第二章 学園祭 第一話
更新再開です。
十月十五日 PM 0:35 二〇三教室
前回の事件から半月。
定期テストも過ぎ去った今、学園祭を前にした校内はお祭りムード一色だ。
我が校の学園祭では、体育祭と文化祭、そして博覧会、後夜祭の四つで構成されている。
ここで、我が校の学園祭を説明しよう!
先ずは、体育祭。普通の高校とそう変わりはない、ごく普通の体育祭だ。……生徒会種目と職員種目を除けば。この二つの種目は生徒会と教師陣が其々、自由に種目を考えられるという枠だ。当然、ルールも破茶滅茶なものが多く、『見てる分には』楽しい。稀にやる側も楽しいものもあるが、非常に稀だ。
例を挙げると、生徒会種目「借り物先生転がし競争」や、職員種目「素数メートル競争」がある。
因みに、「借り物先生転がし競争」は与えられた条件に合った先生を連れてきて、大玉転がしの要領でその先生を転がすという競技らしい。
「素数メートル競争」は言った素数のメートル分のみ進むことができる500mリレーだ。数学研究会の部員の一人が大活躍したそうだ。まぁ優勝は、即座に503と答えた数Ⅰ担当の先生だったそうだけど。
まぁどっちも、考えた奴は頭がおかしいに違いない。
その一週間後には文化祭が二日間。これは各クラスの出し物と文化部の模擬店と発表がメインだ。ぶっちゃけ、これが一番楽しみという生徒が大多数だと思う。
その後の博覧会では、有志が発表したり演説したりする。あとは一部の分野に詳しい生徒が先生になって他の生徒や先生に教えるという企画もやる。ヲタクが輝ける貴重な時間だ。
後夜祭は、うん。毎年テイストが違う何とも言えない。ただ先生の監査無しで生徒会が企画、運営をするので、ちょくちょく変なものになる。今年の生徒会は真っ当だといいなぁ。
そういう僕らも、日々文化祭の準備に勤しんでいる。
……体育祭?運動が苦手な僕らには関係ない話さ。
「そういえば、なんでウチの学校って体育祭と文化祭一緒なんだろうね?」
「体育祭なんてなければいいんです。アレさえなければ学園祭は最高のものになったに違いありません!」
熱弁するのは大岩君だ。
……僕の問いかけにはスルーか。
「どうにか体育祭をなくせませんかね。そもそも体育祭は文化祭や博覧会から一週間も離れているんです。学園祭に含めてはいけないと思いませんか?」
「まぁ確かに僕も体育祭は無くなって欲しいなぁ。やるにしたって態々文化祭の一週間前にやる必要はないしね」
「そうだね。ウチのクラスは随分ノロノロと準備してたせいで間に合うかが結構ギリギリだしね。せめてもう少し早くから準備しておけば良かったのに」
野崎さんは相変わらず毒舌だ。
とはいえ準備をゆっくりやりすぎたのは事実だし、心が痛い。
「クラスだけじゃありませんよ?我がボードゲーム同好会の模擬店も考えなければいけません」
あっ!忘れてた……。
「えっと、文化祭まであと何日だっけ?」
待っていましたとばかりに大岩君が即座に答える。
「確か、あと三週間くらいだった筈です。だから急いで出し物を決めないと不味いです」
それを聞いて野崎さんか申し訳なさそうに言う。
「わたしは管弦だから仕事少なめだと助かるなぁ。その分監督作業くらいは頑張るから」
「兼部なら仕方ありませんね。一〇五の出し物の立役者と呼ばれた野崎女史の采配は期待してますから、お願いしますね」
「うん、任せて」
ヨシ、僕もこれに便乗して仕事を減らしてもらおう!
「僕も兼部してるから仕事少なめでお願いね」
僕の言葉を聞いて即座に青筋を浮かべる大岩君。
くっ、どうやら騙せなかったらしい。
「騙されませんよ?貴方が兼部してるのはどうせ帰宅部でしょ。帰宅部の模擬店なんてあってないようなものですから駄目です」
「うう、駄目かい?」
頑張って目を潤ませながら聞いてみる。
こういう時には目薬が便利だよね。
「駄目です。そんな事をしても無駄ですから目薬を仕舞いなさい。そして無駄に私を騙そうとした分、貴方の仕事を増やすのは決定事項です」
「えっと、流石に仕事を増やすのは勘弁して欲しいなぁって。ほら、クラスの仕事もあるし」
必死の僕の言い訳。
流石にこれ以上の仕事は無理だって。
「なんと言おうと駄目ですよ?それにクラスの仕事はみんなあります」
ぐうう、なんとか減らせないものか。
「なんと御無体な……。どうかご慈悲を」
「成程、分かりました。では仕事を二倍で許してやりましょう」
にっこりと微笑み、そう告げる大岩君。
……これは、もしかして上げて落とすというやつか?一回本当に期待したのに!くそう。
「まぁまぁ、どうせみんなで死ぬ気で働かないといけないんだから、そう変わらないって。それに大丈夫、わたしはみんなを過労死するまで精励恪勤させるつもりだから」
えっと、任せる人本当にこの人で大丈夫かな。
僕と大岩君の額を冷や汗がつたった。
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十月??日 PM 6:25 旧校舎 一階
今はもう、使われることの無くなった旧校舎。
解体の為の予算が降りないという実態を、生徒に歴史的建物をみせるという名目で覆い隠したこの建物は、幾つかの部活の物置、或いは隠したいものを置く雑多な倉庫に成り果てていた。
その暗がりの一つで、生徒がブツブツと呟いている。
「ああ、クソッタレ。なんで奴らが、なんで奴らがのうのうと生きているんだッ」
罵声を放つ生徒に答える声が一つ。
「ああ、そう奴らにら復讐が必要だよ」
その言葉に応える様に、暗がりから一つの影が現れた。ソレは同意する様に頷き、彼らの思考を誘導していく。
「ええ、その通りです。彼らには然るべき報いが必要でしょう。そして、貴方にはその為の手段がある。さぁ、宴を始めるのです。偉大なる主に捧げる、ね」
「「ia ia garland seal toarn thorn sade uule」」
人ならざる怪異が手引きする陰謀は、学校にもその触手を伸ばそうとしている。
各話ごとのタイトルの付け方が前章と違いますが、気にしないで下さい。
各章が終わるごとに全体を改稿をするつもりなので、その改稿が終わったかどうかで変えているだけです。