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七話:進化の果てに

 草原に降り注ぐ太陽は変わらず燦々と輝き続けている。この世界に来てから、体感的にはさらに百万年が経過。プラズマの高温と即時回復により、木々が生い茂っていた。


時間にして約8億7600万時間。俺はこの途方もない時間の中で、自分自身を鍛え上げ、進化を遂げている。そしてその進化は、零子という存在によってさらに加速した。


 「零子、お前……」


俺の目の前には、以前とはまるで別物の姿になった零子がいた。最初は触手のような形状だった零子は、今ではその身体を自由自在に伸縮させる能力を持つようになっていた。まるで液体のような動きで形状を変え、俺の周囲をくるくると回る。


「本当にすごいな……」


また、零子の伸縮を利用して、敵を追尾するような攻撃を作り出すことに成功したのだ。


「よし、試してみるか」


俺は零子を腕に取り付け、骨と肉で固定する。零子が伸縮しながらターゲットとなる木々を追尾し、その動きを完全に捉える。そして――。


パッとその場を見たがもういない。零子は一km先に到達していた。

威力はプラズマには及ばないものの、追尾による安定性が増す。


「零子はやッ。そうだな、ならこれで競争しよう!」


俺は零子と鬼ごっこを楽しむようになった。光速に近い速度で駆け抜ける俺と、それを追いかける零子。――そのおにごっこは、唯一の娯楽となっていた。



***



 「息をするのも面倒になってきた……」


百万年もの時間を過ごす中で、息をするという行為が煩わしく感じられるようになり、俺は皮膚呼吸を行える体に変化させた。


皮膚に分子単位の細かい穴を造り、そこから酸素を取り込む仕組みだ。この改造によって、俺は呼吸の必要性から解放され、さらに効率的に動けるようになった。


「これで無駄な動作は省ける」


皮膚呼吸による進化は、体全体の軽快さを高めるだけでなく、戦闘時にも有効だった。零子とのじゃれ合い――いや、実質的には戦闘――の際にも、この進化が役立った。



***



 「零子、お前の接近戦にはこう対処する!」


零子との戦闘中、俺は彼女の高速接近攻撃に対応するため、新たな防御技術を編み出した。それは光速に近い運動で体を揺らし、空気による壁を形成するというものだ。


「ふっ!」


俺が瞬時に体を振動させると、周囲に空気の壁が現れ、零子の触手攻撃を防ぐ。その壁はまるで透明な盾のように機能し、零子の攻撃を弾き返す。


「これでどうだ!」


俺は零子との戦闘を楽しみながら、その技術をさらに磨き上げていった。


 「さあ、黒豹形態だ……」


物体変化の技術も完全に習得した俺は、特に黒豹への変化が得意だった。その俊敏さと力強さを活かし、「黒豹空気路(くろひょうくうきろ)」という技術を完成させた。


黒豹形態に変化し、空気による新しい物体――空気足場を作り出すことで、自由自在に空中を駆け巡ることができる技術だ。


「それは、音を置き去りにする……」


黒豹形態で駆け抜ける俺は、その速度によって音すら追いつけない。まるで次元そのものを超越したかのような感覚で草原を駆け巡る。


「これならどこへでも行けそうだな」


その技術によって、俺はこの孤独な世界でも新たな楽しみを見つけ出していた。



***



 ――そして、一億年が経過した。


荒れ地に降り注ぐ太陽は変わらず燦々と輝き続けている。しかし、その地面にはもう草原など存在しない。俺が生み出した技術によって、大地そのものが崩壊していた。


なぜなら--


俺は頭上で手を叩き、一瞬で空気を圧縮する。その圧縮された空気が解放される瞬間――。


バドンッ!!

 

直径500mの大地が完全崩壊。


一億年という途方もない時間を経て、俺は進化の果てに到達した。


「さて、残りの四億年。何をしようか」

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