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中華王朝史記

怪盗によって金満悪役令嬢から救われた北宋画

作者: 大浜 英彰

3枚目の画像は、みこと様より頂戴致しました。

そして他の3枚の挿絵の画像を作成する際には「AIイラストくん」を使用させて頂きました。

 靖康の変で金朝に奪われて以来、徽宗の描いた皇后の肖像画は幻の北宋画とされていました。

 それが英国の骨董市で発見されて競売にかけられた時には、本当に大騒ぎでしたよ。

 とはいえ翰林図画院(かんりんとがいん)の官僚として中華王朝の宮廷芸術に携わる私は、この事態を静観していたのです。

 たとえ誰が落札しても、芸術は万民の共同財産。

 我が中華王朝が所有権を得られずとも、里帰り展示の機会位はあるはず。

 そう楽観的に捉えていたのでした。


 ところが落札者のナタリー・ゴルドフル嬢の発言は、予想外の物でした。

 挿絵(By みてみん)

「あの北宋画は(わたくし)の別荘で非公開展示。そしていずれは、(わたくし)と共に宇宙葬ですわ。」

 このアメリカの金融王の令嬢の暴挙は、たちまち非難の的となったのです。

 挿絵(By みてみん)

「人類共通の財産である優れた芸術品が一個人のエゴで毀損されるなど…我々に打つ手は無いのですか、田青鈴(デン・チンリン)?」

 美術への造詣の深い愛新覚羅白蘭(あいしんかくらびゃくらん)第二王女殿下などは、御声を荒げられる程の御怒り様でしたよ。

 挿絵(By みてみん)

「御腹立ちは御尤もです、愛新覚羅白蘭殿下。幸いゴルドフル嬢は殿下と同年代の若者、命数が尽きるまで時間が御座います。長じるに従い分別もつき、いずれ前言を撤回するでしょう。」

 とはいえ当時の私には、そう殿下を宥めるのが精一杯でした。


 だからこそ、ゴルドフル家へ納品直前の北宋画が消失した時には胸のすく思いに駆られたのですよ。

 不謹慎な事と重々承知では御座いますが。


 汝に芸術を語る資格無し。

 風流英傑より。


 こんな紙片が現場に残されていた事から、事件は怪盗による劇場型犯罪として捜査されたのです。

 落札した絵を逃したばかりか、公然と愚弄された。

 そんなナタリー嬢の憤りは、凄まじい物でした。

 実家の財力を駆使して探偵達を雇い入れ、犯人を追い詰めようと企てたのです。

 もっとも、それは不発に終わったのですけど。

 汚職関与を匿名の内部告発で暴かれたゴルドフル家は株価の暴落や不正の補填等に追われ、長女の成金趣味どころではなくなったのです。

 やがて無事に発見された北宋画は改めて競売にかけられ、新たな落札者となった日本の実業家の厚意によって我が中華王朝に寄贈されたのでした。

 挿絵(By みてみん)

「北宋末期には金朝に奪われ、この現代ではアメリカの金融王の手に落ちかけた後に怪盗によって救われる。そんな波瀾万丈の運命も、今ではこの北宋画を物語る歴史となりましたね。」

 往時を振り返る殿下の微笑には、「歴史の一節に立ち会った」という感慨に満ちていたのですよ。

本作のキーパーソンの一人である怪盗・風流英傑のイメージイラストを、みこと様より頂戴致しました。


挿絵(By みてみん)

(こちらのイラストは、みこと様より頂戴致しました。)


黒いコートにダークブルーのタイツ。

そうしたダーク系の色合いで統一された衣装は、いかにも怪盗という趣が御座いますね。

ダークブルーのタイツは素早さと身軽さを重視した潜入用の衣装で、その上に羽織った黒コートは様々な装備やギミックを仕込んでいるのでしょうね。

そして口元を覆うマスクは、散布した催眠ガスを吸い込まないための装備と解釈出来そうです。

みこと様、此度は拙作「怪盗によって金満悪役令嬢から救われた北宋画」に素敵なイラストを下さいまして誠にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 貴族や裕福層の方が、自身のステータスとして美術品をコレクションする、というのは理解(納得する、しないは別として)は出来ます。 でも。 >「あの北宋画は私わたくしの別荘で非公開展示。そしてい…
[良い点]  美術品はその素晴らしさではなく権力者、富裕層に力の象徴として、収拾されることがあります。  そうした側面を鑑みるととてもリアリティのあるお話に感じました。 [気になる点]  現実でもこう…
[良い点] とてもメッセージ性の強いお話で、興味深く読ませていただきました。 「別荘で非公開展示。いずれは宇宙葬」だなんて! すごいこと言いましたねナタリーさん。 風流英傑さんグッジョブでした! AI…
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