 ―

女神の影が消えたその瞬間、封印都市は再び息を吹き返した。

それは終焉ではなく、始まり。

女神の“遺志”が再び迷宮を再構築し、仲間たちに真の試練を与える――

光の柱が消えたあと、都市は静まり返っていた。

 霧は晴れ、石造りの塔はゆっくりと崩れ、青空が覗く。

 風が吹き抜け、焦げた花弁が舞う。

 ――それは、女神の影が残した最後の名残だった。


 「……終わった、のか?」

 カイが呟く。


 「いいえ」

 フローラの声が響く。

 彼女は膝をつき、地面に手を当てた。

 「大地が……まだ、脈を打っています」


 その言葉の直後、地面全体が震えた。

 塔の根元から青白い光が走り、都市全域に広がっていく。

 ミラが剣を抜く。

 「構えろ! 何かが起きる!」


 やがて、崩れた建物の下から――新たな紋章が浮かび上がった。

 それはまるで、街全体が“再び形を変えよう”としているようだった。



 「女神の遺志が……再構築を始めてるのよ」

 セレナが冷静に分析する。

 「封印を解いたことで、迷宮そのものが“生き返った”の」


 ティナが顔を青ざめさせる。

 「ちょ、ちょっと待って! やっと出口見つけたのに、また迷宮に戻るの!?」


 「逃げられないわ」

 ノエルが霧の中を見つめながら言う。

 「これは……“試練の続き”。女神が残した本当の意思よ」



 その時、カイの中に熱が走った。

 胸の奥――リリアから託された“果実の光”が脈動している。

 まるで何かを訴えるように。


 「……リリア?」

 幻聴のように、微かな声が耳をかすめる。


 ――『カイ、女神は滅びていない。

    彼女の意思は、あなたたちの中に宿っている』


 カイは拳を握る。

 「……そうか。これは終わりじゃない。始まりなんだ」



 大地が裂け、地下へと続く巨大な穴が開いた。

 そこから吹き上がる風は、どこか懐かしい――そして、危険な香りを含んでいた。

 ティナが顔をしかめる。

 「うわ……まさか、また“下層迷宮”が出現したの?」


 セレナが頷く。

 「ええ。女神の力が再構築を始めた。つまり、真の迷宮がここから始まるの」


 ミラは無言で剣を構え、ノエルは魔力を練る。

 フローラが静かに祈りの言葉を唱え、ティナは震えながらも短剣を握る。


 ――そして、カイは一歩、闇の中へと足を踏み出した。



 下層に降りると、そこはかつての迷宮とは全く異なる光景だった。

 天井には光の球体が浮かび、壁には動く文様。

 まるで“生きている遺跡”。


 ノエルが息を呑む。

 「……ここは、女神が創った最初の聖域……“原初の迷宮”よ」


 「原初……?」

 「そう。すべての迷宮の根源。

  この場所を制した者が、新しい世界を選ぶ権利を得る」


 ミラが小さく笑う。

 「つまり……また俺たちで奪い合えってことか」

 セレナが横目で見た。

 「そんな言い方しないで。ここでは“心”も試されるの」



 その瞬間、壁の紋章が光り、六人の影がそれぞれ別方向へと引き裂かれた。

 「カイ!!」

 セレナの叫びが遠ざかる。

 ティナの姿も、ノエルの光も、すべてが霧に飲まれた。


 ――分断。


 それぞれが、女神の遺志に導かれた“個の試練”に直面する。

 セレナは「過去への悔い」、ミラは「忠誠と愛の狭間」、

 ティナは「孤独」、ノエルは「失われた記憶」、

 フローラは「神への信仰」、

 そしてカイは――「己の存在そのもの」と対峙する。



 カイは闇の中を歩いた。

 足元に光の花が咲き、声が響く。


 ――『お前はなぜ、生きている?』


 リリアの声、女神の声、そして自分の声が混ざり合う。

 「……俺は、仲間を守るために」

 ――『違う。守りたいのは、“失った過去”ではないか?』


 その言葉に、心臓が痛んだ。

 胸に浮かぶリリアの笑顔。セレナの冷たい瞳。

 ティナの笑い声、フローラの祈り。

 どれも“今”に繋がっている。


 カイは剣を抜き、静かに言った。

 「俺は……この世界のために戦う。

  もう誰も、迷宮の犠牲になんてさせない」


 闇が震え、光に変わる。

 そして――新たな扉が開かれた。

再構築された迷宮は、生きている。

仲間たちは引き離され、それぞれの心の闇と向き合うことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ