舐められ先生
5年生に進級した野々下 灯枇は、ある危機を迎えた。グループ女子社会への突入である。恐ろしい事に、灯枇はそれまで完全に無自覚のまま、ジャイアン気質の雲母のグループに所属し続けていた。
だがしかし、そんな灯枇は廊下に貼り出された5年時のクラス替え表を見て、愕然とした。というのも、灯枇は雲母とも妃鞠とも別クラスとなり、今後のクラス内の人間関係に、強い危機感を覚えたからだ。不幸中の幸いと言えなくもなかったのは、初めてご近所の登校仲間である柾谷と同じクラスになれた事ぐらいしかなかった。
しかも担任は、4年時には宿題を出さない事で灯枇達他クラスの生徒にも有名だった、あの舐められ先生だ。舐められ先生は、そのせいなのかは定かでないが、灯枇が4年生だったある時、4学年だけで集まっていた際に、舐められ先生のクラスの生徒だけ妙に落着きが無く、まあくっちゃべっていて、舐められ先生はクラスの生徒達を怒鳴りつけていた事が一度だけあった。
ちなみに5年時には普通に宿題が出た。先生は恐らく悪い人間じゃあ無かったのであろうが、何かしら生徒から舐められる事があったらしく、現に先生自らが語った過去話によると、昔単なる誤解か何かで、先生に無視されたと思い込んだ女子生徒の手によって、当時先生が着ていた白い上着の背中に堂々と、マッキーの黒油性ペンで「バカ」と書かれた事があったらしい。
果たしてそれが本当なら、とんだ問題児が居たものだが、舐められ先生が舐められ先生たる所以は、その虐め被害者に対する無意味な指導にこそあった。舐められ先生は、灯枇が産まれて初めて明確に虐めと認識した、雨河童による加害行為を、「そんなの無視しなさい」の一言で捨て置いた。それがどれほど雨河童に調子をこかせ、結果的に舐められてしまったのか、恐らく舐められ先生は、未だに知る由もないのだろう。




