『生きる意味』
「その曲何?すっごくいい曲だね!なんというか…明るい曲調だけど、虚しいというか…」
私は咄嗟に思いついた言葉を並べながら言う。私はあんまり音楽には詳しくないけど、優が歌っている曲はどれもpopな曲調だと思う。でも寿命とかに関する歌詞ばかりで、虚しい。とっても。
「自分の曲だよ。僕が作ったんだ。題名は『生きる意味』っていう題名」
『同じ年齢なのに、曲をつくれるなんて…』私は思う。
私と優は数日前にたまたま、一年生がいる階ですれ違った。私はもちろん一人だけれど、すれ違ったときの優は一人でイヤホンをしながら廊下を歩いていた。まるで、『誰も近寄らないで』と言っているように。
授業開始のチャイムが鳴った。急いで私は屋上を出る。
「優は行かなくていいのー?」
私は振り向きながら問いかける。そこには、地面に倒れ込んでいる優がいた。
「優!?すぐるー!」
私は必死に声をあげる。優はすぐに顔を上げた。
「………大丈夫。ごめん、貧血っぽくて」
私は首を横に振る。
「全然いいよ、保健室まで付き添おうか?一人で行ける?」
「一人で大丈夫。陽菜、早く行かないと」
私は時計を見る。授業開始時間から十五分経過していた。他の子はクラスに馴染めているから、授業に遅れても『すんませーん。遅れましたぁ』と言って、笑いを起こせるが、私にはそんな勇気はない。だからといって授業に出ないとなると母に叱られるし、私は優をおいて教室に向かう。そのときの優の顔は青ざめていて、素人の私が見ても体調が悪いと判断ができるくらいだ。優は心配だけれど、心配する余裕がなかった。遅刻なんてしちゃいけないものだから。
「すいません。遅れました」
私は声をあげていう。クラスメイトは一斉に私を見る。息をのむ。こんなに注目されたことがないので、緊張する…。一人のクラスメイトが言った。
「あれあれー?優等生さーん。遅刻していいのー?(笑)ダメだよねー」
皆んな一斉に笑う。
「私優等生なんかじゃないし。そもそもそんな言い方は…」
私は彼女の言い方を訂正したかった。でも突然頬に何かの衝撃があった。私は頬に手を当てながら思う。『今殴られた…?』。
「ブスが何言ってんの?ブスは言う権利ないんだよ!」
私の耳を掴みながら言う。
「この顔を見るだけで不快なんだよ。さっさと消えろ」
彼女はそう言いながら去っていった。クラスは静まりかえっていた。私は音を立てずに着席する。先生は何事もなかったように授業を進める。
「あぁ、私は空気なんだ」
これは一年前のこと、私が中三の時だ。そのときもクラスに馴染めていなく、いつも一人だった。ただ、遅刻して、馬鹿にされて、反論したら、殴られて…。ほんとさんざんだった記憶が今でもある。あの後、当然だが頬に痣ができてしまった。それも青痣の。元々顔が良くないってことは分かっているので、せめて肌は綺麗にしようと思っていたが、こんな痣ができてしまったら、もうどうしようもできないだろう。私はトイレで泣いて泣いて泣きまくった。自分の顔が憎いこと。殴られてしまったこと。強くいられなかったこと。
元々少し閉じかかっていた心の扉が、完全に閉じたような気がした。