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第十八章・狂気という名の凶器、凶器という名の狂気

この物語には新選組等歴史的人物の子孫が登場いたしますが、フィクションですので実際の人物や団体等とは全く関係ありません。

また、未来がこのような形になっていたりするのはあくまでも“空想”ですので、ご了承ください。

俺、秋の紅葉って好きだよ?

特に赤く染まったモミジとか、綺麗だと思うんだよねぇ。

え?なんで、って――――そんなの、決まってるじゃん。



―――――血の色にそっくりだろう?



人は時に“狂気”をはらんで生まれてくる。

その“狂気”がいつの日か、己をも食らい尽くしてしまう“凶器”になるとは考えずに。

そして、“狂気”に食らい尽くされた人間は、剥きだしの“凶器”を隠しながら、“狂気”を振るうのだ。



「この辺りですね、妖力反応があったのは。」

忠士ただしがそう言いながら、辺りを見渡した。

山は秋の紅葉と夕陽のせいで、くれないに染まっている。

「武田君、何か見つかりましたか?」

忠士は振り向いて、共に来ている柳助りゅうすけを見た。

「んー?あぁ、こんなもの落ちてたよ。」

「え?」

柳助が見せたのは、小さな紙切れ。

短冊のように切られた紙には、わけの分からない墨字が書かれている。

「式神“幻行灯まぼろしあんどん”」

柳助が小さく呟くと、紙切れはたちまち行灯に変わり、オレンジ色の炎をともした。

「武田君?何を――――」

鋭い瞳で忠士が柳助を睨むと、柳助はニヤリ、と不敵な笑みを浮かべた。

「よくできているでしょ、この行灯。対象者に幻覚を見せて惑わす式神。元々は対妖怪用なんだけどね。」

ぐにゃり、と、忠士の視界が歪んだ。

思わず顔をしかめる忠士に、柳助はゆっくりと言葉を紡ぎ出す。

「もう一つ、ちょっと便利な能力を持っていてさ。一度相対した妖怪の妖力を、吸い取って蓄積することができるんだ。」

「何……だと…!?」

忠士の視界に映るのは、赤、紅、あか

夕焼けの赤、紅葉のあか、柳助の髪眼はつがんの朱。

「俺、紅葉も夕焼けも、自分の髪と目も好きだよ。」

恍惚とした声が、忠士の耳に届く。

「だって、血の色みたいだろ?」

その言葉を聞いた瞬間、忠士の意識は深い闇に沈んだ。



「ごめんね、忠士。」

少しも謝罪の気持ちがこもっていない声が、忠士の頭上に降りかかる。

「君の能力、ちょっと面倒だから。ある程度の未来を予測できるって、反則だと思うんだよね。」

その言葉に、返事をする人間はいない。

「しばらく君は用無しってことで。存分に利用させてもらうからね。」

柳助は懐から、先ほどの行灯と似ている紙を取り出すと、そこから一頭立ての馬車を出した。

その馬車に忠士を乗せると、柳助は紙に走り書きを施して地面に置いた。

馬車から黒いマントを出すと、それをはおって御者台に座り、馬を出した。

「楽しみだなぁ、楽しみだなぁ!」

赤い夕焼けに照らされた紅い森を、朱い髪と瞳の青年が馬車を走らせていく。

「もうすぐ俺の望みが、達成されるんだ!」

それはまるで、赤い血を好む死神の如く。

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