ご近所付き合い
5ー2の教室に集められた6町内メンバー達は、そこから更に分けられて、本当に極近所の少数グループで一列ごとに並ばされた。俺は前で一人だけ正座している女子の肩を叩いた。
「おい。ちょっと良いか野々下さん。俺の後ろに居るのが転校生の結尾君だから」
「…こんにちは、結尾君。隣のクラスの野々下 灯枇です」
「よろしく。でも初日から集団下校じゃ、外に遊びに行けないから困った。どうする柾谷君」
「いや、マジメかよ。そんなの出てってパトロール中の先生に見つかったって、公文ですとかで誤魔化せば良い」
「それ、親に電話されたら一発アウト。どーしよっかな、野々下さんの家、遊びに行って良い? 多分ご近所までならセーフだろ。柾谷君も来ない?」
『え、何で?』
俺と灯枇ちゃんはうっかりハモった。転校生の結尾君とは俺だって今日が初対面だけど、一応男同士だから、まだ俺の家に来たいって話なら良く分かる。
でも灯枇ちゃんは隣のクラスで、しかも女だ。まさか惚れたのか、嘘だろ結尾君!? こんな地味メガネで大人しい、いやどちらかというと暗い性格の冴えない女子に? それでなければ、かなーり不思議な結尾君の提案に、何でなのか物凄く気になった俺と、元々嫌と言えない灯枇ちゃんは賛成し、ここに放課後遊ぶ約束が成立した。
もちろん引率の先生の前では各自きちんと家の中に入り、先生と残りの6町内メンバーが歩き去ったのを確認してから、俺は灯枇ちゃんの家のインターフォンを押して中に通されて待った。それから少しして、小さい妹連れの結尾君がやって来たので安心した。
「うち、引っ越して来たばかりであまり玩具も無くって。ほんっとに悪いんだけど、樹も家でずーっと1人でTVだけじゃ可哀想だからさ~」