給食時間の放送作家
その時クラスで灯枇と同じ班にも、不思議男子が1人居た。そのセナ君は、クラス全員での校区探検の折に、たまたま近所まで来たからという理由で彼の家の前にも立ち寄った際に、その母親の提案で、ペットのリスを籠ごと持って来て見せてくれたのが、印象的な不思議男子だった。
セナ君は他にも、極小サイズの鉢入りサボテンを、先生には消しゴムと誤魔化して学校に持ち込んだ事もあった。一体いくらするのかとクラスメイトに訊ねられ、彼は事も無げに「100円ショップで買ったんだ」と答えた。セナ君には、ただ者では無い選定眼も備わっていたのだ。
そしてセナ君の何よりの特技だったのは、給食時間中に流れる「えいようのうた」の背景に奇妙奇天烈な脚色を加え、もっともらしく語って聞かせる事だった。「えいようのうた」は、どこぞの合唱団か何かの子供達の大声で歌われており、給食時間の都合上、いつも途中でプツンと切れる。
〽身体を作るの何でしょう?
それは 赤の食べ物よ
お肉に 魚に 豆 卵
牛乳 小魚 海苔 ワカメ
「これはね、放送室に監禁された子供達が無理矢理歌わされているんだよ。赤ってのは血の事だ。逆らったら殺されるから、一所懸命歌っているんだよ。だからこんなに大声なんだ」
〽熱や力になるものは?
それは黄色の食べ物よ
ご飯に うどんに 芋 砂糖
油や バターが エネルギー
「これはね、監禁された子供達が必死に助けを求めているんだ。給食食べてるぼくらと違って、満足に食べさせて貰ってないからね。ああ、可哀想に」
〽調子を出すもの何でしょう?
それは緑の食べ物よ
キャベツに キュウリに 葱 大根
ニンジン カボチャに ほうれん草
「おっ、誰か助けに来たみたいだ。この野菜の名前達は暗号で、合言葉になってるんだよ」
〽赤 黄 緑を取り揃え
きちんと食べれば ――プツン
「あーっ、今日もダメだったか。バレて皆殺しだ。これでまた明日も代わりの子達が補充されて、無理矢理歌わされるんだよ。酷い話だよねぇ」
セナ君はこんな脚色を淡々と、でも本当のように語って聞かせるので、彼と同じ班で机を合わせて給食を食べる灯枇達はクスクス笑いが止まらず、牛乳を吹き出さないよう気をつけながら食べる必要があった。




