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二話:絶対的レベルアップ

 俺はただひたすら走り続けていた。この草原では疲労を感じることがない。息切れすることもなく、脚が重くなることもない。ただ風が頬を撫で、足元で草が揺れる感覚だけが続いている。


「これは、疲労感がすぐに回復しているのか……」

 走りながら、ふとそんな考えが頭をよぎる。


「ならよし……やれることをやってみるか」


俺は立ち止まり、深呼吸をした。


まずは腕立て伏せから始めてみる。地面に手をつき、ゆっくりと体を上下させる。最初は軽い負荷に感じたが、回数を重ねるにつれて腕に微かな疲労感が生じる。しかし、その疲労感は次の瞬間には消え去り、再び全力で動ける状態に戻っている。


「なるほど、やっぱりすぐに回復しているんだな」


俺はその特性を活かして、腕立て伏せだけでなく腹筋やスクワット、さらにはジャンプを組み合わせたトレーニングメニューを考案した。道具は何もないが、自分の体ひとつでできることは意外と多い。これなら、この途方もない時間を少しでも有意義に使えるかもしれない。


トレーニングに集中していると、時間の流れを忘れるほど没頭していた。何時間経ったのかまったく分からない。ただひたすら体を動かし続けた結果、心の中に少しずつ満足感が芽生えてくる。


「これは案外悪くないな」


俺はそう思いながら、トレーニングを続けた。感覚的には一年ほど経過しただろうか。

その間に俺の筋肉量は明らかに増加し、身長も伸びているようだった。この世界では食事も睡眠も必要ないが、それでも身体は成長している。


トレーニング中、俺の頭の中では「好きな能力」について考える時間も増えていた。


あのボタンには「押せば好きな能力を得る」と書かれていたが、その具体的な内容は明示されていなかった。望む能力……


「瞬間移動……いや、それよりももっと万能な能力がいいかもしれない。例えば、全知全能とか?」


そんな漠然とした考えが浮かぶ一方で、俺は自分自身に問いかけていた。本当にそんな能力が必要なのだろうか。この五億年という時間の中で俺が得るべきものは、ただ万能な力ではなく、自分自身を鍛え上げる過程なのではないかという思いが芽生え始めていた。


そうこうしているうちに、体感的にはさらに2~3年が経過していた。その頃には片手で腕立て伏せを行えるようになり、両腕だけで地面を歩くという技術まで習得していた。これまでの鍛錬によって身体能力は飛躍的に向上しており、自分でも驚くほどの力を手に入れている。


「まだまだだな……」


俺はそう呟きながら再び地面に手をつき、腕立て伏せを始めた。この五億年という膨大な時間に比べれば、数年程度の鍛錬など取るに足らない。しかし確かな手応えと成果がある以上、この道を進むしかない。


ゲーム感覚で俺は走り続ける。鍛え続ける。そしてこの異世界で、自分自身を極限までレベルアップする旅を続けていく。

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