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第十四章・花天月地

この物語には新選組等歴史的人物の子孫が登場いたしますが、フィクションですので実際の人物や団体等とは全く関係ありません。

また、未来がこのような形になっていたりするのはあくまでも“空想”ですので、ご了承ください。

「あの妖狐ようこは“六尾の廉丞れんじょう”――――姫依羅きよら様と皇帝陛下の弟君に当たる、黒毛九尾の宵影しょうえい様に仕える妖狐です。」

「妖狐族の皇帝は三姉弟なのか?」

歳信としのぶが、上座からけいに向かってそう尋ねた。

「えぇ。長女の姫依羅様、次男の皇帝陛下、そして三男の宵影様。元々は、長子である姫依羅様が帝位を継ぎ、女帝として狐里こざとを治めていくはずだったのですが、姫依羅様が継承権を弟君である現皇帝陛下へと渡し、晴翔せいしょう様とご結婚なされたのです。」

薊がそう答えると、歳信は少し黙りこみ、

「妖怪と人間が交わるのは、お前ら妖怪にとってそんなに良いことじゃねぇだろ?止めた奴はいないのか?」

「いましたとも。姫依羅様に仕える妖狐―――特に雄の、大臣の位を持つ方々は口々に『おやめください』と言いました。しかし、前皇帝陛下 ―――つまりは姫依羅様の父君、そして母君もお許しになり、更には現皇帝陛下、そして姫依羅様に仕える女官達も、姫依羅様が嫁ぐのに賛成しておりました。」

「それは―――相手が、依巫よりましだからか?」

歳信の質問に、薊は目を閉じて口を開く。

「それで賛同した者も、中にはいたでしょうな。本来交わることのない妖力と霊力を持つ子供は、強力な力を得るという言い伝えもあります。だが――――少なくとも、父君と母君、そして現皇帝陛下と女官達は違いました。」

「違った?」

歳信が訝しげに尋ねると、薊は顔を上げた。

「父君と母君、そして現皇帝陛下は、姫依羅様と晴翔様がご結婚なさることで、人間と妖怪の共存社会への架け橋が作れないかと、そう考えておられました。それに加え、何年も妖狐同士の濃い血を混ぜていれば、いつか妖怪世界や人間界を乗っ取ろうとする輩も出てくるはず。血を混ぜることで、少しでもそれを押さえることができればいいとも、仰っていました。」

「女官達は?」

「彼女達は、女同士であると同時に、姫依羅様の最も傍に仕える者達です。姫依羅様が、いかに晴翔様を想っていたか―――また、晴翔様が、いかに姫依羅様を想っていたか、知っていたからでしょう。」

「なるほどな。」

歳信はそう言うと、小さくため息をついた。

その時、静かに襖が開き、かおるが姿を現した。

「副長、言われたとおり、鬼切おにきりを狐神の部屋に置いておきました。」

「おう、御苦労。」

郁は小さく頭を下げると、襖を閉めて自分の席へと戻った。

「――――姫様が回復なさったら、我々が姫様を引きとります。」

薊の言葉に、歳信は眼光を鋭くした。

「どういう意味だ?」

「これより先は、我ら妖怪の問題。これ以上あなた方を巻き込むわけにはいきませぬ。これからは、我らお供と、晴翔様がご用意なされた守護で、姫様をお守りします。」




「――――――ん」

狐依こよりが目を覚ますと、そこは屯所の自室。

「――――そうだ、私………っ!」

狐依は勢いよく体を起こすと、辺りを見回した。

部屋には誰もおらず、障子も閉まっていた。部屋の中は仄かな行灯あんどんの光のみで照らされており、布団の横には小さな紙が置いてあった。

「これは……?」

開いてみると、それは美咲みさきからの手紙だった。

『晴翔様のところへ行ってきます。ちょっと待っていてくださいです。』

文面までもあの不思議な書体には少し驚いたが、どうやら美咲は出かけているようだ。

「――――――よう、かい……」

狐依は誰にともなくそう呟き、自分の掌を見つめた。

あの不思議な治癒能力も、きっと自分の妖怪の力のせいだと考え、目尻に涙を浮かべながら手を下した。

「これ以上、私はここにいてはいけない…。」

長い沈黙の後、狐依はそう言って体を起こした。

そして、床の間に置かれた刀に気付く。

妖刀“鬼切”。

父が、護身用にと持たせてくれた刀だ。

狐依はそれを手に取ると、胸に抱きしめた。

次の瞬間、狐依は眩い光に包まれ、九本の尾を持つ狐へと変化していた。

体毛は髪と同じ、限りなく薄い白桜はくおう色。瞳は澄んだ泉のような青碧あおみどり

口に刀の紐を咥えて、狐依は器用に障子を開けた。

庭から見える月を見上げて、それから屯所をグルリと見渡した。

夜の遅い時間らしく、人影は見当たらない。

狐依は意を決して、屯所から去った。

獣の足音を響かせて――――白い光に包まれながら、行くあてもなく走っていった。

これ以上、神選組が倒すべき悪である妖怪じぶんが、屯所にいてはいけない。

妖怪じぶんが神選組にいたら、きっと彼らに迷惑がかかる。

役に立ちたいならば離れろ、と、後戻りしたくなる身体からだを叱咤しながら、狐依の姿は帝都の宵闇へと消えていった。




(狐神は、そろそろ目を覚ましただろうか……?)

そんなことを考えながら、郁は屯所の廊下を歩いていた。

時刻は午後の十時をとうに回っており、辺りは静寂に満ちている。

(美咲という猫又ねこまたは、晴翔という男の元へ報告に行っているし、薊というオサキ狐は副長達と会談中。――――そういえば、あの烏天狗の黒苑くおんという奴は、一体どこに…?)

顎に手を当てて、表情を変えずに考え込んでいた郁だったが、ふと、空気の流れが揺らいだのを感じ、顔を上げた。

少し向こうに見える庭を、白い光が走っていく。

(妖怪―――――?)

郁は表情を硬くして、左手を柄へ添えたが、白い光は真っ直ぐ玄関へと駆けて行った。

郁が足音を消して後を追っていくと、白い光がちょうど玄関から出て、帝都の街を去っていくところだった。

その姿は、九本の尾を持つ、白桜色の狐。

「狐神―――――――?」

思わず口をついて出た言葉は、夜の闇に消え去った。

(狐の姿も、なかなかに美しいのだな)

あまりに突然な出来事に、郁は少々的外れなことを考えて、首を振った。

(い、いかん。何を考えているんだ、俺は……)

自問自答をしてから、郁は去っていく狐を見つめて、躊躇わずに屯所を駆けだした。

「こんな夜更けに―――それも、狐の姿でどこへ行く気だ…?」

(そもそも、どうして狐の姿に?というか、あれは本当に狐神か?なんとなく言ってみただけゆえに、少し自信がない)

そんなことを延々と考えながら、郁は狐の後を、誘われるように追いかける。

しばらく行ったところで、郁は広い通りに出た。

昼間は繁華街として賑わう場所だが、店の店主達はたいていの場合郊外の家に帰るため、夜は不気味なほどの静けさが漂う通り。

通りを駆け抜けて行く狐の姿を見つけ、そちらに体を捻ると――――

夜の闇に、それよりも濃い漆黒が現れた。

「――――あんたは…」

「ここで何をしているんです?」

宵闇よりも濃い黒の翼を持つ、烏天狗からすてんぐの黒苑。

いつの間にか郁と狐の間に立っていた彼は、その手に刀を持っていた。

「俺は―――狐神を追ってきただけだ。」

まだ直感でしかなかったが、どうしてかあの狐が狐依だと思えて仕方がない。

郁がそう言うと、黒苑は少し目を開き、感心した声で答えた。

「あれが狐依様だと、分かるんですか。」

「やはり、あれは狐神か。」

去っていく後ろ姿を、黒苑の肩越しに見やり、郁は黒苑に視線を戻した。

「ならば問題ない。どいてくれ。狐神を連れ戻さねばならない。」

「もう、あなたが狐依様を守ることはないのですよ。」

その言葉に、郁は眼光を鋭くし、眉根を歪めた。

「何?」

「ですから、もうあなた方は狐依様を守らなくても良いと、そう言っているのです。あとは我々が引き受けます。部外者のあなた達を、これ以上巻きこむのは、狐依様も姫依羅様も晴翔様も望んでいない。」

「その件については、副長と薊というオサキ狐の間で、決着がついたはずだが?」

郁がそう言うと、黒苑は口をつぐんだ。


一時間ほど前――――狐依が倒れ、彼女を運んだ郁が広間に戻ると、オサキ狐の薊が狐依を狙っていた妖狐について話をした。

そして、これからは自分達が狐依を守ると、そう言ったのだ。

『これより先は、我ら妖怪の問題。これ以上あなた方を巻き込むわけにはいきませぬ。これからは、我らお供と、晴翔様がご用意なされた守護で、姫様をお守りします。』

薊がそう言うと、周りの幹部達が厳しい顔で身を乗り出した。

『おい、俺達に手を引けって言うのか?』

『ふざけんじゃねぇよ、今まで狐依ちゃん見つけられなかったのはそっちじゃねぇか。』

『俺達は巻き込まれたんじゃなくて、自分達から巻き込まれてるんだ!今更やめられねぇよ!』

『身勝手にも程があるんじゃない?』

幹部達が口々にそう言いだすと、凛とした声が広間に響いた。

『やめねぇか!』

一瞬、目に見えない電撃波のようなものが、空気を駆け巡ったような感覚を覚え、広間にいた全員が、上座に座る“鬼”を見た。

帝狼ていろう”と呼ばれる神選組の中で、最も恐ろしいと言われる男――――鬼の副長・土方歳信。

『――――オサキ狐、お前らの言い分はよく分かったぜ。』

沈黙を破り、歳信がそう言う。

『だがな、お前ら妖怪の問題は、その妖怪を取り締まる俺達にも関係があんだよ。―――だいたい、半分以上首突っ込んどいて、「巻き込みたくない」なんて言われる義理はねぇよ。それに、お前らの事情なんて知ったことじゃねぇし、こっちにも色々と理由はあるんだ。』

歳信はそこまで言うと、言葉を切り、ゆっくりと幹部達の顔を見渡した。

『俺達が、俺達の意思で狐依を守りたいと思っているんだ。それに、狐里も危ないなら、人間界こっちだって十分危ねぇだろ?ここなら何かと情報が入りやすいし、守りやすい。こんな上等な砦、他にはないと俺は思ってるが?』

ニヤリ、と不敵に笑う歳信に、オサキ狐は難しい顔で黙りこむ。

『何があっても、俺達は、自分達が決めたことは曲げねぇぞ。』

ビシリ、と雷のように言葉を刺され、オサキ狐は唸った。

認めざるを得ない、というように。

『――――――好きにしてください。』

オサキ狐は最後にそれだけ絞り出した。


黒苑はしばらく黙っていたが、キッと目を鋭くして、

「だが、狐依様は自分から屯所を出た。」

と言い放った。その言葉に、今度は郁が言葉を詰まらせる。

「あなたに――――狐依様を追う資格はない。」

黒苑はそう言って、刀を構えた。

漆塗りなのか、闇に溶けるような漆黒の刃が、月光に鈍く輝いた。

「でも――――どうしても、狐依様を追いたいというならば、俺を倒して行ってください。」

郁はしばらくその漆黒の刃を見つめていたが――――やがて、深くため息をついた。

「それしか道が無いのなら――――」

そして、郁はスラリと右腰の刀を抜く。

月光を浴びて白銀しろがねに光る刃が、真っ直ぐに黒苑へと向けられた。

「俺は、あんたを斬る。」

月光の下で、漆黒の刃と白銀の刃が交差する。

甲高い金属音が何度も何度も響き渡り、ガキィッと一際高い音で、二人は鍔迫り合いになった。

「――――どうして」

「?」

黒苑が小さく呟き、その鳥のような瞳を郁の青い目に向けた。

「どうして、あなたは、狐依様を守ろうとするのですか?」

ギギ、と鈍い音がして、鍔迫り合いが一層激しくなる。

「どうして――――倒すべき妖怪の血を引く狐依様を、そこまで守ろうとするのですか?」

「妖怪など、関係ない。」

ガキイィッンッッッ

金属の擦れる音がして、二人は間合いをとった。

「俺達は妖怪が全て悪だとは思っていない。浄魂じょうこんすべき対象は“荒魂あらみたま”の妖怪のみ。和魂にぎみたまの妖怪は、むしろ共存を図れる寛容な者達だと思っている。」

隙のない雰囲気を醸し出しながらも、郁は言葉を続ける。

「そして――――俺は、狐神に二度も助けられた。まだ共に暮らして間もない俺を、狐神は庇ってくれた。俺の過去を聞いて、狐神は教えてくれた。『本当の強さ』とは、何なのかを。」

青い瞳に、静かな決意が浮かび上がる。

それは、真っ直ぐに――――黒苑の背後の、すっかり姿が見えなくなった狐依へと向けられた。

「決めたのだ。守るべき者、守りたい者を守ろうと。俺が今、守るべき者は―――守りたいと思うのは、狐神だ。」

凛とした声が、黒苑の声に響く。

黒苑はそれを聞くと、口元に薄らと笑みを浮かべた。満足気な、柔らかい笑みを。

白銀の刃が、黒苑に迫る。

バサリ、と翼が風を起こして、黒苑は空へと舞い上がった。

「――――狐依様は、ここより少し行った川沿いの桜並木にいる。」

空中より告げられた言葉に、郁は静かに頷いた。

「任せましたよ。我らが白桜の君―――狐依様を、その命をかけたとしても、守ってください。俺も、ずっとそうしてきた。この誇り高き役目を、今日からあなたに譲ることにします。」

黒苑はそう言うと、胸にしていた鎖を取り、郁へ投げた。

郁がそれを受け取って見ると、薄桃色の桜花弁に、二本の刃が守るように交差しているペンダントだった。

郁が顔を上げると、もう宵闇の中に黒苑はいなかった。

郁は一度頭を下げると、黒苑から譲り受けたペンダントを胸にかけ、刀を鞘に納めてから駆けだした。

守ると決めた、少女の後を追って。




辿りついたのは、郁と一番初めに出会った、始まりの桜並木。

とはいっても、とうに桜は緑の葉だけになっていたが。

狐依は一本の木に寄りかかると、人の姿へ戻った。

じっと空を見上げていると、いつの間にかひらひらと、小さな花弁が舞ってきた。

手に取ると、それは薄紅色の花弁。

「…………さく…ら………?」

狐依が辺りを見渡すと、緑色の葉だけだった桜の木が、一斉に薄桃色の花を咲かせていた。

夏風に舞い散る、桜の狂い咲き。

季節外れの狂乱に、しばし呆けた顔で固まっていた狐依は、やがてゆっくりと笑顔を浮かべた。

「私を―――――看取ってくれるの?」

狐依が小さく呟くと、風に揺られて桜の枝が鳴った。

「――――――――ありがとう。」

狐依は穏やかに微笑んでそう言うと、鬼切の刀を鞘から払った。

そして、自分の喉元へ突きつけるように柄を持つ。

鈍く光った刃を見ても、狐依はなぜか恐怖を感じなかった。

いや、恐怖を感じなかったといっては嘘になる。

狐依は恐怖を感じてはいたが――――それは、正確には自害することへの恐怖ではない。

あの優しい神選組と別れることに恐怖していたのだ。

(けれど、これ以上彼らを巻き込んでしまったら、もっと別のものに恐怖することになる)

一時期とはいえ、記憶を失っていた狐依は、失うのが怖かった。

大切なものを、思い出を―――。

(――――――今まで、ありがとうございました。短い間だったけど…、たくさんの思い出をもらったから、私はもう大丈夫です)

狐依は心中でそう呟き、目を閉じる。

目尻に浮かんだ涙が、頬を伝って零れ落ちた。

「―――――――――――――――――――さようなら。」

震える声でそう言って、狐依は腕を動かした。




しかし、強い力に遮られ、狐依は腕を動かすことができなくなった。

目を開けると、銀色の刃を伝って、赤黒い物が滴ってきた。

「え―――――?」

呆けた声を出して上を見上げると、そこには、出会った時のような、冷気のようなものを纏った郁がいた。

左手で鬼切の刃を掴み、青い瞳で狐依を見据えている。

郁は力の緩んだ狐依の手から鬼切を抜くと、地面に置いて左手を押さえた。

「――――あっ、斎藤さん、手が…っ!」

ハッとして、狐依は郁の手を包み込む。

滴り落ちる鮮血が、温かな白い光によって、しばらくしてから止まった。

「よかっ……た…」

ホッと胸を撫で下ろし、狐依は郁の瞳を見据える。

「どうして、こんなこと……っ」

言いたいことはたくさんあった。

しかし、心を何かに縛られたような感覚を覚えた。

苦しい胸を上から押さえつけながら、涙声で繰り返す。

「どう…して……っ」

すると、郁は小さく口を開いた。

「一つだけ、言いたいことがある。」

狐依が顔を上げると、次の瞬間、彼女は温もりの中にいた。

郁に抱きしめられているのだと気付いたのは、随分後になってからだった。

「―――――お前は今、自分を殺そうとしていた。」

郁の声が、すぐ耳元から聞こえる。

怒っているような、悲しんでいるような、喜んでいるような、少し掠れた、曖昧な声。

「それはつまり、自分という存在を否定したということ。即ち、お前を想う者全てを否定したということだ。」

淡々と紡がれる言葉を、狐依は何も言えずにただ聞いている。

「もう二度と、自分を否定することは許さぬ。」

強い口調でそう言われ、狐依は力なく頷く。

すると、狐依の背に回された郁の腕が、力強くなった。

温かな温もりに、狐依は無意識のうちに涙を流し、自分よりも大きな身体に縋って泣いた。

しばらくして、郁はゆっくりと離れると、狐依の手を掴んで立ち上がらせた。

「―――――帰るぞ。」

それだけを言い、郁は狐依の手を引っ張って、狂い咲きの中を歩いて行く。

その、不器用で優しい手の感覚に、狐依は静かに泣きながら、足を進めた。

掴まれた手を小さく握り返すと、一層強く握り返された。

柔らかい笑顔を浮かべて、狐依は大きな背中を見つめる。

彼の纏う冷気は、全てを凍り漬けにしてしまいそうだけど、でも、その手はとても温かい。

そして――――その冷たい冷気でさえも、心地いいと思えてしまった。

狂い咲きの桜は、薄桃色の花びらを絶え間なく散らせて、狐依と郁に降り注いでいる。

狐依を看取るために咲いた桜ではなく、狐依と郁を導くための狂い咲き。

花天月地…花は空に咲き満ち、月は地上に照り渡る。花咲く春の月夜の風景。

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