優しいナスビと手繋ぎペア
灯枇の心に深く刻まれたトラウマが、手繋ぎペアと黒板消しにまつわるエピソードだった。
まず手繋ぎペアとは、1年生との交流ペアの事である。ヒヲス小学校では6年生と2年生だけが、その時の1年生と折に触れて行動させられ、絆や成長を深める。
という建前はさておき、結局の所1番年下で、それまでは年長さんとして気を張っていたのがいざ小学校へ入学して、また甘ったれの末っ子状態に赤ちゃん返りした子達を内封した1年生という厄介者集団を、比較的安心して任せられる最年長者の6年生達、若しくは立場への自覚を芽生えさせたい元末っ子の2年生達を適宜利用して、遠足地まで一種の見張り役とお守りをさせるのだ。
しかしこの少子高齢のご時世に、上手いこと世話役と1年生の人数比が揃うとは限らない。案の定灯枇1人が世話役として余り、何故かナスビと二人一組にされて世話役を命じられた。そしてこれまた最悪の予感が的中し、精力的に世話役に取り組んで、灯枇には一切手を出させなかった、優しい優しい世話役のナスビは、彼女たった一人に宛てられたお礼の手紙を受け取った。
双方の担任教師は、事前に手紙の内容を確認しなかったのだろうか? 忙しくてそれどころじゃなかった? それとも手紙で一切触れられ無い程、何もしなかった灯枇が悪いと思って捨て置いたのか? その割には何ら呼び出しも注意も無かったのは腑に落ちない話だが、少なくとも手繋ぎペアの1件は、灯枇にとってその後も深いトラウマとなった。




