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第十三章・“狐神狐依”

この物語には新選組等歴史的人物の子孫が登場いたしますが、フィクションですので実際の人物や団体等とは全く関係ありません。

また、未来がこのような形になっていたりするのはあくまでも“空想”ですので、ご了承ください。

「いやぁ、知りませんでした。知りませんでしたぞ、姫様。」

狐依こよりの横に座って、狐依を見上げるけいが、そう言って何度も頷く。

「姫様は、あのような者がたいぷだったなんて。」

「ち、違います………!」

その言葉を聞いて、狐依が悲鳴に近い声を上げ、頬をほんのり染める。

「隠さなくてもいいですよぅ。あぁ、でも、晴翔せいしょう様は悲しみますでしょうか?」

「……………」

薊に続き、美咲みさきは上を向いて考え込み、黒苑くおんは不機嫌そうに黙りこんでいる。

「ほんと、郁君には参ったよ。まさか、こんなに手が早いなんてさ。」

「静司、それはどういう意味だ?」

対して、かおるの周りには数人の幹部達が、彼をひやかしている。

「斎藤は、ああいうのが好みだったんだなぁ。」

「隅におけねぇヤツだなぁ。」

「………なんか、すっきりしないなぁ。」

そんな二つの集団を見ながら、上座に座る歳信としのぶは小さくため息をついた。

「おい、この会議はそんなことを話し合うために開いてんのか?」

呆れた口調で言われ、全員が上座を向いた。

そして、勇輝ゆうきがコホン、と咳払いをする。

「えー、では、薊という妖狐ようこ殿。我々に話とは、一体?」

律義に“殿”つけて薊を呼ぶと、薊は上座を見ながら口を開いた。

「うむ。―――――まずは、我らが白桜はくおうの君、狐依様を守っていただいていたこと、心よりお礼申し上げる。」

そう言って、薊は小さく頭を下げた。

「本来ならば、我らがお守りしなければならなかったのだが――――こちらについた時の衝撃で、離れ離れになってしまったのだ。」

「お前らの話を鵜呑みにするってことは―――狐依が、妖怪だっていうことだぞ。」

「!」

その言葉に、狐依はハッと顔を上げる。

薊は歳信をじっと見つめ、そして自分に視線を向ける幹部全員を見渡してから、狐依を見上げた。

「姫様、よろしいですかな?」

「え?」

「姫様の正体を、明かしても大丈夫ですか?」

その言葉に、狐依は顔を伏せて、歳信に目を向けた。

「お前が決めろ。」

歳信がきっぱりと言い放ったので、狐依は小さく頷いた。

「教えて…ください。私が、何者なのか。」

そう言われ、薊はゆっくりと頷いた。

「狐依様――――あなたは、妖狐族の頂点に君臨する皇帝陛下の姉君に当たる、白毛九尾の親王しんのう陛下・姫依羅きよら様と、依巫よりましの人間・晴翔様との間に生まれた、半人半妖はんじんはんようの姫君でございます。」

紡がれた真実に、広間内の空気が色めき立つ。

半人半妖――――それは、稀に人間と妖怪が交わることで生まれる、人間と妖怪の混血。

一説によれば、妖怪の血と人間の血が混ざることで、類まれなる能力を得られるという。

しかし、人間にも妖怪にも属さないその血は、虐げられることが多い。

「わたし……が……、妖怪………?」

目を見開き、狐依が震える声で呟いた。

「姫依羅様と晴翔様は、覇権争いに狐依様が利用されるのを防ぐために、人間界へと送り込んだのです。お供の我らと共に、しばらくは身を隠すつもりでした。」

刹那、狐依の脳内を、走馬灯のように記憶が駆け巡った。

狐里こざとの風景、父と母のこと、覇権争いのこと―――――




『お父様、私に御用とは、なんですか?』

畳張りの、優雅な雰囲気を醸し出す部屋。そこに、着物を着た男性が座っている。

狐依の父・晴翔だ。その横には、淡い色合いの着物を着た女性―――狐依の母・姫依羅が座っている。

『狐依。今起こっている覇権争いで、狐里は危険だ。お前は、しばらく人間界に隠れていろ。』

『人間界に……?』

『あぁ。薊と美咲、黒苑をつける。それから、妖怪を斬れる妖刀“鬼切おにきり”を渡しておこう。隠れるところは、私が手配するから安心しなさい。』

『人間界……。』

狐依が頭を垂れると、晴翔と姫依羅は申し訳なさそうに笑いながら、狐依の頭を撫でた。

『ごめんなさいね、狐依。本当にごめんなさい…。』

物悲しそうな顔で、姫依羅がそう言う。

『お前が、こんな運命を背負うことになってしまって、本当にすまない。』

『お母様……お父様………。』

『だけどね、狐依。あなたは大丈夫よ。』

『そうだ。お前はどんな運命にも負けない。なぜなら―――』

『『狐依は、強くて優しい子だから。』』




「狐依が―――――半人半妖…!?」

郁が驚きを隠せない声で呟く。

他の皆も、同じように驚愕の表情を浮かべている。

次の瞬間、

パタリ―――――軽い音と共に、狐依は床に倒れた。

「狐依!?」

「姫様!」

倒れた狐依の周りに、全員が寄ってくる。

「気を失っているようです。」

美咲がそう言うと、歳信が口を開いた。

「誰か、部屋に運んでやれ。」

その言葉に、郁は真っ先に反応し、狐依の体を抱き上げた。

「俺が運びます。」

短くそう告げ、郁は広間を足早に後にした。

「あ!私達も行きます!」

美咲が慌てて立ち上がり、黒苑と共に広間を出た。

「薊とかいう狐、お前にはまだ聞きてぇことがある。」

広間から出ようとした薊を、歳信はそう言って止めた。

「―――――いいでしょう。あなた達を巻きこんでしまった以上、何も話さずにいることはできません。」

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