あだ名潰し
1年時の担任の発言を真に受けて、あだ名は忌むべきものだと理解し続けていた灯枇は、その萌芽を感じると、そのあだ名が嫌だったことも勿論あるが、すぐさま担任に言いつけて徹底的に潰した。そのあだ名は2つ、キノコとサラビだ。
キノコは灯枇の髪型のせいであり、掃除時間中の言い出しっぺであるシャーロックの態度からして、間違いなく悪口の類であり、担任教師はシャーロックをこっぴどく叱って、即座にあだ名を止めさせた。
サラビはライオンキングの主人公シンバの母ライオンの名で、灯枇とはビ1文字しか一致しないのに、何故かあだ名として定着しそうになった。担任教師は必ずしも悪口とは言い切れないと渋りつつ、同じ頃やはり名前を文字ってナスビと呼ばれかけていた女子もついでに呼び出して、内心嫌ではないかと問い質した。
「あたしは別に気にしてません」
色黒で活発な印象のナスビは、そう言ってナスビ呼びを受け入れていた。灯枇は彼女を大した奴だと思いながら、だが自身は例え良い意味だろうがサラビ呼びなんて冗談じゃないと担任に猛抗議して、何とかサラビ呼びを抹消させた。それとは別の話になるが、ナスビは原因不明ながら、どうも一方的に灯枇の事を嫌っていたようで、学校でシール交換が流行っていた際も、灯枇からはどんなシールを提示されようが、きっぱりと交換を断った。
そもそも灯枇は母親から無駄遣いを禁じられ、お小遣いはお手伝いを一回するごとに、たったの50円ぽっち恵まれるというだけで、それすら無かった頃は、駄菓子屋で買い食い1つまともに出来ない灯枇に同情して、何かの折に柾谷がコーラシガレットを奢ってやった事もあった。
しかしそれが灯枇の母親に知れると、母親は猛烈に怒って柾谷には謝りながら金を返却し、1手伝い50円制を導入したのだった。しかし世間一般での是非はさておき、たったの50円ぽっちでは、灯枇にまともに交換できる程のシール代を稼ぐ程度のやる気を引き出す事は出来なかった。
そこで灯枇は仕方なく、母親が仕事で使う、どう見てもダサいシールを何枚か貰って学校に持って行き、寛大な冥ちゃんに、もー、毎回毎回私の所に来れば良いと思ってるんでしょう! と言われながら、何とか冥ちゃんの基準をクリアしたダサいシールと、まともなシールを交換して貰い、他の女子達とのシール交換に繰り出すのだった。




