四話:4億9999万9850年
草原に降り注ぐ太陽は変わらず燦々と輝き続けている。俺がこの世界に来てから、体感的には約二十年が経過していた。時間にして約17万時間。この途方もない時間の中で俺は自分自身を鍛え続け、孤独な世界に意味を見出す努力を続けてきた。
また三十年が経過した頃には、俺の舞はさらに進化を遂げていた。ただの技術の連続ではなく、一連の流れとして美しくつながるようになった。現在では最大で17種類もの動きを組み合わせた舞を完成させている。
例えば、ロンダートからバク転、そして後方伸身宙返り二回半ひねり。その後、前方宙返りを挟みつつ側宙へと移行し、最後に華麗なスピンキックで締めくくる。この一連の動きは、自分自身の限界を超える挑戦でもあり、孤独な世界における唯一の芸術的だった。
「まだまだだ……もっと上手く舞えるようになろう」
俺はそう呟きながら、新しい動きを取り入れるべく試行錯誤を繰り返した。時には失敗し、地面に転ぶこともあった。
……舞の練習に没頭することで、時間の流れを忘れるほど集中できるようになった気がする。孤独感は完全には消えないけど、心の中には少しずつ満足感と達成感が芽生えてきた。
***
さらに100年が経過した――。
俺の身体能力はもはや人間を超えていた。筋力、柔軟性、反射神経、そして動きの滑らかさ。そのすべてがかつての100年前とは比べ物にならないほど向上している。
舞もさらに進化を遂げていた。17種類の動きを組み合わせた流れは完全に体に染み込み、意識せずとも自然に動作がつながるようになった。まるで空気と一体化したかのような感覚で舞うことができる。
その頃になると、俺は新たな挑戦を始めていた。それは「速度」の限界に挑むこと。
「もっと速く……もっと鋭く……」
最初はただ速さを追求するだけだった。
「空気が、揺れてる……?」
次第に空気が俺の動きによって揺れる感覚を覚え始めた。
そしてある日――。
「ふぅ……っ!」
全力のスピンキックを放った瞬間、周囲に爆発音が響いた。それはまるで雷鳴のような轟音。空気が圧縮され、一瞬の爆発的な衝撃波となって広がったのだ。
「これは……」
驚きと興奮が胸を満たす。俺は再びスピンキックを放ち、その結果を確認する。そして確信した。この世界で俺は新たな力――ソニックブームを生み出すまでに至った。
「これが……俺の進化! この孤独な世界で過ごした100年という時間は、決して無駄ではなかったんだ!」
「だけどまだ終わっていない……俺はさらに進化してみせる」
草原に響く轟音と共に、深みを増していく。この五億年という途方もない時間の中で、俺は自分自身との戦いを続けながら、まだまだ新たな力と可能性を追求する旅を続けていく――。
***
草原に降り注ぐ太陽は変わらず燦々と輝き続けている。この世界に来てから、体感的にはさらに十年が経過した。俺の身体能力はますます進化を遂げ、スピンキックによる衝撃波――ソニックブームの技術も磨き上げられていた。
しかし、ただ威力を追求するだけでは満足できなくなっていた。俺は次なる目標として、「衝撃波の形状」と「色」にこだわり始めたのだ。
「どうせなら、もっと美しい形の衝撃波を作りたいよな……」
最初は単なる円形の衝撃波だったが、次第にその形を変えることに挑戦し始めた。例えば、花びらのような形状や、鋭い矢印のような形を意識して放つ。
「おお……これは綺麗!」
俺は歓喜しながら、その形状をさらに洗練させていった。衝撃波が広がる際のエフェクトも、ただの透明な波動ではなく、鮮やかな色彩を帯びるようになっていた。青や赤、さらには輝きまで再現できるようになり、この草原での孤独な時間に少しだけ彩りが加わった気がした。
「これで俺の舞もさらに美しくなる!」
絵画を描くような美術的感覚で、自分の技術を磨き上げていく。孤独な世界ではあるが、この創造的な活動が俺の心を救ってくれていた。
***
さらに数年が経過した頃、俺は新たな能力に気づき始めた。それは「骨格変化」という技術。
最初は何気なく指を動かしている時だった。
「ん? なんだこの感覚……」
指先に集中すると、骨の構造が微妙に変化する感覚があった。試しに指を伸ばそうと意識すると、指が少しだけ長くなる。そして元に戻そうとすると――。
「あれ……戻すの、ちょっと難しいぞ?」
骨格変化はどうやら意識的に操作できるものの、元に戻すには細かい調整が必要らしい。
「これ……難しいけど、ちょっとクセになるな」
俺は笑いながら、自分の腕を伸ばしたり縮めたりして遊んでいた。この力はまだ未熟で完全に制御できるわけではないが、それでも新しい可能性を感じさせてくれるものだった。
さらにこの能力を応用して、舞の動きにも取り入れることを考え始めた。例えば、腕を一瞬だけ長くして回転速度を上げたり、足の骨格を変えてジャンプ力を向上させたり――その可能性は無限大だ。
「まあ、戻すのが大変だから慎重にやらないと……」
俺は自分自身にそう言い聞かせながら、新しい技術の開発に取り組んでいた。この異世界で過ごす五億年という途方もない時間の中で、俺は自分自身を極限まで鍛え上げ、進化させていく。
また数年後、俺は衝撃波と骨格変化を組み合わせた新たな技術にも挑戦していた。
「例えば……骨格を変えて衝撃波を放つとどうなるんだ?」
俺は試しに足をわずかに伸ばしながらスピンキックを放ってみた。その結果――。
「おおっ!?」
衝撃波の形状がさらに鋭くなった。これはまさに新たな可能性への扉だった。俺はその技術をさらに磨き上げるべく試行錯誤を繰り返した。
「まだまだ進化できる……この五億年という時間は、俺にとって最大の挑戦だ!」
孤独な世界ではあるが、その中で俺自身との戦いは続いている。新たな能力、新たな技術――そのすべてが俺自身を成長させるための糧となっている。
そして俺は再び拳を握り締め、あと4億9999万9850年、修行することに期待する。
お疲れ様でした!
修行編の中間地点終わりです。ですがここからも、もっと彼の進化が見れます!
今後とも彼の進化と物語にご期待願いたいです。作者より