憩いの本棚
俺たちが卓球教室を終えて、西原児童館1階まで降りてくると、先に習字教室から解放された灯枇ちゃんが、児童館の図書室で本を漁っていた。
「何借りるの、灯枇ちゃん?」
灯枇ちゃんが持っていたのは、「ミルキー杉山のあなたも名探偵」シリーズだった。これは原ちゃんによると結構面白いらしくて、俺も今度読んでみようかなと考えていた。
「見て、柾谷君。またこの人、先に借りてる」
原始的かつ安上がりな貸出システムを採用している西原児童館では、図書カードに名前を書いて、色画用紙に印刷された自分の児童館カードと一緒に、「これ借りたいです」と、職員に言いながら渡す決まりだ。
「へー、ホントだ。2ー1の原ちゃんの名前だ。そんなに被るって事は、灯枇ちゃんと読書の趣味が似てるんだな」
オイオイ、耳をすませばじゃあるまいし。原ちゃんは断じて灯枇ちゃんにストーカー行為を働いている訳では無いので、どうか安心して欲しい。
俺は校区外の西原児童館に、マウンテンバイクで通っていたけれど、灯枇ちゃんはスイミングスクールにも通っているからか、親に車で送り迎えして貰っていた。待っている間に児童館の本を読むのは楽しいらしいけど、1日に2つも習い事があるなんて大変じゃないかと前に訊ねたら、やっぱりそのようで、灯枇ちゃんは今すぐ習字教室を辞めたいのだそうだ。
「でも、それなら~…祖母ちゃんに言えって、パパが言わすと。でも、そんな事言いきらん。怒らすと怖かもん。だけん辞めれんと。ピアノは辞めさせてくれらしたとに。ならプールば辞めろって言わすとたい、それだけは嫌~……」




