転校先はいつもフコーカ
野々下 灯枇の真の敵が花蜜吸であるならば、真の友は新澤 涼だった。涼ちゃんは名字のあいうえお順で、入学当初に野々下 灯枇の前の席に座っていた人物で、一見灯枇と似た様な性格で心優しく、灯枇にとっては入学以来初めて出会った友達であり、お互いに下の名前にちゃん付けして呼び合う仲だった。しかしその素晴らしき涼ちゃんも、憎きフコーカに転校する事が決まった。
灯枇はそれまで知らなかったが、涼ちゃんは保育園だか幼稚園だかで一緒だった女の子達と仲良し3人組なるものを結成しており、他にもそれ関連の女友達に大量に恵まれていて、転校が決まると毎日ひっきりなしに彼女達と休み時間に遊ぶ約束で埋まってしまい、灯枇は、なかなか涼ちゃんとの約束を取り付ける事が出来ずにいた。
「ねえ、涼ちゃん。一緒に遊ぼ!」
「うん、いいよ。灯枇ちゃん」
灯枇が何とか涼ちゃんとの約束を取り付けられたのは、涼ちゃんの転校直前日の昼休みのことだった。涼ちゃんはニッコリ笑って快諾し、灯枇は心底嬉しかった。
「え? うちも遊びたかったのに」
そう言って近くの階段から降りてきたのは、灯枇や涼のクラスメイトである妃鞠だった。涼は、ごめんね。先に灯枇ちゃんと約束してるから、と謝って、約束通り昼休みに灯枇と2人きりで遊んだ。
涼は、転校する時に親が買ってクラスメイト全員に渡すプレゼントを、もう事前に配布しており、それは定石のキラキラペンだった。
灯枇達クラスメイトは、今回も転校生に渡す手紙の便箋コピー用紙を担任教師から配られた。その転校生と仲が良かろうが悪かろうが、問答無用で全員書かされるのは毎度の事だが、灯枇は今回ばかりは大好きな涼ちゃんへ、心を込めてしたためた内容と、涼ちゃんが皆にランダムで配った、灯枇の場合はオレンジ色だったキラキラペンを使って、手紙の便箋コピー用紙の薔薇の花々を塗り、無事完成させた。
「何それ。灯枇、もうちょっと良い色無かったの、まるで枯れた花みたい」
灯枇の気持ちに水どころか針を突き刺したのは、無神経な母親の一言だった。灯枇はそれを真に受けて、涼ちゃんに対してとんでもなく申し訳無い気持ちを抱いて悲しみに苛まれたが、あの涼ちゃんなら必ず分かってくれた筈だ。




