公園の木下兄弟
スイミングスクールに通う灯枇にとって、1番の苦痛だったのは進級テストだった。ろくに息継ぎの仕方も教わらないまま、ようやくクロールが沈まずに泳げるようになった途端、浅いコースから深いコースに連れて行かれ、それでも最初は25mで良かったのに、ワッペンの色が変わるにつれて、進級テストの際は50m泳がされるようになった。灯枇はそれが苦しくて堪らず、泳いでいる際は毎度毎度、頭の中で好きな歌を流していた。
「あーあ、嫌んなっちゃうね、灯枇ちゃん。ゴムゴムのルフィならひとっ飛びで、世界新記録だって出せるのにね。もう僕そろそろ辞めちゃおっかな~」
「えーっ、そんな事言わないで木下君。木下君が居なくなったら、こっちは自由時間にたった1人で、この先どうやって時間潰したら良いの」
「そんなの知らないよ~。灯枇ちゃんも辞めちゃえば?」
「それはヤダ。泳ぐのは楽しいもん」
どうやら木下君は本気でスイミングスクールを辞めるつもりのようで、灯枇はそれなら木下君と遊ぶ最後の機会だと思って、木下君と迎えに来たお兄ちゃんにくっついて途中まで一緒に帰った。3人はその道中に、本物の煽情雑誌を発見した。最近ではあまり見掛けなくなったが、当時は通学路に煽情雑誌が落ちているのは日常茶飯事で、中身を見てキャッキャキャッキャ騒ぐのは割と楽しいおふざけだった。
木下君のお兄ちゃんが煽情雑誌を拾い、灯枇も一緒になって公園の木の下にあるベンチの上で雑誌を広げて中身を確認した。ページをめくる度に3人の歓声が上がり、他には誰も居ない公園内に、3人の子供達の馬鹿笑いが鳴り響いた。




