とんだシャーロック
あだ名の一件が尾を引いているのか、正直灯枇は他の人畜無害な善き隣人達である不思議男子達の一人として、出来れば認めたくは無いのだが、恐らくあのシャーロックも、不思議男子に当てはまる節があった。
シャーロックの場合は、元々はクラスに1人は居る劣等生と見られていて、実際あまり学校成績は良くなく、低学年では筆箱でダンゴムシを飼育するといった奇行も見られた。灯枇の母親は職業病の一種なのか、授業参観の折に灯枇とシャーロックだけがまごついて何か作業が遅かったのを根拠として、灯枇に時折ごゆっくりさん疑惑を掛けて、露骨に発達障碍を疑った。
灯枇も流石に筆箱で飼育するのはどうかと思うが、ダンゴムシ自体は割と好きで、自宅で発泡スチロールの箱に土やクローバーを入れて飼っていた時期もあった。
ダンゴムシは灯枇が唯一直接触れる虫である。ダンゴムシは飛び回ったりせず、逃げるスピードも非常にゆっくりで、驚くとコロンと丸まり、やがて落ち着くと丸まりを解除して、手のひら上を小さな脚でくすぐったくゆっくりと這い回る。とにかく可愛い虫なのだ。死んで真っ白になったのや、誰かにうっかり踏み潰されたのを目撃すると、堪らなく悲しくなる程には、灯枇もダンゴムシは好きだった。
しかしシャーロックの方は他の虫も全く平気のようで、ある夏休みの自由研究に、デカイ蜘蛛の観察記録を提出した。
そのデカイ蜘蛛はシャーロックの自宅の庭で発見された、黄色と黒のシマシマ模様が特徴的な蜘蛛だった。蜘蛛が気になったシャーロックはその名前を調べ、日々様子を観察しながら写真も撮った。最終的に蜘蛛は巣から唐突に消え失せ、恐らくカラスに喰われたのだろうというシャーロックの推理で締めくくられていた。
この自由研究は非常に良く出来ていると、シャーロックは先生から大いに褒め称えられ、クラス代表として資料室に展示される程だった。
そのシャーロックは一度、笑いを取りたいのか何なのか、突然大声を上げ、閉まったままの教室のドアに躊躇なく突っ込んで激突した事があったが、全く面白く無かったので誰一人笑う者は居なかった。




