痩せ我慢の代償
本当はずっと、灯枇は彼女の事が嫌いだった。大変に残酷な事実だが、対外的には友人だった妃鞠の事を、灯枇は何故か虫が好かなかった。
率直に言ってジャイアン気質の雲母の方が、灯枇にとってはまだ好感が持てる相手だった。
それは果たして何故なのだろうか? 灯枇の真の友であった新澤 涼が憎きフコーカに転校し、妃鞠は妃鞠でご近所の友人と疎遠になった時期が丁度重なって、お互いに都合の良い相手でしか無かったからだろうか?
「これ頂戴。これくれたら許してあげるから、もう家に帰っても良いよ」
妃鞠は何かしら支配的な人物で、時たま灯枇の私物を欲しがっては、難癖をつけてそれを取り上げた。一度妃鞠にあげた物は、二度と帰ってきた試しが無い。灯枇が1番良く覚えているのは、絵を取られた事だ。灯枇はある時ディズニーキャラクターのマリーちゃんの絵を、たまたま上手くペーパートレースして、色鉛筆で色も塗って、ランドセルの名札を入れる場所に挟んでいた。
それを見た妃鞠は、何故なのかそれを欲しがり、やはり難癖をつけて誰も居ないクラス教室に灯枇を留め置き、灯枇が自ら、良いよ。あげるよと、差し出すまで帰宅を許さなかった。しかも少しの間だけ我慢して、通学路を一緒に歩けば自宅場所の都合上、すぐに別れ別れになるとはいえ、まるで花蜜吸のように一緒に帰りたがったし、その時に放課後遊ぶ約束を持ち掛けられるから、その後また会って遊ばなくてはならない。
断ったら理由を訊ねられ、上手い具合に誤魔化せないと、結局約束させられた。また灯枇も、断ったら断ったで学校で1人になるかも知れなかったから、本当は嫌々ながら、妃鞠と仲良くするしか無かった。




