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第一章 幼馴染の行方 其の参 母

九月二十日 PM 5:50旭日市内


高田さんの家へと向かう道中、僕らは雑談に興じる。


「しかし、親が共働きだと大変なんだね〜。そう言えば、大岩君の家も共働きだっけ? どんな感じなの?」


「うーん、そうですねぇ。まぁ普通ですかね。一応、私は小1の頃からもう家の鍵を持たされてましたよ。なので兄に迎えに来て貰うとかは有りませんでした。ただ私の家の場合、共働きというよりかは親が放任主義なのが大きいですね」


そう言えば、彼にはお兄さんがいるんだったか。確か今は大学の教授だったかな? 物凄く頭がいいらしいけど……


「大岩君のお兄さんって確かめちゃくちゃ頭がいいんだよね。本当に凄いなぁ」


「別にそんなに凄くはないですよ。唯の変人です」


間髪入れずに大岩君が答える。まぁ大岩君の兄弟だもんね。変人で当たり前か。……と言うか大岩君も人の事言えないぐらい変わってるからね?


ジトっとした目を向ける僕と野崎さんを見て大岩君はキョトンとする。自覚ないのか……。


「ところでお兄さんは何を研究してるんだい?」


「歴史社会学という社会学の一分野です。社会が歴史の中でどのように発展してきたか、そしてそれが現在にどのような影響を与えているかというのを研究しているらしいですよ」


説明を聞いた野崎さんが苦笑しながら反応する。


「う、うーん、なんだか難しそうだね。二人は好きそうだけど」


そうだね、確かに面白そう。進路の選択肢に入れてみるかな。


「そう言えば、大岩君のお兄さんって怪奇現象にも詳しいって言ってなかったっけ?」


野崎さんがさらに尋ねる。


「ああ、よく覚えてますね。」


「うん、前に愚痴ってたなぁと思って」


「ええ、兄はちょっとオカルトにも煩くてですね。大学でもオカルト研究会の顧問をしていた筈です」


多才だ……。そんなところまで兄弟で似ているのか……。くそぅ、羨ましすぎる。


そんな風に話していると野崎さんが声を上げます。


「あっ、高田君の家ってあれじゃない? 凄く綺麗なお家。いいなぁ」


あの高級そうな感じの家か。確かに一度でいいからあんな家に住んでみたいかも。


「盛り上がってるところ申し訳ないんですけど、どうやって入るつもりなんですか? 私達は全員高田君とは面識がない筈ですけど」


あっ、どうしよう! 全然考えて無かった……。


「ふふん、大丈夫だよ」


そう言うと野崎さんは鞄からプリントが何枚か入ったファイルを取り出す。


「学校を出る前に近松ちゃんから貰ってきたんだよね」


「流石ですね。助かります。」


感心した様に大岩君は言うと、ファイルを受け取る。


そのままインターホンを押そうと家に近づいていく。






……あれ? 中々押さないな。というかなんか深呼吸してる?


「えっと……何してるの? 早く押さないの?」


耐え切れなくなった様に野崎さんが話しかける。


「い、いえ、分かってはいるんですけど……。ええ、ただ、どう話せばいいのかがこう、分からないと言いますか……」


そう言う事ね。うん、気持ちは分かるよ。


「何だ、そんな事だったの。確かに、こと人との交流に関しては二人には期待出来ないからね。私に任せてよ」


う、うん、否定は出来ないけどなんか納得いかないなぁ〜。


なんとも言えない表情をした僕と大岩君は同時に顔を見合わせる。


「すみません〜。高田君のお母さんっていらっしゃいますか?」


暫くすると妙齢の女性が一人、辺りを伺う様に出て来くると、訝しげに問いかける。


「ええと、どちら様ですか?」


「高田君のお母様ですよね。彼の同級生の野崎です。先生からプリントを渡す様に頼まれていて」


「ああ、それで。成程ね、分かったわ。態々ありがとうね」


多少の伝言を挟んだ所で野崎さんが高田さんの事を切り出す。


「ところで、高田君って大丈夫なんですか?」


女性の顔が若干だけど曇る。


「え、ええ、大丈夫よ。もう暫くしたらまた学校に行ける筈よ」


おかしいな。普通、同級生が娘の心配をしたらもう少し何かしら話さないか?それに何となくこの話題を避けている様な気もするし、瞬きも増えてる。隠したい事でもあるのかな?


「そうなんですね。ああ、それと先生からもう一つ伝言を貰ってて、今度の三者面談に関して何ですけど」


手元から手帳を取り出し、予定を見てから女性は答える。


「ああ、三者面談……。ちょっと失礼。そうねぇ、残念だけど予定が合わないからお断りさせて頂いても」


「分かりました。お伝えしておきます。それと、あとどれくらいで……」


野崎さんが更に聞こうとすると、女性の表情が更に分かりやすく曇った。


「それじゃあ、今日はもう遅いし、これぐらいで。本当にありがとうね。」


女性は強引に話を切り上げると、くるりと体を翻し、素早く家へと戻っていく。


引き止める事も出来なかった僕らは立ち尽くすしか無かった。




<<<<>>>>


九月二十日 PM 6:35旭日市内


「どう思う? あの感じ」


帰路の途中、僕は高田さんの母の反応について疑問を呈した。


「そうですねぇ、気になる事といえば会話の最中も何かを警戒していた様な素振りがあった事ですかね。後は家の中がいやに暗かった事でしょうか。どうにも生活してる感じが見えないといいますか」


そうだったのか、高田さんのお母さんが周りを警戒していたのは気付かなかったな〜。


「一応僕が気づいた事としては最後の方で瞬きが増えてた事かな。何か隠したい事でもあったのかも」


「わたしが気づいたのは顔かな。去年高田君とはクラスが一緒で一回だけお母さんを見た事があるんだけど、その時と顔の輪郭線がちょっと違う気がしたんだよね。それで三者面談って嘘をついたんだけど、気づかなかったみたい」


先週に三者面談は終わったばかりだからすこしも疑念を抱かないのはやっぱり変だな。


「よくそんな事に気づきましたね。というか見た人全員の顔の輪郭線を覚えているんですか?」


大岩君が呆れた様に野崎さんに聞く。


「そんな事ないって。流石に全員は覚えれないよ。高田君のお母さんは綺麗だったからね。まぁ偶々だよ」


偶々って……。本当かな? 野崎さんの事だから本当に顔の輪郭線を全員覚えてたりして……。


「……うーん、ところでさ、何で猫じゃらし持ってるの?」


野崎さんが僕の持っているエノコログサを指差しながら言う。


何故って、さっき道端にあったからだけど?


「確かにさっきからずっとエノコログサを弄ってますね。何かあったんですか?」


キョトンとした僕に大岩君も聞いてくる。


「特にないよ。強いて言うなら生えてるのを見つけたから……かな?」


「そっかぁ……。ちょっと理解できないな〜」


野崎さんは遠い目をしながら言う。


この良さが理解出来ないなんて可哀想に……。


「まぁ村井君が理解出来ないのはいつもの事ですし、考えるだけ無駄でしょうー」


「うん、やっぱりそうだよね。それで他にわたしが気づいた事だけど」


あれ? あそこになんか変な人達いない? 真っ白い服着たアブナイ感じの人。何処となく此方を見てる気がする……。


「ねぇねぇ、ちょっと脱線するんだけどさ、この街って白装束に三角白頭巾の服が流行ってるの?」


少し声を落として二人に聞いてみる。


「まさか、そんなKKKみたいな格好が流行るとは思えませんが……。ああ、あれですか。でも一体誰が好き好んであんな格好をしているんでしょう? ちょっとセンスを疑いますね」


まぁ確かにそんな服が流行ってる街とか嫌だけどさ。

でも普段着が全部真っ黒な大岩君がそれを言うのか……。


「とりあえず、走って逃げる?」


僕の言葉に大岩君が頷く。


「そうですね。……と言うかあの人、此方を見ていませんか?」


「うわぁ、それは嫌だね。とはいえ刺激しても嫌だし、一旦近くのコンビニにでも行かない?」


野崎さんの提案に小さく頷きあった僕らは近くのコンビニに向かおうとした、その時。

「もしもし、少しお話ししていきませんか?」


突然後ろから声をかけられる。


振り返ると、いつの間にかそこには白装束の男がいた。


いつの間に! 瞬間移動? そう思って先程の場所を見るとまだそこには白装束の男が居た。そうか、元々二人いたのか……。


その男は口を開く。



「ああ、驚かせてしまって申し訳ありません。私、『教団』というところのものでして、少しお話しさせて頂けないでしょうか」


あれっ? 見た目の割に意外と丁寧だな。てっきり厄介事かと思ったよ……。というか『教団』って何?


そんな事を思っていると大岩君が代わりに応えてくれる。


「えーと、すみませんが話が見えないのです……。もしかして人違いではありませんか? 我々も少し忙しいので、できれば今度にしていただけると助かるのですが」


しかし、さっきはインターフォンすら押せなかったのに、みるからに怪しげな人には怖気付かずに話せるのか。不思議だ。


僕がそんなしょうもないことを考えている内にも、二人は押し問答を続けている。


「いえいえ、お時間は取らせませんとも。少しだけお話ししたいだけですから」


うーん、なんか怪しいな。少しだけ話したいとは言っても何についてなのか全く言おうとしないし……。


よし、逃げよう。三十六計逃げるに如かず、だ。


僕らが目配せすると、大岩君がわざとらしく時計を見てから言う。


「すみませんが、時間がありませんので。行くよ!」


その声と合図として、僕らは一斉に走り出した。






数分間走り続けた僕らは後ろを確認してから漸く立ち止まる。


ふぅ、疲れた〜。これでもう今週分の運動は十分じゃないかな。


「一体全体、あのKKKみたいな人は何なんですか? 『教団』というのも聞いた事がありませんし」


「あっ! わたし、多分思い出したかも」


野崎さんの言葉に驚く僕ら。


「知ってるの?」


「うん、と言ってもそんなに詳しくはないんだけどね」


その後の話を纏めるとこうだ。



曰く、白装束はその身の穢れなき事を示すとか。


曰く、彼らが信仰する神は星を超えて現れた超然的存在だとか。


曰く、矮小なる人はきたるべき時までに神に救いを求めねば助かれぬのだとか。


曰く、厚く神を信仰する者にはその超常の力の一端が分け与えられるとか。



うーん、だいぶ怪しくない? 二つ目の話は宗教によくある最後の審判的なやつだし、最後のもよくある神の恩寵がうんぬんみたいな話だし。


「怪しいですねぇ。とはいえまぁ、日本には信仰の自由があるので何も言えませんか。……しかしそんな団体がどうして僕らの元に来たのでしょう。まぁいずれにせよ、身辺に気をつけるに越した事はないでしょうね」


「そうだね、気をつけるよ。野崎さんは大丈夫? 家まで送ろうか?」


「大丈夫だよ。わたしはスタンガン持ってるから。ほら、科学部の美代ちゃんが改造してくれたやつ」


「ああ、なら大丈……いや、本当に法的に大丈夫なの?」


それに対して野崎さんはにっこりと笑った。


……駄目じゃない、それ?


そんなこんなでその日は解散した。

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