第一章:異世界再び、しかし俺は……(続き)
王が説明を始めた。
「勇者様方! 我が国は今、魔王軍による侵攻に苦しんでおります。どうか、どうか我らをお救いください!」
それを聞いた悠真は拳を握りしめ、まるで漫画の主人公のように燃えていた。
「魔王……! そういうの、やっぱあるんだな!」
紗奈はまだ状況を飲み込めていないのか、戸惑い気味だ。
「えっ……でも、私たちって戦えるの……?」
それに対し、玉座の横に立つ白髪の魔導士が静かに微笑む。
「もちろんでございます。勇者様方には神々からの加護が与えられ、並外れた力が宿っているはず。これから鑑定魔法で確認いたしましょう」
……俺はもう知っている。異世界転生者には大抵固有スキルやステータスが与えられる。それを確かめる儀式が行われるのも定番だ。
(まあ、俺には関係ないけどな)
悠真と紗奈が興奮気味にステータス鑑定を受ける中、俺は気配を消し、そっと後ずさった。
(このまま抜け出す……今ならバレずにいける)
玉座の間の入り口には兵士が二人立っているが、こんなのは朝飯前だ。俺は異世界最強の力を持っている。気配を完全に消し、音を立てずに移動するスキル【幽玄歩法】を使えば――
「……っ!」
スッと身体を縮め、兵士たちの視線の死角を縫って抜け出す。
無事、玉座の間の外に出た。
(よし……あとは城からも出るだけだな)
異世界転生に巻き込まれたのは想定外だったが、悠真と紗奈が勇者として頑張ってくれるなら問題ない。
俺は俺で自由に生きるだけだ。
――最強の力を持つ俺が、わざわざ勇者パーティーに所属する理由はないのだから。